大手私鉄Gはほとんど運営 高級志向の代名詞「百貨店」が衰退した本質的理由

キーワード :
,
大手私鉄グループのほとんどは、自社ブランドの百貨店を抱えている。百貨店不況のなか、今後の行く末とは?

鉄道会社を冠した百貨店

西武百貨店(画像:写真AC)
西武百貨店(画像:写真AC)

 近年、国内では百貨店が次々に姿を消している。さらに2020年からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって経営に大きな打撃を受けた既存店舗も多い。

 2022年に入り、セブン&アイホールディングスでは主力であるコンビニ事業に注力するために、子会社である西武百貨店とそごう百貨店の売却を検討、現在は交渉権を得た米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループと売却のための交渉を行っている。今後、フォートレス社の方針によっては西武百貨店とそごう百貨店の既存店舗は百貨店業態ではなくなる可能性がある。百貨店と言えば国内の都市型商業施設を代表する業態だったが、近い将来、一部の旗艦店や老舗百貨店などを除いて、国内から百貨店という業態が消えてしまう可能性もある。

・阪急百貨店
・西武百貨店
・小田急百貨店

など、百貨店には大手鉄道グループの名を冠したものが多い。

 ほとんどの大手私鉄グループが自社ブランドの百貨店業態を抱えており、国内の百貨店開発に関して鉄道事業者が深く関わっていることがうかがわれる。

 その歴史は昭和初期にさかのぼり、阪急・東宝グループ創業者の小林一三氏が箕面有馬電気鉄道(後の阪神急行電鉄)の沿線の宅地開発に伴い、沿線の都市機能の充実も推進し、1929(昭和4)年に国内初のターミナル百貨店となる阪急百貨店を大阪・梅田に開業したことにはじまる。これによって鉄道が都市基盤を作り上げていくビジネスモデルが構築され、その後、さまざまな鉄道事業者が追従することになる。

 百貨店はおしゃれ着やスーツ、服飾雑貨、貴金属、贈答品などの買い回り品(日用品とは異なり、じっくり比較購買をして購入する商品)を取り扱う商業業態であるため、広域からの集客力がある。ターミナルに開発すれば沿線住民の鉄道利用を促進する効果があった。また、高額商品を扱うことからラグジュアリーなブランドイメージがあり、企業や都市のブランディングにも寄与した。特に百貨店ブランドがその効力を発揮するのがお中元やお歳暮、お持たせなどの贈答品で、購入は百貨店でなければ――という意識が今も根強く残っている。

 さまざまな市場を取り込んできたショッピングセンターやコンビニは、高額な贈答品市場を取り込むために包装紙などに気をつかったりもしてきたが、百貨店にはなかなかかなわなかった。もっとも、現在はお中元やお歳暮といった慣習自体は縮小している。

全てのコメントを見る