見出し画像

論点思考こそ最大の武器

いま、取り組むべき課題は何か?

「◯◯さん、あなたが取り組んでいる課題は何ですか?」
僕は会社でメンバーと1on1をするときに、よくこの質問をする。大抵の人は忙しく、複数の課題を教えてくれる。そこで次にする質問が、「そのなかであなたが今、一番取り組むべき課題は何ですか?」である。

この質問は、自分にもよく投げかけている。事業における意思決定の時だけでなく、忙殺される日々のなかで都度、自分に問い、検証しながらタスクの優先度を決めている。僕は、仕事において「いま、何の課題(=論点)に取り組むべきか?」を考えることを最も大事にしている。

事業を運営するようになってからは特に、間違った課題設定は、頑張っている仲間を不幸にすると考え、常に「僕たちが取り組むべき課題(=論点)」は何かを考え行動するようにしている。

また、時間が経過すると論点は変わる。だから、論点を決めて打ち手に取り組み検証を続けるが、振り返りの中でも「論点が間違っていないか?」をチェックする癖をつけている。

僕は、課題設定(=論点の見つけ方)について、過去にリクルートでマネジメント研修のコンテンツとして体系的に学んだが、研修教材の元になったのは、有名な「論点思考」という本であり、本エントリーはこちらを引用している。(研修向けに分かりやすく説明するために、イメージ図や説明内容は僕の解釈が入っているので悪しからず。)

論点とは何か?

論点とは
・質の高い課題
・自分たちが取り組むべき課題の中の、答えるべき問い=解決すべき課題

イメージは以下のような感じ。

起きている事象を「現象」といい、現象が発生した原因を「問題」と呼ぶ。数ある問題の中から、自分たちが取り組むべき問題を「課題」と呼び、課題の中でも今、答えるべき問いを「論点」という。論点こそが今、解決すべき課題と言える。

よくある間違い

起こった結果=「現象」を「問題」または「課題」と言っているケースがよくある間違い。例えば「会社に泥棒が入った」というのは単なる「現象」であり、これだけでは「問題」とは言えない。会社に泥棒が入った原因が「防犯設備に不備がある」のであればそれが「問題」である。
仕事においても、課題を聞くと「売上が上がらないことが課題」という人がいるが、「売上が上がらない」というのは単なる「現象」であり、それ自体は問題や課題ではない(これについては後述する。)

ファクトを3つの技で徹底的に深掘る

現象(=ファクト)に対して、それがなぜ起こったのか?を繰り返し掘り下げていくことで問題・課題に昇華させていくイメージ。

ロジカルシンキングでも「why?(なぜ?)」を繰り返して問題・課題を掘り下げる方法はあるが、ロジカルシンキングでは「So what(だから何?=何が問題?)」という抽象化する技術も課題の本質を見抜く上では重要と考えている。

先ほどの「会社に泥棒が入った」という現象に対して、「So what?(何が問題?)」を考えて「損害が発生した」や「会社の評判が落ちた」のであれば、それらは「問題」と言える。

また、「会社に泥棒が入った」という現象に関連する事象として、「幹部が報告を受けたのが翌日」であれば、その要因として「報告体制に不備があったのか?」というように掘り下げる必要がある。

論点は、
起こった結果=現象に対して、
・要因は何か?(why)
・何が問題なのか?(So what)
・関連する現象はあるか?
を掘り下げていくことで「問題」や「課題」に昇華させることができる

上記「会社に泥棒が入った」という現象に対する掘り下げ方をイメージするとこんな感じ。

上記の右側にある「防犯設備に不備がある」「損害が発生した」「会社の評判が落ちた」「報告体制に不備がある」のどれを論点にするか、によって打ち手は変わってくるため、論点を見極めることが重要である。

「売上が上がらない」は課題ではない

前述した通り、「売上が上がらない」というのは単なる「現象」であり、それ自体は問題や課題ではない。例えば、「売上が上がらない」と何が問題なのか?(=So what?)について考えてみる。

「売上が上がらないと、利益が上がらないから問題である」

一見、正しそうな意見に聞こえるが、これは間違っている。なぜかというと、売上が上がらなくても、利益率を高くする(原価率を下げる、かかっているコストを削減する)ことで利益は増やせるからである。
つまり、「売上が上がらない」ということが課題だと言っていても、利益が増えていれば、「売上が上がらない」こと自体は課題ではない。なので、次のアクションは「売上は上がっていないが利益はどうか?」を見にいくことである。

なぜ論点を見極める必要があるのか?

なぜ、論点を見極める必要があるのか?というと、「イシューからはじめよ」という超有名なビジネス本の引用だが、「『イシュー度』の低い仕事はどんなにそれに対する『解の質』が高かろうと受益者から見た時の価値はゼロに等しい」からである。

つまり、イシュー度が高い = 良い課題設定(論点)こそが、バリューの高い仕事になるということ。逆に、課題設定が悪いとその課題に対していくら打ち手を実行したとしてもバリューの低い仕事になってしまうので、「課題設定の筋が良いか」ということを常に意識しておくことが大事。

各課題を掘り下げる

改めて、上記で挙がった4つの課題「防犯設備に不備がある」「損害が発生した」「会社の評判が落ちた」「報告体制に不備がある」について、今度は課題ごとに掘り下げていくフェーズに入る。(今回は説明用に端折ります)

課題の掘り下げができたら「優先順位」をつける。

優先順位は
・解決までの実現難易度(スピード)
・成果(効果の大きさ)
で判断する。
 

ここで、実現不可能なものや全く成果がないものは論点に格上げしない。 それ以外を「論点」に格上げする。

イシューツリー(虫食い)を作る

次に、複数の論点をツリー構造で整理していくのだが、ここで気をつけたいのは完璧なイシューツリーを作ろうとすること。

完璧なイシューツリーは作成するのに時間がかかってしまい、実践には向かない。虫食いでよいので、現状挙がっている論点の関係性を上下左右に繋げてみると、本質的な論点が見えてくる。

論点を整理していく上で重要なことをまとめると以下の通り。

・論点の関係性を上下左右の虫食いで整理する
・まずは全体感を理解する
・虫食い(空欄)は実行しながら埋めていく

虫食いツリーをストーリーにする

実際に「会社に泥棒が入った」という現象について、虫食いツリーを作ってみる。今度はその虫食いツリーを文章にしてみて、課題が解決できるストーリーになっているかを確かめてみる。(※下記の虫食いツリーやストーリーは、書籍からの引用ではなくこちらで勝手に作ってみたもの)

ストーリーを文章にしてみて、

・課題が解決できるストーリーになっているか
・違和感(説明しづらかった場所)がないか
・論点の抜け漏れがないか

をチェックする。

論点を決定する

ストーリーを声に出して読みあげ、問題なければ、大論点または中論点から1つ選び、小論点について優先順位を決めて、論点に対して目標(KGI/KPI)を設定する。

論点思考を実践して思うこと

実際に、仕事のなかでこの流れを実践して論点整理をしており、人に説明するときも紙に書いた虫食いのイシューツリーをそのまま使うこともあるが、論理構造をビジュアルで伝えることもできるので相手にも分かってもらいやすく便利である。何より、この論点整理の仕方を癖づけることが、本質的な課題に取り組むことができる近道であると考えている。

論点思考こそ、ビジネスにおいて最大の武器になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?