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似て非なるもの

皆さんはどちらを目指していますか?

「似て非なるもの」をデザインする。
「これまでにない新しいもの」をデザインする。

以前の「建築家の生存戦略」というテーマの中でも少し触れたが、デザインのコモディティ化によって、社会全体のデザイン力が底上げされた。

合わせて、デザイナーだけでなくクライアント側も含め、デザインの取り巻く環境が変化している。今回は建築家・デザイナーとして、デザインに対するアプローチについて、最近感じていることを書いてみたいと思う。

クリエイターたるもの

クリエイターたるもの、これまでに見たことのない、新しいものを目指すべきだ。
多くの人がそう思っているのではないだろうか?それでこそクリエイターだ。と言われても否定できないだろう。

実際僕もそう思っている。新しいデザインを常に模索して、自身のオリジナリティーはどこにあるかを日々意識している。

しかし、実際の社会はそんなに甘くない。クリエイターの視点で見れば、新しく価値があること、面白いと思うこと、問題を解決する正解だと思うデザインが、そのままの形でクライアントや社会に受け入れられることは、まずない。

ここで世の中にあるデザインをタイプを3つに分けてみた。

①いい感じのデザインを、ただ真似たもの。
②馴染みがあるが少し違う、似て非なるもの。
③これまでに見たことのない、全く新しいもの。


①は言うまでもなく、価値はゼロだ。AIに任せておこう。②は微妙なところだ。結局前述したように、クリエイター足るもの「③」を目指すべきなのだろうか。そう教えられた気もする。

でも実際の社会では「③」を求められるシーンはすごく限られている。それこそ、トップオブトップのクリエイターたちが凌ぎを削り、少ない席を取り合っている世界だ。

そして、その他のデザインが必要とされているほとんどの場面では、「③」は拒絶される。

「新しい」が正義とは限らない。

先日とあるプロジェクトで、コワーキングスペースのインテリアデザインを提案をした。

与件はこうだ。ターゲットは20-30代。フリーランスやスタートアップの方を支援する空間として、集中して作業するスペース、リラックスできる場所、コミュケーションスペースをそれぞれどう配置するか。かつ、現代的で創造的な空間デザインが求められた。

我々は、与件はクリアしながら、ターゲットに合わせた空間性として、フレッシュでかつ暖かみのある[ミニマルさと居心地の良さ]を掛け合わせた、先鋭的で「新しい」デザインを、自信を持って提案した。

まさに「③」を実現しようとしたのだ。

しかし、結果は共感されなかった。デザインの新しさ、面白さは理解してくれたが、これは採用できないと。理由は、デザインは新しく魅力的だが、利用者にとっては居心地がよくない。カッコ良すぎて、先鋭的すぎて、人が緊張して、人が集まらない。人は馴染みのない空間は無意識に拒絶してしまうのだと。

僕の感覚では植栽を多く配置したり、自然素材などを多用することで、十分に居心地の良い空間、馴染みのある空間になると思っていたが、不十分だった。建築家・デザイナー的目線でばかりデザインを捉えてしまい、ユーザーの目線に立てていなかった。

その後、建築家・デザイナーにとっての「新しさ」は少し横において、再提案させてもらった。ユーザーの感覚を意識し、空間のわかりやすさの分量を増やし、デザインをチューニングしていった。

「②」を実行したのだ。

結果、大好評の上に採用された。

「共感できる、新しいもの。」


ここで学んだことはこうだ。

「新しいもの」の中にも二つある。

「見たことのない新しいもの」と、「どことなく見たことがあるデザインにオリジナリティが加わったもの」。

ユーザーにとっては、前者は想像ができない。後者はなんとなく想像ができる。無自覚にいると我々クリエイターは前者を目指してしまう。もちろんそれが悪いことではない。ただここでは、あえて後者の価値に着目したい。

クライアントといっても、デザインについては素人の方も多い。ましてやその先にいるユーザーにとっても「見たことのない新しいデザイン」は、なかなかついていけない。理解ができない。故に共感されない。結果、人が集まらない。使われない。だから実現されない。

一部の審美眼が高く、先進的な思想をもったクライアントは別だが、その他の9割以上のクライアント、ユーザーにとって必要なのは

「共感できる、新しいもの。」

ではないだろうか。

この相反する二つの要素をいかにバランスよく実現できるか。ここにも「③のこれまでに見たことのない、全く新しいもの」を目指すのと同じくらいの難しさと楽しさ、そして価値があるのではないかと思うようになった。


社会全体に、よりデザインの価値や可能性を広げていくには、専門性を高めた、玄人向けの思慮深いデザインではないと思う。顧客目線に立ち、デザインの魅力や楽しさを少しずつ伝えていくことから始まると信じている。

ということで、今後僕は「②」を意識して、デザインしていきたいと思う。多くの人に建築・デザインの魅力を届けるために。

今回は、だいぶ抽象的なデザインの話になってしまったが、デザインに携わる方ならば、なんとなく共感してもらえると思う。質問やみなさまのご意見などもあったら、お気軽にコメント頂けると嬉しいです。

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