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『ともぐい』―人と獣、命の応酬が織り成す熱狂的な物語

人間と獣が交錯する物語に魅了されたことはありませんか?
ともぐい|河崎 秋子 著】は、明治後期の北海道を舞台に、人間と獣の理屈なき命の応酬を描いた河﨑秋子さんの作品です。
本作は、猟師でありながら獣そのものとなった男、熊爪の姿を通じて、人間と獣の間に生じる摩擦や悲哀を描き出しています。
一体どのような物語が繰り広げられるのでしょうか?
その魅力に迫ります。

明治後期の北海道、猟師と獣の境界線

明治後期の北海道の山中で、猟師として生きる熊爪は、人間のなりをした獣としての生活を営んでいます。
彼は狩猟の技術だけでなく、獣の嗅覚や感覚をも身につけ、獲物との対峙を果たしています。
熊爪は人間と獣の間で揺れ動く存在であり、その境界線を探求する姿が本作の魅力の一つです。

あらすじ

死に損ねて、かといって生き損ねて、ならば己は人間ではない。
人間のなりをしながら、最早違う生き物だ。
己は人間のなりをした何ものか――人と獣の理屈なき命の応酬の果てには。
明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪は、ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つける。
男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたと言うが…。
図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。
人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果ては―令和の熊文学の最高到達点!!

衝突する運命と獣たちの業

ある日、熊爪の元に負傷した男が現れます。
男は冬眠せずに活動している熊「穴持たず」を追っており、熊爪との出会いは必然的なものでした。
この出会いをきっかけに、人と獣の間に生じる運命の衝突や獣たちの業が織り成す物語が展開されます。
熊爪と男がひとつの獲物を巡り対峙する様子は、緊迫感に満ちた描写で読者を引き込みます。

時代の変化と獣たちの悲哀

本作は、明治後期の北海道を舞台にしていますが、その時代の変化も物語の重要な要素の一つです。
ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化が、獣たちの悲哀を浮き彫りにしています。
人間と獣の存在が交錯する中で、獣たちは自身の生存をかけて闘い、人間との摩擦を抱えています。
その姿は、読者に深い感銘を与えることでしょう。

まとめ

ともぐい|河崎 秋子 著】は、人と獣の命の応酬を描いた熱狂的な物語です。
明治後期の北海道を舞台に、猟師でありながら獣そのものとなった男、熊爪の姿を通じて、人間と獣の間に生じる運命の衝突や摩擦、そして獣たちの悲哀が描かれています。
本作は、河﨑秋子さんの流動物文学の最高到達点と言えるだけでなく、令和の熊文学の最高到達点とも言える作品です。
人間と獣の境界線を描いたこの作品に触れることで、私たちの内に秘められた獣の部分に気付くかもしれません。

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