移植師コラム

OPU胚から生まれる和牛子牛の出生体重

OPU胚から生まれる和牛子牛の出生体重

北海道十勝は2番草が終わって、デントコーンが始まりますね。だんだんと畑も冬支度の様相です。気づけば凍れてくるのでしょうね。早いものです。
さて、今日は体外受精胚から生まれる和牛子牛の出生体重に関してです。気になっていた方も多いのではないでしょうか。過大子のこととか。弊社のHPの料金表にも小さく「※過大産子が生まれる可能性があります」と書いてあります。
今日は実に正直に、不都合な部分も開示していきます。

 

・注意してほしいこと
今回のデータで使った受精卵は全てノベルズ製造のものです。ですので、この結果だけを見て、「体外受精卵ってそういうものなんだ」って結論付けないようにご注意ください。他の受精卵製造会社さんのものとは培地やドナー・レシピエント、飼養管理などの条件が違いますので。

 

・条件
レシピエント:ホルスタイン経産牛
受精卵:黒毛和種繁殖雌牛からOPUにより卵子回収後、通常精液で体外授精処置を施し作成した黒毛和種体外受精卵
出生時期:2021/7~2022/7月出生
出生場所:ノベルズグループ酪農牧場
出生頭数:流死産含む1214頭
分娩誘起:遅延状況に応じて分娩誘起
体重計測タイミング:生後すぐの初乳を飲む前
死産・流産の判定:予定日2週間前までに生まれて死亡した場合に流産、2週間以内に生まれた場合に死産と定義

 

・結果

 

どう感じられたでしょうか。
過大子に関する結論としては、“出る”ということになります。93キロが出てますからね汗。

私は”60キロを超えたら過大子と考えているので4%の確率で過大子が生まれると定義しています。
というか、そもそも過大子って何キロ以上からでしょうか。(ちょっとグチっぽくなります)
よく過大子関係のことを聞かれるんですが、過大子の基準が無いので答えようがないんです。専門家が明確に定義しているわけでもないし、そもそも子牛の体重を計る人自体がほぼいないです。
出てきたときに「でっかいなぁ、難産だったなぁ」って思ったら過大子って言ってるんじゃないのかなって感じです。
答えようがないので、今回は明確に「体重」という、数字で表せる基準で示しました。

 

・何が出生体重を左右するか

子牛の出生体重に関わる要因としては、「レシピエントの大きさ」「種雄牛の血統、育種価」「ドナーの血統、育種価(特に枝肉重量)」「乾乳期の栄養状態」など様々です。弊社は種雄牛に気高系を使うことが多いです。
血統的なこととして、使用している上別府種畜場の若百合号からは60キロ以上の子牛が産まれていません。さらに平均体重も低めで41キロです。これは若百合号が早産傾向にあることが要因と思われます。
他にも、枝肉重量のゲノム育種価が「D(一番低い)」のドナー牛からは60キロ以上産子は一頭も生まれていません。逆に「H(一番高い)」のドナーからは60キロ以上の牛が生まれる確率が高くなります。そして平均して子牛も大きいです。

経産牛から産ませるか、育成牛から産ませるか、和牛から産ませるかなどでも出生体重はかなり違ってきますね。

 

 

その他ツッコまれそうな部分の補足です。
「遅延日数-75日って?」これは早期乾乳した牛が流産したものです。
「滑車使用率高くない?」これは“のっぴきならない”理由があるんですが、言えません。
「オス多くない?」体外受精胚を作り始めてから一貫してオスが多い傾向にあります。もちろん性判別精液は使用していません。仮説としては、Y精子が授精した胚の方が発生が早く、Day7において高グレードの胚を選んで移植すると自然とオス胚の方が多くなり、そして受胎率もよいのでオスが多くなるのでは?と考えていますが、この仮説が合っているかが分からないです。誰か教えてほしいです。

 

まとめとしては、弊社の体外受精卵をホルスタイン経産牛に移植した場合、“平均して大きな牛が生まれる”かつ、“60キロを超すような牛が4%の確率で生まれる”ということになります。

遺伝子異常が原因と思われる超過大子が生まれる可能性があることは確かです。

 

弊社受精卵の使用を迷われている方、ぜひご参考にしてください。

また、「なるべく小さく産ませたい」という場合もご相談ください。種雄牛・ドナーを工夫して小さくなるように調整します。
種雄牛別のデータが見たいという方、お手数ですが問い合わせページからメールいただけると幸いです。直接送らせていただきます。

 

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