【京アニ放火殺人】裁判員の感情を入れない『裁判に工夫』があった 元裁判官が明かす本音は「裁判官でも感情コントロールは難しい」【MBSニュース解説】
――京都アニメーション放火殺人事件で青葉真司被告に死刑判決が言い渡されました。「直前に犯行を逡巡している。(京アニの)ドキュメンタリーを見て犯行時間を決めている。ガソリンの準備など行動が合理的」など判決で述べられたポイントを踏まえると、「著しく低下していなかった責任能力はある」という判断がされたということでしょうか。 【独自入手】事件直後の京アニスタジオ内部の写真…1階は天井が抜け落ち鉄骨がむき出しに【写真を見る】 (元裁判官 西愛礼弁護士)検察官は「犯行を逡巡している」というところから、思いとどまれたでしょうという話をしていました。対して弁護側は「犯行を逡巡したとしても、妄想の影響が圧倒的で、嫌な出来事を全部消し去るためには、犯行するしかなかったという状態なら思いとどまらなかったんじゃないか」と主張していました。 裁判所は、「犯行の動機について精神疾患などが影響していたとしても、手段を選ぶ場面で影響はなく、本人の意思に従って行動した結果」と判断しました。妄想があったかなかったか、だけではなく、犯行にどのように関わっていたか、影響したか、というところが大事です。
「主文後回し」はなぜ行われるのか
――「主文後回し」という言葉、これはどういう意味になりますか。 (元裁判官 西愛礼弁護士)主文は、判決の結論の部分です。これを初めに伝えてしまうと、それ以降の内容がきちんと頭に入ってこなくなってしまうというところで、裁判官や裁判員も一生懸命考えて書いた判決文の内容なので、きちんと伝わってほしいというところから、重大な事件では結論部分を最後にお話するということが実務の中でよく行われています。 ――西弁護士も裁判官の頃は様々な判決を宣告してきたと思いますけれども、宣告される側の被告はどういう様子でしたか。 (元裁判官 西愛礼弁護士)事件に対する受け止め方は、被告人によって様々ですけれども、やはりそのときの様子は裁判官として一生残るというか、ずっと覚えているものです。 ――裁判員は、私達も選ばれる可能性があります。今回の裁判で言いますと、京都府内の候補者500人をくじで選びます。その中から320人に呼び出し状を送り、様々な理由で、できないという人も出てきて63人が手続きに出席した。出席率12.6%はかなり低いと聞きました。