Yahoo!ニュース

【知らなかった?】「涼しい顔をする」は余裕の表情、じゃないの?【慣用表現②】

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

日々当たり前に話している日本語。何気なく発しているそのことばは、本当に正しい意味で使われていますか?疑問にも思っていなかった表現、もしかしたら使い方を間違っているかも…。

このシリーズは日本語の中で、多くの日本人に誤用されてしまっている慣用表現たちをご紹介。あなたの日本語力、この機会にチェックしてみては?

※前回の記事:「敷居が高い」の正しい意味は→ こちら をご覧ください!

「涼しい顔をする」は「大変なのに余裕そう」?

今回は、またまたこれも日常生活でよく耳にする慣用表現「涼しい顔をする」についてです。

「あの人、あんなに大変な案件いくつも抱えてるのに、いつも涼しい顔してこなしてるよね」

さて、この文を見てみなさんはどう思いますか。特に何も感じない?違和感がある?実際に、日常こんな使い方をしている人もいるのではないかと思います。

結論を言うと、この使い方は間違いです!

「涼しい顔をする」という表現。現在、多くの人が「本当は大変なのに余裕そうに、平気そうにしている」という意味で使用しているのですが、実はこれは誤用。「え?そうだったの?」と驚いた人もいるのではないでしょうか。

「涼しい顔をする」は、関係あるのに知らないふり!

では「涼しい顔をする」の本当の意味はどのようなものなのでしょうか。

正しい使い方の例文をひとつ。

「自分のミスで取引先を怒らせて上司が慌てているというのに、本人は涼しい顔をしている」

正しい意味は推測できましたか?

本来「涼しい顔をする」は「自分に関係のあることなのに、知らんぷりをしている」というのが、正しい意味なのです。元々はネガティブなニュアンスで使用される表現なのですね。

ですが文化庁の令和4年度「国語に関する世論調査」によると、正しい意味で理解している人の割合が22.9%であるのに対し、誤りを「正しい意味」とした人がなんと61%との結果が出ています。もはや間違いが主流?ともいえる状況です。正しく理解しているほうが少数派とは、なんとも複雑な気持ちになりますね。

“当たり前”の日本語の「正しい」知識を増やそう

日本語に限らず、ことばは変化が避けられません。変化するプロセスにも理由があり、一概にそれを「悪」とするのは乱暴でしょう。ですがその昔、その表現が生まれた経緯もまた、尊重すべきものではないでしょうか。

そもそも間違いを間違いと知らないと、大切な場面や目上の人とのやり取りで思わぬ齟齬を生んでしまうこともあるかも。

この機会に“当たり前”の「日本語」に目を向けて、ぜひ「正しい日本語」の知識を増やしてみてください。

日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

高橋亜理香の最近の記事