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「耐える」と「堪える」:違いと使い分け

「耐える」と「堪える」の使い分け

「耐(た)える」と「堪(た)える」の使い分けについて、筆者の見解と自己流の覚え方を書きます。

意味と用例

意味と用例

「耐える」「堪える」の意味

  • 耐える…(肉体的・精神的に)我慢する、(物理的に)持ちこたえる
  • 堪える…(肉体的・精神的に)我慢する、(物理的に)持ちこたえる、能力がある、価値がある

「堪える」のほうが幅広い意味を持っています。「すぐれている」というニュアンスを表現できるのは「堪える」だけです。

「耐える」の用例

  • 痛みに耐える、厳しい訓練に耐える
  • 高温に耐える、衝撃に耐える

「堪える」の用例

  • 議長の任に堪える
  • 鑑賞に堪える、読むに堪えない

使い分け

どちらも使えるときは「耐える」を

  • 重圧に耐える? 堪える?
  • 台風に耐える? 堪える?

上の例文の場合、どちらも間違っていませんが、筆者は「耐える」を使います。理由はふたつあります。

  • 「我慢する」「持ちこたえる」の意味では、「耐える」の用例をよく見かける
  • 「堪える」には「たえる」のほか「こたえる」「こらえる」という読みもあり、どれのつもりなのか紛らわしい

よって、意味から判断してどちらでもかまわない場合は「耐える」を使い、そうでない場合のみ「堪える」を使っています

芥川龍之介や太宰治は「堪える」のほうを好んでいたようです。思い入れがあれば、まねてみるのもよいですね。

「風雪にたえる」はどっち?

「風雪にたえる」の「たえる」は、漢字で「耐える」と書きます。

慣用句として定着した表現ですので、「風雪に耐える」の形のまま覚えて使いましょう。

「慚愧にたえない」はどっち?

「慚愧(ざんき)にたえない」の「たえない」は、漢字で「堪えない」と書きます。

「堪える」は、「〜に堪えない」の形で使われたとき、「感情が抑えられない」「状態を維持できない」といった意味を持ちます(例:「憂慮に堪えない」「見るに堪えない」)。

ちなみに、「慚愧に堪えない」は「自らの行いを恥じる気持ちを抑えられない」という意味で、「残念に思う」とは違います。

筆者流の覚え方

「堪えられない」とはいわない

筆者は「『〜に堪えない』は『〜に耐えられない』に近いな」「『聴くに堪えない』は『聴きつづけることに耐えられない』ってことね」というふうに覚えています。

つまり、「堪える」には「できる」のニュアンスが含まれているのだから、「堪える」と「〜られる」(可能の助動詞)を同時に使うことはありえないということです。「耐えられる」「耐えられない」はありだけど、「堪えられる」「堪えられない」はなし。
(※「堪える」を「耐える」と同じように「我慢する・持ちこたえる」の意味で使う場合は除きます。)

「堪える=『できる』を含む」と覚えると、たとえば「国際的な評価に耐える」は誤りだとわかりますね。「『評価を我慢する』のではなく『評価することができる=評価に値する』といいたいのだな、じゃあ『堪える』のほうか」と、そんな感じで筆者はふたつの漢字を使い分けています。

漢字表記や言い回しに迷ったら、この話を思い出してみてください。