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「気を使う人」と「気遣う人」の違いとは?

畠山仁美所作講師

「似ているけれど意味が違う言葉」その5

今回は、「気を使う」と「気遣う」の違いについて掘り下げてみます。
あなたは、気を使っていますか?気遣っていますか?

「使う」と「遣う」の違い

結論から言うと、

”気を使う” は、「自分のため」 
”気遣う” は、「相手のため」

という違いがあります。

「使」は、「イ」+「吏」で、どちらも人を表しています。

「吏」は役人のことで、身分の高い人に仕える、奉仕することを表している漢字です。
身分の高い人が、自分のために人を働かせている、ということですね。

そこから転じて、「何らかの働きをさせること」「人や物などをある目的のために用いること」「目的を達成する手段」といった意味を持つようになりました。

「遣」は、「肉を届ける人」を表している漢字です。そこから、誰かのために人や物を送る、つかわす、差し向ける、といった意味になりました。

「気を使う」と「気遣う」

「気を使う」という行為そのものは、周りの人へ配慮した行動であるけれど、その目的はあくまで自分のためです。

たとえば、人から嫌われないように、変に思われないように、上司から評価されるように、などなど、自分の利益ために自分のエネルギーをつかって相手に配慮しています。

一方、「気遣う」は、自分のためではなく、あくまでも相手のことを思いやって、相手のために(自分の)心を配っている、心配している、という違いがあります。

たとえば、同じ「上司に気をつかう」行為でも、「上司に気を使っている」は、上司のご機嫌を取ったり顔色を伺って行う行為、「上司を気遣う」は、多忙な上司の体を心配してフォローする、といった違いになるでしょう。

ちなみに、「使う」は動詞形、「遣う」は名詞形で用いられます。

気を使う(動詞)/ 気遣い(名詞)

お金を使う(動詞)/ 金遣い(名詞)

言葉を使う(動詞)/ 言葉遣い(名詞)

(例外として「魔法使い」「召使い」のように慣用的に「使」が用いられるものもあります)

まとめ

◆気を使う:相手に配慮した行為ではあるけれど、目的は自分のため。

◆気遣う:相手のことを思いやっている、心配している。相手のための行為。

このような違いがありますが、「情けは人の為ならず」と言われます。「気遣い」は相手のための行為ですが、めぐりめぐって自分に戻ってくると考えると、ある意味、自分のためにもなると言えるかもしれませんね。

日常なんとなく使っている、似ているけれど意味が微妙に違う言葉を調べてみると、その物事の本質が垣間見えることがあります。これからも色々な言葉の違いを取り上げていこうと思っています。

所作講師

日常の振る舞いを見直すことで、心・体・生活を整えるお手伝いをする所作講師。立つ・座る・歩く・物を扱う・挨拶する、といった日常あたりまえに行っている所作を通して、振る舞いだけでなく自分の内面も見つめ直すレッスンが好評。2011年の開講以来マンツーマンレッスンにこだわり、一人一人と向き合ってきた。ブログ【所作美人のヒント】では、バタバタと忙しい日々の中で、所作を通して自分を磨く考え方を発信。著書「一日一分からはじめる『おだやかな人になる所作の習慣』」

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