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口語体と文語体

現在私たちが読み書きしている日本語の文体は、口語体と呼ばれるものです。口語体とは、専ら口頭のみの言葉遣いを指す話し言葉そのものではなく、話し言葉の要素を取り入れた書き言葉のことをいいます。

口語体以前の日本語の書き言葉は文語体と呼ばれます。古典文法と歴史的仮名遣に則って記述されるもので、話し言葉とは語彙・文法体系を異にします。平安時代中期に確立したもので、長らく日本語の書き言葉としての地位を占めていました。文語体には、漢文を訓読したもの、漢文訓読に和文を交ぜた和漢混淆文など、いくつかの類型があります。和文体、候文(そうろうぶん)など当時の話し言葉に近づけた文体も存在しますが、基本的に明治初期までの日本語の使用環境は、書き言葉と話し言葉とが著しく乖離したダイグロシアの状況にありました。

戦前に制定された法律の条文は、典型的な文語体です。

為替手形ハ振出人ノ自己指図ニテ之ヲ振出スコトヲ得

(手形法第3条)

明治時代以降の言文一致運動、そして戦後の国語改革を通じて、書き言葉を話し言葉に近づけようとする試みが重ねられ、日常における書き言葉は次第に文語体から口語体に取って代わられるようになりました。

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