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なんかつまらない。退屈は悪なのか。

管理職になって以来、はっきり言って仕事が暇だ。
社会に出て以来、営業マンとして馬車馬のように働いてきた自分にとってはあり得ない状況を経験している。

僕のミッションは主に2つある。
一つ目は超大型案件の発掘+組成による収益の構築。
通常あり得ない規模の収益を狙い、全体目標の半分を一人で担っている。

二つ目は戦略立案。
うちの会社は昔から「営業マンが自分の頭で考え、自分の足で稼ぐ」ことを美徳していて「組織としての戦略」は基本的に何もない。
さすがに時代にそぐわないと会社も気づき始めたようで、その第一号戦略の立案を担っている。

どちらの仕事もPCと向き合うことが多い。
出社してからずーっとPCを眺めて、たまに部下と喋りに行く。そしてまた自席に戻りPCに向き合い直す。
だから足で稼いでいる部下の目には「暇な人」に映っている。と思う。
というのも口に出さなくても態度で感じる。
言葉では隠せているが、態度では隠せない時がある。
僕はそういう反応は敏感にキャッチしてしまう性格なのだ。

冒頭で「仕事は暇だ」と述べたものの、
完全に干されて仕事がない訳ではなく、高い目標を与えられ一定のプレッシャーを感じつつ、部下からの冷ややかな視線も感じつつ、一応やることは尽きないわけだ。

それなのに何故こんな思いに至るのか…。
①やることは多いのに「仕事が暇だ」と感じる
②部下から「暇な人だ」と見られる


ここで「暇と退屈の倫理学」を参考に言葉の定義を確認したい。

暇  : 何もすることのない、する必要のない時間
退屈 : 何かをしたいのにできないという不快な感情や気分

つまり前者は“客観的な条件”に関わるもので、後者は“主観的な状態”を示す。


自分のケースに置き換えて考えるなら、
今仕事が暇だと感じる理由は、これまで他者に依存してきたためではないか?

営業職が大好きだった自分は、提案資料を作って、お客さんと折衝して、稟議書を作って、それを何件も同時並行に走らせていた。
10数年間ずっとそんな働き方をしてきた。
最初は苦痛だったが、お客さんが喜んでくれる姿を見るとそれがやりがいとなって、さらに仕事にのめり込んでいった。
会社に住み込んでも良いと思ったほどに自分の仕事が大好きだった。
だから暇なんか感じることもなかった。

だが今思えば、
「自ら仕事にのめり込んでいる」ように見えた以前の自分も
結局「与えられた目標」をこなしていただけではないか?と思い至る。
ただ与えられた目標を必死にこなすことで忙しく、暇を感じることはなかったのだ。

とするなら、自分が感じていたのは「退屈」ではないのか?

そう考えた理由は、過去に強く感じていた「勝負」の感情があった。
「自分の得意なこと」では負けたくない性格だから、自然と「営業成績では誰にも負けたくない」気持ちがあり営業活動に邁進してきた。
自分のプライドとして「お願い営業」を仕掛けることはなかったし、それなりにしっかりと顧客メリットも追求できたと自負はしている。
だが頑張れる根底にあったものは、他の営業マンに勝ちたいという勝負の心理だったのではないか。
ある意味、苦しみに興奮を感じ、退屈を凌いでいたのかもしれない。

与えられた目標と、他人との勝負に明け暮れる毎日。
つまり自分は「他者に依存」しながら退屈凌ぎをしていたのだ。

管理職となった今、分かりやすい敵が少なくなったことが退屈を加速させたのかもしれない。

だから、暇ではないのに退屈している。

これはハイデガーが3つの形式に分けた退屈の第二形式と同じだ。
ハイデガーの分類する退屈の第二形式は、パーティーでソファに座ってだらっとしたり、お酒を飲んだりしているときに陥るような退屈。
つまり"気晴らしなのに、なぜか退屈しているような感覚"


では退屈は悪なのだろうか。
答えは、おそらく退屈は悪ではない。
悪は、自分自身と向き合うことを避けること。
退屈凌ぎのために手当たり次第に手をつけて、まるでワーカホリックのように仕事の奴隷と化すことだ。

会社勤めをしていると、何もしていない時間が悪のように感じる瞬間がある。常に働いていなければ輪を乱しているような錯覚に陥る。
だから常に仕事をしていないと不安な気持ちに駆られる。

でもそれは間違いだ。
僕らがまずやるべきは退屈な時間を使って「自分と向き合うこと」だ。

退屈な時間は、心から自分が目指したかった姿を思考することができる最高の時間を与えらてくれたのではないか?
仕事を通じて本当に成し遂げたかったことをしっかりと見つめ直し、自分が働く意味を見出す。


今、退屈を感じているあなた。
その退屈時間をどのように過ごしますか?

退屈時間は停滞ではない。
退屈との向き合い方で人生の濃度は大きく変わる。




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