世界のライフスタイルを“旅”のフィルターで読み解くトラベルカルチャーマガジンTRANSIT。44号では、日本人にはあまり馴染みがないけれど、実は地球の表面の4割にも相当するといわれている「砂漠」を特集しました。太陽に照らされてオレンジ色に輝く大きな砂丘、砂の上をゆったり歩くラクダの隊商、ポツンと佇む緑のオアシス、夜空に広がる星々……。ロマン溢れる神秘の光景に出会う旅にでかけてみませんか? 今回は特別付録ガイドブックから、これを観るためだけに行く価値がある5か所の絶景をご紹介します。

 


絶景① デッドフレイ [ナミビア]

©John Dambik / Alamy Stock Photo

日の出前の一瞬だけ現れる不思議な“絵画”

現地の言葉で“何もない”という意味のナミブ砂漠。約8000万年前に形成された世界最古の砂漠ともいわれ、ナミビアの大西洋沿い南北約1300㎞に山のように高いオレンジ色の美しい砂丘がひたすら連なっている。そんな砂漠内のナミブ・ノークラフト国立公園には、ある条件が揃ったときにだけ現れる“絵画”がある。
それを目にすることができるのは、かつて300mほどの高さの砂丘に囲まれた沼地の水が干上がってしまったことでできた「デッドフレイ(死の沼地)」と呼ばれる場所。そこにはひび割れた白い地面と、約900年前に枯れてカラカラになった木々が無造作に立ち並んでいる。“絵画”が現れるのは、明け方のほんのひとときに限られている。
朝日が昇り周りの砂丘を照らし、空の青色を映した白い地面が日陰になっているわずかな時間。ユニークな木々のシルエットが並ぶ前景と、ビビッドな発色の砂丘の後景がコントラストを生みだしたとき、何もない砂漠の真ん中で、奇跡の芸術は完成するのだ。朝日が昇りきり一面明るくなると、見え方が変化してしまうので、タイミングを逃さずに写真に収めておくべし。

ナミブ砂漠にはミーアキャットなどの動物の姿も。 ©Alan J. Hendry on Unsplash
星空は「国際ダークスカイ協会」により世界の美しい星空トップ3に認定されている。 ©Novarc Images / Alamy Stock Photo

ACCESS:首都ウィントフックから車で約5時間のセスリエム・キャンプサイトへ。午前6時に開くゲートを車で通り、途中からシャトルバスに乗り換えて向かう。BEST SEASON :4〜6月。日中は気温20〜25度ほど、夜間は10度前後。


絶景② ザ・ウェーブ [アメリカ]

©Petr Meissner

ジュラ紀にできた“神様の芸術”

砂漠地帯にそびえる、波のように大きく滑らかなうねりを描いた白やオレンジのグラデーションのかかった岩が、「ザ・ウェーブ」。まるで四次元世界のような空間をつくっているのは、1億9000年前のジュラ紀に砂漠が堆積してできたナバホ砂岩の地層だ。その美しさから、“神が創造した芸術”ともいわれている。ここはアリゾナ州とユタ州にまたがるパリアキャニオン・ヴァーミリオンクリフス自然保護区内にあり、実は2003年に発見されたばかり。自然保護の観点から入場は1日20人しか許可されておらず、その入場許可証争奪戦は倍率が高いことでも知られる。抽選は前日に行われるため、周辺に泊まり込みをする覚悟で臨んだほうがいい。

地球の地殻変動の痕跡を感じることができる壮大なスケール感。 ©Shaan Hurley

ACCESS:ラスベガスから車で4〜5時間。入場ゲートから徒歩移動のみで、2〜3時間を要する。BEST SEASON :4〜5月、9〜10月。5月の場合、日中は気温26度ほど、夜間は13度前後。

 
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