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教師に求められる資質・能力の再定義がはじまる

近頃、教師の養成・採用・研修のあり方について議論が進められています。その中で注目されているのが教員免許更新制度です。この制度は現在、教員本人の負担だけでなく管理職や自治体の負担にもつながっているとされながらも、10年に1度の免許更新時の研修では当初教員免許更新制度で実現しようとした効果としては限定的であるという結論にいたっています。このような状況を受け、教員免許更新制を検討する小委員会が発足されており、現在は中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の中で議論が進められています。
関連記事:どうなる?教員免許更新制度! 〜検討委員会発足〜

この教員免許更新制度とともに教師の養成・採用・研修のあり方の一つのトピックとして教師の資質・能力を再定義しようという動きがはじまっています。今回は、「中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・教員免許更新制小委員会(第4回)合同会議」という会議に提出されている以下の資料を元に「なぜ今、再定義されようとしているのか」「どのように定義されていくのか」についてまとめたいと思います。

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1.教師の資質・能力を再定義する意義と方法

まず、教師の資質・能力を再定義していくにあたっては、2つの方向性で整理していこうとされています。

① さまざまな資料に並列的に記述されているものを構造的に整理する
② 資質・能力の記述については概念をまとめるだけでなく、「~しようとする」「行動できる」「説明できる」というように具体的に意欲や行動に落とし込んだ記述にする

「教師の資質・能力を再定義」という単語だけだと刺激的なのですが、その意義としては「資料がまとまっていなかったので構造的に整理しましょう」というもののようです。これは決して悪い動きではないと筆者は考えています。
さらに、資質・能力に関する記述についても「概念的な文言ではわかりにくいので、具体的な文言に落とし込みましょう」ということのようです。これはまさにおっしゃるとおりかなと感じます。

では「どうやって構造化するのか」ということになりますが、構造の大きな枠組みとして「教員育成指標の内容を定める際の7つの観点」というものを活用してはどうかと提案されています。以下、原文ママです。

(1) 教職を担うに当たり必要となる素養に関する事項(倫理観、使命感、責任感、教育的愛情、総合的な人間性、コミュニケーション力、想像力、自ら学び続ける意欲及び研究能力を含む。)
(2) 教育課程の編成、教育又は保育の方法及び技術に関する事項(各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントの実施、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善、情報機器及び教材の活用に関する事項を含む。)
(3) 学級経営、ガイダンス及びカウンセリングに関する事項
(4) 幼児、児童及び生徒に対する理解、生徒指導、教育相談、進路指導及びキャリア教育等に関する事項(いじめ等児童生徒の問題行動への対応、不登校児童生徒への支援、情報モラルについての理解に関する事項を含む。)
(5) 特別な配慮を必要とする幼児、児童及び生徒への指導に関する事項(障害のある幼児、児童及び生徒等への指導に関する事項を含む。)
(6) 学校運営に関する事項(学校安全への対応、家庭や地域社会、関係機関との連携及び協働、学校間の連携に関する事項を含む。)
(7) 他の教職員との連携及び協働の在り方に関する事項(若手教員の育成に係る連携及び協働に関する事項を含む。)

2.7つの観点に見出しをつけて、大きく5つにまとめる

ここからは、具体的な構造化のプロセスについて紹介していきます。
上記した7つの観点の原文をそのまま使用すると文言が細かすぎるため、より構造化しやすくするために7つの観点に下図のような見出し(白い文字・青い網掛け)がつけられました。

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実は、今回の再定義において7つの観点だけが構造化されようとしているわけではありません。この観点に加えて、令和3年1月26日に中央教育審議会から公表された答申(「令和の日本型学校教育」の構築を目指して 」)の要素を追加することになっています。
7つの観点と答申の要素を合わせて、下図右側のような大きく5つにおおくくりしたようです。

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3.観点を横断するマネジメント、コミュニケーション、連携協働な資質・能力について

5つに大括りされたこの観点の基盤として横断的な要素として設けられた資質能力があります。「マネジメント」「コミュニケーション(ファシリテーションの作用を含む)」「連携協働」です。
マネジメントとファシリテーションに関する資料が今回示されていましたので以下に掲載しておきます。

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マネジメントについては今さら感があるのですが、おそらく近年キーワードとしてよく出てくる「チーム学校」を意識して改めてマネジメントについて考えていきたいというメッセージなのではないかなと感じました。

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ファシリテーションは、「令和の学校」時代における子どもの個別最適な学びを助けるための教師の在り方を意識した内容なのではないかと考えたのですが、学級経営だけでなくさまざまな場面での活用を期待しているようです。


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