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「違法大麻の里」を訪ねた アフリカの小国レソト 産業化狙う政府

平野光芳・ヨハネスブルク支局長
大麻草を手にするモシャパネさん=レソト南部で2022年11月19日、平野光芳撮影
大麻草を手にするモシャパネさん=レソト南部で2022年11月19日、平野光芳撮影

 この景色を描くには2色の絵の具があれば十分だ。澄んだ青空に高く迫る緑の山々。四方を南アフリカに囲まれた小国レソトの美しい風景は、日本の山間地と似ている。幹線道路でも急な坂とカーブの連続で、「車が故障してしまわないか」と心配になるほどだった。

 今回の訪問の目的は「大麻」の取材だ。

なぜ大麻の一大産地なのか

 大麻は乱用すると記憶や知覚に影響を及ぼす有害薬物で、日本では無許可で栽培や所持すると厳罰が科せられる。ただ世界的には規制が緩い国もある。

 ヨハネスブルク支局がある南アフリカでも大麻は厳密には合法ではないが、路地裏で公然と取引され入手は容易だ。ところがその大半は隣国レソト産なのだという。なぜレソトなのか、栽培や取引の実態に興味を持った。

 首都マセルから車を運転すること4時間半で南部の町カチャスネクに着く。さらに急な斜面を徒歩で30分ほど登った集落の一角に、ケケレ・モシャパネさん(56)の大麻畑があった。

 「この村ではほとんどの農家が大麻を育てている。違法といえば違法だけど、警察の取り締まりなんてないよ」と笑った。…

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ヨハネスブルク支局長

2001年入社。大津支局、福井支局敦賀駐在、大阪社会部、ジャカルタ特派員、奈良支局などを経て20年からヨハネスブルク支局長。共著に「なぜ金正男は暗殺されたのか」