チームワークの評価基準とは?チーム力の現状を把握してチームワーク向上に役立てよう

チームメンバー全員が同じ目標に向かって団結し、進んでいくためには「チームワーク」が欠かせません。特に絶え間なく変化が続く現代では、チームワークの重要性は高まってきています。

しかし「自分の属するチームのチームワークが良いのか悪いのか、判断できずよくわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、チームワークの評価基準とともに、仕事においてチームワークが重要視される理由や、チームワークを高める必須要素を解説します。チームワーク向上に取り組む管理職の方や人事担当者の方などは、ぜひ参考にしてください。

1.そもそもチームワークとは

そもそも「チームワーク(Teamwork)」とは、直訳すると「集団で行う動作・作業」のことです。具体的には、チームや組織全体の目標を達成するため、特定の集団に属するメンバーが同じ目標に向かって行う共同動作のことを指します。スポーツやエンターテインメントの世界でもよく使われるこの言葉は、ビジネスシーンでも重要なキーワードの一つです。

企業における「チーム」は、「部」「課」「プロジェクトチーム」などの名称で表現されています。チームや組織が十分に機能するためには、メンバー同士のチームワークは欠かせません。チームワークが構築されることで、メンバーがそれぞれの能力や特性を活かし、お互いの弱みを補完しつつ強みを増強させることが期待できます。

一人ひとりがバラバラに働くよりも、チームワークを高めたほうがチームや組織全体の力を最大限に発揮でき、大きな目標に向かって進んでいく近道となるのです。

2.仕事においてチームワークが重要視される理由

チームや組織が十分に機能するために欠かせないといわれるチームワークは、具体的にどのような理由から重要視されているのでしょうか。

ここでは、仕事においてチームワークが重要だといわれる理由を、

・VUCA時代への対応が求められている

・組織の生産性へ影響を与える

・エンゲージメントを左右する

以上の3つのポイントに分けて解説します。

2ー1.VUCA時代への対応が求められている

現代は、急激なスピードで絶え間なく変化が続く「VUCA時代」といわれています。

VUCAとは、以下の4つのキーワードの頭文字からなる言葉です。

・Volatility:不安定性

・Uncertainty:不確実性

・Complexity:複雑性

・Ambiguity:曖昧性

すなわち「VUCA時代=不安定で不確実、複雑かつ曖昧な先行きの読めない時代」を表しており、これまでの常識や経験が通用しない場面も多々あります。そのような時代でも成果を挙げ続けるためには、絶え間ない変化に柔軟かつ素早く対応していかなければなりません。

一人ひとりが個々の力を高めることも大切ですが、対応力を高めるためにはチームワークが何より重要です。

例えば、メンバーそれぞれが苦手分野に時間をかけて取り組んでいたら、急激な変化に追いつかなくなってしまいます。そうするよりも、メンバーがさまざまな視点から意見を出し合い、各自の得意分野で効率よくパフォーマンスを発揮するほうが、困難な状況を打破しVUCA時代を乗り切りやすくなるでしょう。

2ー2.組織の生産性へ影響を与える

チームワークは、組織全体の生産性へ影響を与えます。多くの人数で構成されている組織であればあるほど、思考や能力、特性などが多種多様なメンバーが集まります。そうした環境下でチームワークが機能していないと、意見の不一致や対立が増えたり、特定の人だけに作業を任せて時間切れになってしまったりといった状況が起こるでしょう。

さらに、その状況が続けば組織は疲弊し、生産性が低下するばかりかプロジェクト自体が成り立たなくなることもあり得ます。

一方で、チームワークが構築されていれば、思考や能力、特性などは異なっても、意見の不一致を解決する意識や、共同動作を進めるスキルはメンバーに備わっています。そのため、困難な状況でも積極的に乗り切ろうとし、新たなチャレンジも辞さない理想の組織に近づきます。メンバー同士で助け合い、困難を乗り切る・新たなチャレンジをする経験が繰り返されることで、組織力が強化され、チームや組織全体の生産性の向上が期待できるのです。

2−3.エンゲージメントを左右する

チームワークは、メンバーのエンゲージメントを左右する観点からも重要視されています。

なぜエンゲージメントに影響を与えるのかというと、チームワークはメンバーに所属感を与えるからです。ほかのメンバーからの評価や信頼、積極的なコミュニケーションなどにより、自分自身の存在や能力、価値観が認められていると感じられる環境が、チームや組織への帰属意識を高めます。

一人ひとりのエンゲージメントが高まれば、メンバー同士が良い刺激を与え合い、組織全体の目的達成のために貢献するようになるのです。

3.チームワークの良し悪しを測る評価基準とは?

いくつかの評価基準によって、チーム全体としてのチームワークの良し悪しを測ることが可能です。

九州大学准教授の山口氏によるチームワーク測定の実証研究では、大きく分けて3つの観点からチームワークを測定しており、いずれも適切な測定尺度と認められるとされています。

以下が、その具体的な評価項目の一例です。

<チームの指向性に関する評価基準の例>

・仕事を確実に行うために必要な知識や技能が受け継がれている

・チームの目標を達成しようという意気込みがある

・メンバー全員がお互いの長所を認めあっている

・やってみなければわからないことでも、前向きなことであれば支持される

<チーム・リーダーシップに関する評価基準の例>

・各メンバーの役割と責任を明確に示している

・チーム内で意見が対立したときに的確に対処している

・チーム全体のやる気を盛り上げている

・どのように仕事を進めるかについては、メンバーに任せてくれている

<チーム・プロセスに関する評価基準の例>

・お互いの都合や仕事の進み具合に合わせて、仕事の進め方を工夫・調整し合っている

・年間目標など、チームの長期的な活動計画をメンバー全員で納得するまで話し合って定めている

・仕事を改善するためのアイデアを出すことに積極的である

・個人の知識や技術の向上のためにアドバイスし合っている

参考:チーム・コンピテンシーと個人のチームワーク能力

4.個人がチームワークへ与える影響にも評価基準はある?

チーム全体としてのチームワークの良し悪しを測る評価基準に対して、チームのメンバー 一人ひとり、個人がチームワークに与える影響を測る評価基準もあります。

教育テスト研究センターが行った研究発表では、顕在的な行動をもとに、例えば以下の項目を評価基準として挙げています。

<協同意識に関する評価基準の例>

・ほかのメンバーの意見を聞いたり、アイデアを取り入れたりしている

・ほかのメンバーとの調和を保ちながら仕事に取り組むことができる

・困っていることがないか、メンバーに声をかけ、サポートしている

<職務遂行に関する評価基準の例>

・自ら必要な仕事を発見し、取り組んでいる

・仕事や人間関係の改善のために自分の意見を提案している

・質問や相談をされたとき、的確なアドバイスや解決法を出すことができる

チーム全体でも、メンバー 一人ひとりでも、適切な評価基準によってチームの現状を把握することは可能といえます。

参考:会社員による相互評価を用いた チームワーク力測定の試み

参考:研究発表論文|CRET

5.チームワークを高める6つの必須要素

チームワークの評価基準を理解したところで、「ではチームワークを高めるにはどうしたら良いのだろうか?」「チームワークには何が必要なのだろうか?」と思われるでしょう。

続いては、チームワークを高める必須要素について、6つに分けて解説します。

5ー1.目標設定と共通理解

チームワークを高めるためには、まず始めにチームとして達成すべき目標を明確に設定し、それをチーム内で共通理解することが必要です。

現状の問題や課題を踏まえたうえで、メンバー全員が納得できるよう共有していきます。

チームワークは、メンバーが同じ目標に向かって行う共同動作であるため、達成すべき目標があいまいでは協力して取り組みにくくなってしまうでしょう。

5ー2.役割の明確化

チーム内の一部の人だけが活躍するのではなく、設定した目標に向かってそれぞれのメンバーが成果を出すためには、一人ひとりの果たすべき役割も明確になっていることが求められます。お互いの弱点は補い合い、強みは高め合えるような、適切な役割分担が大切です。

ただし、チームワークを高めるうえでは、単に定められた役割をこなすだけでは足りません。状況に応じてお互いにフォローし合うことも、役割の一つとして認識しておくべきでしょう。

5ー3.積極的なコミュニケーション

さまざまな思考や能力、特性を持つ人々が集まる組織で、チームワークを高めるためには、メンバー同士の積極的なコミュニケーションが必須です。特に初期の段階では、積極的なコミュニケーションがなければお互いを知ることすらできません。まずは、一人ひとりが積極的にコミュニケーションをとり、チーム内で協力し合える環境を構築していく必要があるでしょう。

そこで大切なのが、誰もが対等かつ自由に意見を述べられる環境づくりと、自分の考えや意見をわかりやすく伝える「発信力」です。個々が発信力を磨くことで、お互いが負担なく相手の考えや意見、モチベーションなどを把握しやすくなります。

5ー4.チームへ適応しようとする姿勢

メンバーそれぞれがチームへ適応しようとする姿勢を持たなければ、チームワークは高まりません。チームへ適しようとする姿勢を持つためには、少なくとも以下のようなスキルが必要でしょう。

・意見の違いや立場の違いを理解し、柔軟に対応するスキル

・相手の考えや意見を真摯に受け止める傾聴スキル

・社会のルールや人との約束を守る規律スキル

・状況に応じて相手をフォロー・バックアップするスキル

一人ひとりがこれらのスキルを磨き、チームへ意識的に適応・貢献しようとする姿勢こそがチームワークを高める近道となります。

5ー5.個々の情況把握力

「情況把握力」とは、自分と周りの人・物事との関係性を、その背景にある事情や内面の変化にまで踏み込んで理解するスキルのことを指します。周囲の状況を理解しようとせず、自分さえよければいいという考えのメンバーがいると、チームワークを高めることは難しくなります。

チームメンバーには、決まったことだけを淡々とこなすのではなく、周りの人や物事の状況をよく観察・理解し、万が一の状況も想定しながら、変化に合わせて適切な行動をとる力が求められます。

5ー6.リーダーシップ

チームワークを高める必須要素の最後として、リーダーシップが挙げられます。これはメンバー全員に求められるスキルというよりは、メンバーを率いるチームリーダーに必要なスキルです。

チームリーダーは、目標達成までのプロセスを効率的に進めるため、それぞれのメンバーをサポートしながら、調整役を務めていきます。客観的な視点を持つことももちろん大切ですが、リーダーシップを発揮するためにはメンバーからの信頼も欠かせません。

6.まとめ

今回の記事では、チームワークの評価基準や、仕事においてチームワークが重要視される理由、チームワークを高める必須要素などを中心に解説しました。

あらためて記事の内容を振り返ってみましょう。

・チームワークとは、チームや組織全体の目標を達成するため、特定の集団に属するメンバーが同じ目標に向かって行う共同動作のこと

・チームワークの良し悪しを測る評価基準や、個人がチームワークへ与える影響を測る評価基準によって、チームの現状を把握できる

・仕事においてチームワークが重要視される理由は、以下の3つ

 ・VUCA時代への対応が求められている

 ・組織の生産性へ影響を与える

 ・エンゲージメントを左右する

・チームワークを高める必須要素は、以下の6つ

 ・目標設定と共通理解

 ・役割の明確化

 ・積極的なコミュニケーション

 ・チームへ適応しようとする姿勢

 ・個々の状況把握力

 ・リーダーシップ

本記事を参考に、チームワークの向上を目指しましょう。