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【薬剤師が解説】病院で使われる医療用麻薬の知られざる秘密! 5つのポイントで徹底解説

病院薬剤師が教える医療用麻薬の使い方①(youtube)

病院薬剤師が遭遇する医療用麻薬の現場



1.医療用麻薬とは? 基本情報を知ろう


 「麻薬」と聞くとどのような印象を持つでしょうか? 僕は麻薬と聞くと乱用や、中毒、犯罪などが思い浮かびます。しかし麻薬は適正に使用することで、医療現場においてとても優秀な薬です。この医療現場において使用される麻薬を「医療用麻薬」と言います。

 医療用麻薬は、主に痛みせん妄の緩和鎮静作用麻酔などの目的で使われる薬剤です。一般的な麻薬と違い、医療現場で厳格な管理のもと、患者さんの症状に応じて処方されます。
 代表的な医療用麻薬には、モルヒネやフェンタニル、オキシコドンなどがあります。


2.医療用麻薬の処方・管理方法

 ①.医療用麻薬の処方箋


 医療用麻薬は、通常の処方箋とは異なる専用の処方箋が必要です。これは、医療用麻薬の誤った使用や悪用を防ぐための措置です。医療用麻薬の処方箋は、患者さんの氏名住所性別年齢処方箋の発行日医療機関名医師の署名・捺印などが明記されています。

 ②.医療用麻薬の調剤


 医療用麻薬の調剤は、薬剤師が厳密な手順に従って行われます。まず、専用の処方箋が提示された場合、薬剤師は処方箋の内容を確認し、適切な医療用麻薬を調剤します。その後、患者さんに対して、用法用量や副作用、注意
事項などを説明します。

 ③.医療用麻薬の保管


 医療用麻薬は、他の薬剤とは別に専用の保管庫で保管されます。これは、誤って取り出されたり、悪用されるリスクを最小限に抑えるためです。また、保管庫は施錠され、限られた医療関係者だけが使用できるようになっています。

 ④.医療用麻薬の廃棄


 医療用麻薬の廃棄も、一般的な薬剤とは異なる手続きが必要です。使用期限が切れたり、不要になった医療用麻薬は、病院やクリニックの薬剤師が管理し、都道府県知事に届け出て、当該職員立ち合いの元、回収・廃棄が行われます。これにより、誤った処分による悪用や環境への影響を防ぐことができます。


3.医療用麻薬の効果と副作用

 医療用麻薬は、痛みを緩和するために病院で処方されることが多い薬剤ですが、その効果と副作用については十分に知られていないことが多いです。

 ①.医療用麻薬の効果


 医療用麻薬は、主に以下のような効果があります。
・痛みの緩和
がんや手術後の痛み、慢性疼痛など、強い痛みを緩和するために使用されます。僕たち病院薬剤師もがんに対して使用するイメージが一番強いです。

・麻酔
 手術時の麻酔や、検査時の局所麻酔として利用されます。これも病院薬剤師だとオペ室とのやりとりをするので大量に処方されているのを見ます。

・鎮静作用
 不安や興奮を抑える効果があり、手術前の不安やせん妄の治療に使われることがあります。

 ②.医療用麻薬の副作用


 医療用麻薬には、耐性ができる副作用と、できない副作用があります。体制ができる副作用とは、しばらく使用することで慣れるようなイメージです。副作用に以下のものがあります。

・便秘
 医療用麻薬は腸の動きを鈍らせるため、便秘が引き起こされることがあります。便秘になる患者はとても多く、耐性ができない副作用と言われます。便秘に対して使用する薬剤としては酸化マグネシウムや、センノシドがあります。最近ではスインプロイク®(ナルデメジン)というオピオイド使用患者にのみ使用できる下剤などもあります。

・吐き気/嘔吐
 特に治療の初期段階で現れることが多いですが、制吐剤と併用することで緩和されることがあります。この吐き気は耐性が生じるためある程度使用すると改善することが多いです。使用する制吐剤としてはノバミン®(プロクロルペラジン)やプリンペラン®(メトクロプラミド)が多い印象があります。これらの制吐剤を長期で使用すると薬剤性パーキンソンやアカシジアなどの副作用がでるため、吐き気が落ち着いたら終了します。僕は2週間前後使用後、患者と相談し改善していれば医師へ中止を提案しています。

・眠気/めまい
 医療用麻薬は中枢神経系に作用するため、眠気やめまいが生じることがあります。こちらも耐性が生じる副作用と言われます。眠気が強い場合は量を減らすなどの対応をします。

・呼吸抑制
 高用量や長期使用により、呼吸が浅くなることがあります。この副作用が命にかかわるため一番怖い副作用だと思います。患者の呼吸状態やSPO2など注意深く観察する必要があります。特に急激な増量などしたときは注意が必要です。

・依存性
 医療用麻薬を知らない患者が気にする副作用の一番はこれです。やはり麻薬と聞くと依存や中毒をイメージする方が多く、使用することをためらう方も多いです。しかし実際には疼痛に対して適正に使用することで依存性はほとんど生じないと言われています。なので我々薬剤師は患者の不安を取り除くこともとても大切だと思っています。当然長期使用や不適切な使用が依存症を引き起こすリスクもあります。


4.病院薬剤師が遭遇する医療用麻薬の現場

 病院薬剤師が医療用麻薬を扱う現場として今回は病棟にてがん性疼痛に対して使用する場合についてお話しします。

 がんによって生じる痛みというのは通常の痛みとは異なり内臓痛・鈍痛と言われたりします。痛み止めと言えばアセトアミノフェンやNSAIDsをイメージする方も多いと思いますが、これらはがん性疼痛に効きにくいことや、痛み止めとして弱いことがあります。また腎機能や肝機能が低下している患者では使用しにくいというデメリットもあります。
 そこで使用するのが医療用麻薬です(この間に弱オピオイドとしてアセトアミノフェン/トラマドールの合剤を使用することもあります)。
 薬剤の選択は患者が内服できるかどうか、腎機能、嚥下、コンプライアンスなどによって決めます。

 患者の指導では、患者へ痛みの程度の確認を行います。痛みは検査値では測れないので患者さんの主観によります。大したことなくても痛いという方もいれば、痛いはずなのに痛くないと嘘を言う方もいます。
 僕は「痛みは我慢するだけ損ですよ、依存性は適正に使用することで生じることはほとんどないですよ」と患者の不安を取り除くとともに使用を即します(もちろん無理強いはしません、正直医療用麻薬を使用するとなると
手続きや提案等こちらも大変なので)。
 痛みの評価については今回詳しくはお話ししませんが、フェイススケールなどを用いて使用前、使用後、増量後などにどう変わったか判断します。

 そして副作用について説明しますが、ここは僕はとても慎重にお話しします。過度に不安を与えることで使用を渋る方も多いからです。なので副作用の説明の際にはどんな副作用があるのか、初期症状には何があるのか、副作用が出た場合どう対応するのかなど説明します。僕はこの指導で患者さんから過剰に拒否られたことはないです。
 開始後は医師・看護師と協力の元、疼痛を確認しながら増量等検討していきます。
 がん患者さんは最終的には内服できなることが多く点滴へ移行していくことが多いです。点滴の場合は速度や濃度に注意していきます。医師の中にはかなり大胆に増量する方もいるので、慎重に対応していきます。
 副作用のコントロールがつかない、増量しても疼痛が改善しないということがあります。その場合は別の麻薬に変更することがあります。例えばオキシコドン(40㎎/日)を使用していたが、疼痛が改善しない。この場合別の薬剤への変更を検討します。モルヒネに変更する場合、薬の力価が違います。なので換算表を確認し同等の力価になるように投与量を決定します。オキシコドン40㎎の場合、モルヒネだとおおよそ60㎎になりますが、換算表は医療機関やメーカーによって違うためご注意ください。ちなみのこのオピオイドを変更することを「オピオイドローテーション」と言います。


5.医療用麻薬に関する誤解やQ&A

Q:医療用麻薬はどのくらいの量まで増量できますか?
A:医療用麻薬には基本的に上限はありません(常識の範囲内ですが)
 麻薬の増量は医師の判断によりますが、大体現在の内服量の+30%前後で行うことが多いです。数日~数週で評価・増量を繰り返しますが、長く使用している方だとほんとに大量の薬を内服される方もいます。

Q:がん以外の疼痛、例えば慢性の腰痛でアセトアミノフェンやNSAIDsが効かない場合使用することはできないですか?

A:麻薬の中には慢性の疼痛に使用可能な薬剤があります。麻薬の処方はできる医師・できない医師がいるので相談していただくといいと思います。

Q:医療用麻薬によって寿命は縮む?
A:これを誤解している方が意外と多いのですが、医療用麻薬の使用によって寿命は縮みません。おそらくがん患者が使用し始めてからなくなることが多いので、寿命を縮めるイメージがあるだけだと思います。


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