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大工からShopBotが継承する「継手」技術

建築物をつくる際に部材を繋ぐ重要な役割を果たす「仕口」「継手」は、これまで、大工さんの技術によりノミやノコギリを使って製作されてきました。

果たしてその技術は3軸木工加工機「ShopBot」で再現できるのでしょうか?今回は大工さんに「継手」を教わると同時に、「ShopBot」を用いて実際に検証していきます。

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(△参考 日本家屋構造所載の継手・仕口解説図)

伝統技術と最先端テクノロジーの融合

「大工」とは、主として木造建造物の建築・修理を行う職人のことを指しますが、近年その数もどんどん減少しています。国土交通省によると、1980年代には94万人いた大工就業者は、2010年には40万人に半減しています。

工具も、ノコギリやノミから、丸ノコやインパクトドライバーなどへと変化し、電動器具を所有する家庭もあるほど浸透してきました。このように、様々ある電動器具の最先端が、3軸木工加工機「ShopBot」です。

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そんな最先端の加工機の普及を推進するVUILDは、長年受け継がれてきた大工の知恵を受け継ぎながら現代のテクノロジーと融合していくことを意識しながらものづくりを進めてきました。

2019年秋に竣工した「まれびとの家」も、所在地である富山県五箇山の集落に根付く伝統の建築技法「合掌造り」を取り入れながらShopBotでつくりました。

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今回ご紹介するこの企画は、昨年末に「忘年会までに社内全体でひとつ研究を進めよう」という代表・秋吉の一声をきっかけにはじまりました。材料・歴史・技術をそれぞれ研究する会を各チームが開催し、その中の一つに、仕口と継手を研究するチームが立ち上がりました。

「追掛け大栓継」に挑戦

継手の中でも最も難しいひとつと言われる「追掛け大栓継」を、VUILDが長年お世話になっている林棟梁に教わりながら、最終的にはShopBotで加工することを目標にしました。

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△「追掛け大栓継ぎ」は、熟練の大工さんでも1日8本を作るのが限界なんだとか。

「いつもShopBotでつくってしまうから、まずは手でやってみよう」という林棟梁の提案で、普段は3DのCADソフトを駆使して製作を進めるVUILDメンバーが、ノミやノコギリを使って継手づくりに挑戦しました。

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まずは、ノコギリやノミで加工していくための補助線を各面に引いていく「手刻み」という工程。ShopBotならパソコン上で作成したデータに基づいて機械が加工してくれるので、木材に補助線を書くという行為を普段は行いません。

線を引いていく際に使用する単位も、普段は「ミリ」を使用しているメンバーには馴染みのない「尺」や「寸」を用いて行います。この工程も、105角材4面それぞれに墨付けをしていく中で、複雑な手順があり、順番通りにしてかなかればうまく行きません。

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△林棟梁による大工道具の紹介。ノミも、普段の業務では使わないような用途で使用するので体勢も全く異なり、一つ一つが新しい学びで新鮮でした。

▽そうして完成した継手がこちら!

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ShopBotで「追掛け大栓継」に挑戦

次は、ShopBotでこの技術が再現できるのか検証です。 Rhinocerosで3Dデータを作成し、Vcarveで切削データを作成していきます。

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基本的な構造は大工さんに教わった通りに行なっていますが、データを作成する中で、ShopBotならではの曲線が生まれました。

手で製作する際にはノミを用いて直角に加工する一方で、ShopBotでは円形に回転する刃を使用するため、角にR(丸み)がつきます。直角に加工することができない機械ですが、CNCだからこそ断面を斜めにすることができ、さらに外れにくい継手をつくることができました。データを作成後は、20~30分で切削が完了しました!

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△角材を2度回転させて切削

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△加工する際に、木材がずれないように外枠を用意

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△ShopBotの継手が完成!

無事に、鏡開きのごとく忘年会で二つの部材を「よいしょ!」することができました(笑)。

伝統×最先端を目指して

最先端のデジタルテクノロジーを用いることで、専門知識がなくてもものづくりが出来る環境をより多くの人へ届けることを目指しているVUILDですが、これまで発展してきた伝統的な技法もテクノロジーを用いることで受け継ぐことが出来ると考えています。

今回は、まれびとの家の建設時にもお世話になった林棟梁にご指導いただきながら、「追掛け大栓継」を製作しました。二つの部材を繋ぐ役割を果たす「継手」にとって一番重要な「外れにくさ」をShopBotだからこそ可能な形で受け継井田作品が完成しました。データを一度作ってしまえば、全国・全世界に共有することができ、いくつでも機械で再現できるという強みもあります。

今後も、様々な職人さんと協働しながら、根付いてきた伝統技術と現代のデジタルテクノロジーを融合させることで、新しい建築のかたちを体現してきます。
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今回の企画を行なったメンバーの紹介

加藤 花子 HANAKO KATO
デザインファブリケーター
2018年3月SFC卒業。同年5月よりVUIDに業務委託としてジョイン。デザインファブリケーターとして設計、製作業務に携わる。初担当作品は浜松のバス停。昨年 1 年間はVUILDと並行してファッション系アートスクールにも通い、2足のわらじで活動。現在は、主にファブリケーション分野で5軸加工機などを用いながらVUILDの製作をしつつ、個人でも設計製作業務や創作活動を行う。

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野田 慎治 Shinji Noda
ジュニアアーキテクト

1994年岐阜県生まれ。滋賀県立大学環境建築デザイン学科を卒業し、同大学院を修了。在学中は2回生から木匠塾に参加し、木材の加工技術を身につける。2019年3月よりVUILD株式会社に入社し、ジュニアアーキテクトとして各プロジェクトの設計・製作業務に携わる。

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黒部 駿人 HAYATO KUROBE
デザイナー/ フォトグラファー
1993年埼玉県生まれ。2015年芝浦工業大学工学部建築学科を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻へ進学。1年間の留学期間中にDGT ARCHITECTS(現ATTA フランス・パリ)でのインターンとTakuji SHIMMURA photography (フランス・パリ)でのアシスタントを行う。2018年よりVUILD株式会社に入社し、まれびとの家や屋台、スツールなどの設計と各プロジェクトの竣工写真の撮影を行う。

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