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カラスの魅力をまるっと、とことん深掘りした一冊

Author:髙野丈(編集部)

毎日欠かさず続けている、仕事の前の野鳥観察。わたしの「通勤路」である公園では、季節によって増減がありますが、約1時間歩いて15~40種ほどの鳥を観察することができます。林を華麗に舞うサンコウチョウ。美しい歌声を聞かせてくれるオオルリ。木々のすきまを疾風のように駆け抜けるオオタカ。毎日何かしら出会いや発見があって飽きないし、貴重なデータの蓄積にもなるので、もう20年近く続けています。この毎朝の観察で欠かさないのが、水道のチェック。公園の各所に設置されている水飲み場にカラスがきていないかどうか、必ず確認しています。

小社刊『ニュースなカラス、観察奮闘記』や『鳥博士と天才カラス』で紹介したのが、水道を操作して水を出し、飲んだり浴びたりする「水道ガラス」。そんな芸当をやってのけるのはほんの一握りの天才であり、そんじょそこらのカラスができるものではありません。わかってはいますが、自分のフィールドにも天才カラスが誕生してほしい!と願いつつ、水飲み場に注目しているというわけです。

このときは(いけー!やれー!)と心のなかで叫びながら撮影していた。幼鳥だからムリだろうと思っていたら、レバーをくわえるなど結構いい線いっていた。しかし結局、水を出すには至らず

野鳥専門誌『BIRDER』編集部が総力を挙げて注目の鳥を紹介する「とことん」シリーズ。大好評の『とことんエナガ、シマエナガ』に続く第2弾のテーマを検討したら、すんなりカラスに決まりました。とにかく話題に事欠かないカラスは、とことん深掘りするのに絶好のテーマだからです。

妖精のようなかわいさで人気が突出しているシマエナガに比べると、540°くらい対照的なカラス。一見コワモテだけど、よく見るとカッコいいし、もっとよく見るとかわいい……ような気もする。なんだかテンションが高く、やんちゃなようだけど、じつはすごいビビり。なにを考えているのかわかりにくい小鳥とは対照的に、反応がわかりやすく表情や感情が伝わってくる気がして観察のしがいがある。夜もまだ明けやらぬ繁華街から、夕暮れの林まで、いつでもどこにでもいる。ビビりゆえ、写真を撮ろうと不用意に近づくと逃げる。相手との駆け引きが必要なので撮影も楽しい。

ブトの正面顔がゴリラっぽく見えるのはわたしだけ?

ワインが一つの趣味として成り立つように、カラスもまた趣味として楽しめるかもしれません。『とことんカラス』は、そんな魅力たっぷりのカラスの世界を、俗に「カラス屋」と呼ばれる研究者や観察者、写真家などの強力な協力を得てくわしく紹介した一冊。エナガという名のエナガはいるが、カラスという名のカラスはいません。身の回りで見られるハシボソガラスとハシブトガラスの特徴や違いから、国内外で見られるほかの黒いカラス、カラス科のほかの鳥を紹介。そして、日々のくらしから一年の動き、驚きのかしこい行動やおっちょこちょいで愛嬌たっぷりな一面まで、興味深い生態をくわしく解説します。さらに、歴史的に見たカラスと人の関わりや、日常生活でのカラスとの上手なつき合い方、カラス撮影のコツやもしものときのカラスレスキューまで。魅力的なビジュアルと、思わず驚くディープな情報を満載。

野鳥専門誌が本気で作った最新版カラス入門。9月15日発売。A5判、128ページ、1980円(税込)
もくじには、清水哲朗さん撮影の味わい深いポートレートをどんっ!と
清水さんには巻頭のグラビアを担当していただきました
ハシボソガラスとハシブトガラスの違いを、どの図鑑よりもくわしく。声と鳴き方の違いは動画で
松村伸夫さんの世界のカラス。月刊誌で紹介したこともありますが、最新の写真でアップデート
観察の醍醐味といえる、かしこい!行動、かしこい?行動をたっぷり紹介。動画もあります

わたしは今年、ハシブトガラスが翼にアリをはべらせる「蟻浴」をしているところを見つけ、観察・撮影することができました。注意深く見るようにしていたからこそ、気づけたのです。カラスが煙突から出る煙を浴びる、「煙浴」を観察するのが次の目標。もちろん、公園の水飲み場チェックも毎朝欠かしません。

アリをはべらせて羽づくろいする蟻浴。なかなか見られない

みなさんもカラスをあらためてよく観察してみてください。まだ誰も知らない、興味深い行動を発見できるかもしれませんよ。

9月6日(水)カラスの日にオンラインイベントを開催します!

『カラスの教科書』の松原始さん、『カラスの常識』の柴田佳秀さん、『札幌のカラス』シリーズの中村眞樹子さん、『トウキョウカラス』の清水哲朗さん、4人の「カラス屋」が出演! 濃厚なカラストークを繰り広げます。
この贅沢な講演会がなんとなんと視聴無料。以下のバナーをクリックして詳細をご確認のうえ、お申し込みください。


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