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七面鳥は名前も七変化

七面鳥は北アメリカ大陸原産のキジ科の鳥です。

キジの仲間では最も大きく、体長1メートルを超えるものもあります。
短距離の跳躍はできるのですが、軽やかに大空を飛ぶことはできません。

アメリカの先住民によって古くから家禽化されてきましたが、16世紀に食用としてヨーロッパに伝わりました。

英語では「ターキー」といいますが、これはトルコの国を意味します。
トルコを経由して伝わったと誤解されたことに起因するものです。

面白いことにターキーという名は移民によってアメリカに逆輸入されました。
今もアメリカの人々は七面鳥をターキーと呼んでいます。

アメリカでは感謝祭のご馳走として七面鳥は欠かすことができません。
お腹に詰め物をして丸ごとローストする料理が定番です。

「サンクス・ギビング・デー」のことを「ターキー・デー」とも呼ぶそうです。
それだけ七面鳥がアメリカの人々に親しまれているということです。

毎年ホワイトハウスでは大統領が七面鳥に恩赦を与えることが恒例です。
大統領に贈られた七面鳥を食べずに放免してあげるという行事です。
ケネディ大統領以来の伝統だそうです。

欧米では七面鳥のローストはクリスマスのご馳走でもあります。

ディケンズの有名な小説「クリスマス・キャロル」の最後の場面に、七面鳥の丸焼きが登場して以来、広く普及したともいわれています。

日本ではクリスマスというとローストチキンの方が一般的です。
やはり日本人には鶏肉の方が親しみやすいのでしょうか。

七面鳥の味は淡白なので日本人にも好まれると思うのですが、丸ごと焼ける大きなオーブンが日本には少ないのかもしれません。

国内でも七面鳥を飼育している農家があるようですが、ほとんど流通していません。
一般に市販されているのはロースト用に輸入された冷凍の七面鳥です。

ローストの他にターキーサラダやターキーサンドイッチにも用いられます。
甘いクランベリーソースが添えられることもあります。

肉料理に甘いソースなんて意外に思われるかもしれませんが、和食の照り焼きや焼き鳥なども甘いタレを使っています。

七面鳥にクランベリーソースは結構合っています。
オレンジソースやアップルソースも合いそうです。

ところで七面鳥という和名はどうしてつけられたのでしょうか。

七面鳥は江戸時代にオランダから日本に伝わったといわれています。
ですから当時長崎にいた日本人が命名したと考えられます。

おそらく名の由来は七面鳥の顔の色ではないでしょうか。
七面鳥は頭から首にかけて羽毛がなく皮膚は赤い色をしています。

繁殖期になるとオスの頭部の皮膚が赤から青や紫色に変わります。
顔の色が七変化することから七面鳥と名づけられたようです。

ちなみに中国語では七面鳥のことを「火鶏」というそうです。
何と発音するかわかりませんが、赤い顔の色に因んだ命名でしょう。

フランス語では七面鳥を「ダーンド」と呼びます。

これは「コック・ダーンド」を短縮した名称です。
「インドの鶏」という意味です。

インドを経由して伝わったと考えたわけではないのでしょうが、異国情緒あふれる名前で呼びたかったのかもしれません。

ほとんどのヨーロッパ語で七面鳥はトルコを意味する言葉ですが、スペイン語だけが「パーヴォ」と呼んでいます。

スペインは七面鳥をヨーロッパにもたらした当事者ですから、トルコ経由ではないことはもちろん知っていたのでしょう。

パーヴォとはスペイン語でクジャクのことを意味します。
同じキジ科の鳥ですから、たしかに似ている面もあります。

スペイン人が北アメリカ大陸で初めて七面鳥を見たときに、クジャクだと思い込んだのかもしれません。

さて、先住民は七面鳥のことを何と呼んでいたのでしょうか。
とても興味がありますが、残念ながら伝えられていません。


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