【精神科医が解説】観念奔逸とはどのような状態か?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、観念奔逸という単語と、どのような状態であるかについて解説していきます。

この記事の内容

精神科医が「観念奔逸」(かんねんほんいつ)という用語について解説します!

観念奔逸とは

観念奔逸(かんねんほんいつ)とは、端的にいうと躁状態でみられる思考の状態のことです。英語では「flight of ideas」と呼ばれます。

これはどのような状態かというと、どんどん新しい考えが浮かんできて思考が脱線し、目標から外れていってしまう状態のことです。

「奔逸」とは、非常に速く走ったり、思うがままに行動することを意味します。

こうした言葉の通り、次から次から考えが湧いてくるので、話題もどんどん変わり、話を聞いていく側がついていけないような状態になります。

こうした状態は、双極性障害の躁状態で見られることが多い思考の異常になります。

観念奔逸の例

一つ、観念奔逸の経験談をお示ししましょう。

私が精神科医になったばかりのころ、出張のためにホテルにチェックインした時のことです。

隣のチェックインカウンターで、おばさんがホテルマンと話していました。横にいる私にも聞こえる大声で、非常に早口で話していました。

最初はチェックインの手続きをしていたはずなのですが、話題がどんどん展開していき、「あっそういえば近くの〇〇美術館が・・・」

「〇〇といえば・・・」「あのねぇ、▲▲が・・・」と、次から次に、目まぐるしく話題が移り変わっていきます。ものすごく早口で、です。ホテルマンは呆気にとられていました。

今思うと、おそらく、この方は躁状態で観念奔逸がみられており、次から次へと考えが湧いてきて話が脱線してしていたのだと考えられます。

思考の障害の種類

さて、思考の異常は、教科書的には①思路の異常、②思考体験の異常、③思考内容の異常に分けられるといわれています。

思考の異常の種類

①思路の異常・・・連合弛緩、思考制止、観念奔逸など

→思考の過程の異常。まとまりを欠いたり、異常に亢進したり制止してしまう

②思考体験の異常・・・思考伝播・自生思考・強迫観念など

→自我が障害され、思考を自分でコントロールできなくなる

③思考内容の異常・・・妄想着想・妄想知覚・被害妄想など

この中でも、観念奔逸は、「思路の異常」つまり思考の過程に異常が生じてしまうタイプに分類されます。

思路の障害の種類

思路の障害にも様々な種類があり、それぞれの状態が特徴的に見られる病気があります。思路の障害の種類をまとめてみました。

対照的な「思考制止」

観念奔逸とは反対に、思考が湧いてこず、考えが停滞してしまう状態になることがあります。これを「思考制止」と呼びます。

こちらは「うつ状態」で見られる状態で、こうした状態のために判断力や集中力が鈍り、以前できていた作業などもできなくなってしまうことが見られます。

観念奔逸が思考が極端に亢進した状態だと考えると、うつ病で見られる思考制止はその真逆で、思考が停滞している状態になります。

おわりに

双極性障害(双極症)などで見られる、「観念奔逸」について説明してみました。

思考の異常は、精神疾患の特徴を理解する上でとても大切なポイントになります。皆様の参考になれば幸いです。

まとめ

「観念奔逸」は躁状態で見られる思路の異常
次から次へと新しい考えが湧いてきて、思考が脱線しまとまらなくなる
対照的な状態に「思考制止」があり、うつ状態で見られる

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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