【解説】「大人に言われたくない言葉」調査 なぜ叱る?“処罰欲求”と「叱る依存」…「自分で考えて動く力が奪われる」指摘も
■なぜ叱る?人が持つ“処罰欲求” 成功体験から「叱る依存」に
なぜ大人は叱ってしまうのか、効果はあるのか、臨床心理士の村中直人さんに聞きました。 そもそも人には、悪いことをした人に対して「処罰したい」という欲求があるということです。この欲求を満たそうとするのが、「叱る」という行為だといいます。 叱られる側の子どもはその場では言うことを聞きますが、これは“とにかく苦痛から逃れたい”という感情からくるものです。納得して行動を変えたわけではないので、また次に同じことを繰り返してしまいます。つまり「叱ることに子どもの学びの効果はない」のです。 ところが、叱る側としては、一時的にですが“言うことを聞いてもらえた”と満足感が得られ、成功体験になります。この成功体験が繰り返されると、「叱る依存」につながってしまうといいます。叱る依存の親から繰り返し叱られた子どもには、「自分で考えて動く力が奪われる」との影響があるそうです。
■叱る状況を避けるには? “従わせる”発想を変える
では具体的にどうしたらいいのか、村中さんが提案しているのは大きく3つです。 (1)前さばき 叱る状況を避けるための準備です。例えば、1日のスケジュールの中で叱ってしまいそうなタイミングを予測して、叱らずに済むように子どもと話し合っておくなど準備をしておきます。 (2)できる・できないを見分ける やらないではなく、実はできないということもあります。学校の準備が10分で終わらない時は「遅い!」と叱るのではなく、どうすればできるか話し合って「じゃあ15分でやってみようか」と決めてみるといったことです。 (3)冒険モードを邪魔しない 子どもがやる気になるのは「自分で決めた」「自分がしている」という感覚です。周りは、その子が考えて決めるまで邪魔しないことが大切だといいます。
教育学、哲学が専門の熊本大学の苫野一徳准教授も「まず、『大人が子どもを従わせる』という発想はやめて、子どもも対等の人間として尊重する姿勢が大事。子どもの意見を聞くのと同時に、大人側の意見もしっかりと伝えること」と指摘しています。そして「一番根底にあってほしいのは、大人も子どもも『あなたは存在そのものがOKだよ』という気持ちでいること」だと話していました。 子どもたちには「大人に言われてうれしい言葉」も聞きました。 「いいじゃんやってみなよ」 「頑張ったね」 「ありがとう」 「そんなことであなたのことを嫌いになったりしないよ」 「大丈夫」 背中を押したり、安心させたりする言葉が多く聞かれました。 ◇ 今回、調査に参加してくれた高校生たちの多くが、「子どもと大人の対話の機会がもっと必要」だと話していました。一方で、「日常では中々、親子の時間がとれていない」とも話していて、だからこそ大人も子どもも、より意識して対話する機会を作ることが大切だと気づかされました。 (2023年5月2日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)