児童期 / 思春期

【当事者に聞くLGBT】子供が同性愛者ではないかと感じた時、親はどうする?

LGBT当事者インタビュー01


LGBTとは?当事者家族の心がまえは?

Lesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bisexual(両性愛者)、Transgender(性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティの総称のひとつ。最近、色々なメディアで取り上げられる機会も増えました(クエスチョニング=性自認や性的指向を定めない人を合わせ、LGBTQという言葉で使われることも)。
もし、自分の子供が同性愛者ではないかと感じた時、親はどうすればいいのでしょう。
今回は、LGBTのL(レズビアン)の当事者であり、同性のパートナーを持つ大友さんにお話を伺いました。自身のセクシュアリティに気付くまでの経緯や、親へのカミングアウトした時の反応など、大友さん個人の経験談を通して、多様な性のひとつの在り方をお伝えします。

LGBT当事者インタビュー02

インタビュイー:大友 香果子さん(プロフィールはコチラ

高校生になっても恋心が芽生えない自分はおかしいの?



――― どんな子供時代を過ごされたのですか?


大友:大人の言うことをよく聞く子供でしたね。幼い頃に両親が離婚してから、仕事で忙しい母の代わりに、祖母と接することが多かったんです。祖母は激情的な人で、怒ると私の大事なぬいぐるみを切り刻んだりして怒りの感情をぶつけてくるので、機嫌を損なわないようにやり過ごしていました。
転機は、小学校6年生の時。祖母が勧めてきた中学受験を拒否したんです。ちょうど、周囲の友達の優しいおばあちゃん像とあまりにも違う祖母への違和感が大きくなってきた頃。絶対的な存在だった祖母に反抗したのは初めてのことでした。
それ以来、蓋をしてきた自分の気持ちを少しずつ出せるようになりましたね。中学校はいじめに遭って不登校気味にもなりましたが、高校は初めての寮生活で友達同士のバラ色の日々を過ごしました。自由と自律のバランスの大切さを学んだ10代でした。


―――  小学生や中学生の頃の、性や恋愛について教えてください。


大友:小学校の頃、ちょうど光GENJIが流行っていて、友達同士で誰が好きかを言い合うんですよね。私も同調圧力に負けて、「私はあっくんかな」なんて答えてみたりするんですけど、正直全然ピンとこなくて。同じクラスの誰々がかっこいい、みたいな話題にもついていけず、「そういうものなんだな~」と思って聞いているだけでした。
高校生になっても、恋愛に興味は湧かないまま。友達にどんどん恋人ができていく中で、私も実際に付き合ってみれば変わるかもしれない、と何人かお付き合いしてみました。けれど、恋愛感情は芽生えず、結局自然消滅してしまう。
自分って何かおかしいのかな?と、インターネットで調べていて知ったのが「Aセクシュアル(他者に恋愛感情や性的欲求を持たない人)」の情報です。読めば読むほど自分に当てはまるように思えて、もやもやしていた思いが一気に晴れた気分でした。
27歳、初恋の相手は女性だった。

LGBT当事者インタビュー03



――― その後、ご自身がレズビアンだと認識されたのはいつ頃ですか?


大友:今のパートナーと出会った27歳の時ですね。Aセクシュアルの情報を知ってから、もっと色んなことが知りたくなり、女性向けのイベントに行くようになったのですが、その中の一つのワークショップイベントで出会ったのが彼女でした。
彼女とは知り合ってすぐに打ち解けました。ただ、出会った当時は「気の合う良い友達ができたなあ」位の気持ちで、特別な感情はないまま友達関係を築いていました。


はじめて意識したのは、彼女と一緒にパレードを歩いた時。皆が自分自身に誇りを持って歩くのですが、それがとても開放的で、楽しかったんですね。その時、改めて自分の気持ちに向き合ってみたら、彼女に対して恋愛感情が芽生えていることに気づいたんです。
パレードの後、二人でご飯を食べたときに、生まれてはじめて自分から「付き合ってほしい」と伝えたのですが、緊張しすぎて自分でもどう言ったのか覚えていません(笑)。


――― 家族にはじめてカミングアウトしたときの状況を教えてください。


大友:母には、パートナーと付き合ってすぐに伝えました。「好きな人ができて、付き合うことになった。その人は女性なんだよ」と。母は「良かったね」と言ってくれました。


元々高校生の時、自分がAセクシュアルかもしれないと思った時にすぐ、母には伝えていたんです。その時は「あなたが言っていることはわかったけど、私は違うと思うよ」と返されたんです。当時は分かってくれないと苛立ったのですが、結果的に母の言うとおりでした。


母は、『好きなれる人ができて良かったね』という意味で「良かったね」と言ってくれたんだと思います。これまでも母は、私のことをひとりの個人として見てくれていて、いつも冷静に話を聞いてくれる人だったので、『きっとそう言うだろうな』と感じていました。

カミングアウトされたとき、シグナルを受けたとき、親の気持ちを口に出す前に、子供の気持ちに耳を傾けて


――― もし、自分の子供が同性愛者ではないかと感じたとき、親としてどのような関わりをしたら良いと思いますか?

LGBT当事者インタビュー04



大友:まず、子供から親にカミングアウトしてきた場合。カミングアウトという行為は、とても勇気が必要であることを伝えたいです。家の中ではどうしても親の方が強い立場ですよね。「出て行けと言われたらどうしよう」「認めてくれないかもしれない」など、様々な葛藤を乗り越えた勇気を認めてあげてほしいな、と思います。


また、子供の方から気づいて欲しくてシグナルを出すケースもあると思います。例えば、友人は同性愛をテーマにした雑誌を、あえて親の目の届く場所に置いていました。こうしたシグナルがなくても、親自身が気になるなら、直接本人に聞いてみてもいいと思います。
きっと、自分の子供が異性愛者(ストレート)でないことに、親自身も複雑な感情が湧いてくると思います。でも、どうかその気持ちを口に出す前に、まずはお子さんの話に耳を傾けてあげてください。


もしかすると、子供にはこう育ってほしい、という理想があるかもしれません。でも、ひとつの道だけが正解ではないはずです。何より、お子さんを信頼して、気持ちを尊重してあげることで子供は救われますし、一番大切なことだと思います。


もし、子供のセクシュアリティで悩んだり苦しんだりしている場合、「LGBTの家族と友人をつなぐ会」というNPO法人など、家族の会も各地で活動しています。一人で悩まずに、そのような会に参加してみるのもいいかもしれません。



ライティング:山田 好美/イラスト:ムラタ キミコ

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お話を伺った人・大友 香果子 (おおとも かぐみこ)

アクセサリー作家/モノ作り講師
“LGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティとAllyのための日本で唯一のレインボーカラーアクセサリー&雑貨専門店”「niji-depot」共同代表。
ヒコ・みづのジュエリーカレッジ ファッションアートアクセサリー科でコンテンポラリージュエリーを専攻後、2007年 niji-depotの前身「L&G Timpani」に加入。
身に着けた人がHappyになる。LGBTsであることに誇りが持てる。持っていることでAllyの表明をする。そんなレインボーカラーアクセサリーを作り続けている。
niji-depotウェブサイト:niji-depot.com/

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