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「昇進・出世する人、しない人」 サラリーマンあれこれ#4

近頃の若い人は、出世を望まないと聞く。
偉くなって大変な思いをしたくないと言う。
仕事も遊びもほどほどが良いらしい。

本心だろうか?単なる照れじゃないの?
少なくとも僕の周りには、なんだかんだ言いながら、出世を望む人が多かった。

なぜなら、出世は給与アップに直結するし、仕事の幅が加速度的に広がり、見える世界が違うからだろう。
違う視点では、世間体と言うものだってある。

しかし、高度成長期からバブル時代ならいざしらず、昨今の昇進・出世は簡単じゃない。おそらく、大手企業において部長クラスにまで上がれる人は、1割にも満たないだろう。

この狭き門に向かって長いサラリーマン生活を歩むわけだが、僕は、昇進・出世を望む多くの人たちが、あるべき姿を履き違えているのを感じてきた。
そして、その履き違えの末に、自ら消耗していくのである。

「こんなに頑張っているのに」「これだけの実績を収めているのに」と思いながら昇進できないなら、あるべき姿の履き違えが原因かもしれない。

今回は、いわゆる大手企業に勤めるサラリーマン(特に企画・営業系)の「どんなタイプの人」が、「どんな道を辿って」昇進・出世を手に入れていったかを、僕の38年間の企業勤務経験から探ってみたい。


ちなみに出世と言っても、どの程度のポジションを指すかは、千差万別だろう。

今回は、上場企業ならびに大手企業の執行役員から部長クラス程度をターゲットに考えたい。部門にも依るだろうが、部下の数としては50人から200人程度とイメージしている。

これ以上のポジションへの出世となると、僕の経験からは縁遠いものになり、具体的に語る術がない。

まず初めに伝えたいのは、昇進・出世する人は、決して特別な人、凄い人ではないということだ。

世の中には、特別な人、凄い人が一定量存在する。野球界で言うなら大谷翔平選手のような人。ここでは、そのような凄い人は対象にしない。

そもそも凄い人は、大谷選手が日本ハムからメジャーリーグに転籍したように、一般企業のサラリーマンには留まっていないだろう。
あるいは、本物の凄さを持つ人の価値は、我々一般人には簡単に理解できるものではなく、気が付いた時には、いつの間にか企業トップに上り詰めているのかもしれない。

しかし、大谷選手はともかくとして、多くのサラリーマンは、凄さの獲得を目指して奮闘する。

昇進・出世の為には、ずば抜けた実績が必要と考える。営業であれば売上ナンバーワンのトップセールスを目指して奮闘する。事業企画会議の発表であれば、参列者からの拍手喝采を得ようと孤軍奮闘する。

ここに、昇進・出世を望む多くの人たちの、一つ目の「履き違え」がある。

僕は、決して努力を否定するつもりはない。努力は人を成長させる。
あくまでも努力の方向性の問題である。

上司、組織論から見た場合の昇進・出世とは、組織を任せること。すなわち組織に紐づく人的資産をはじめとする様々な資産を活用して、最大限の成果をあげることだ。

決して、あなた個人の成果を期待しているわけではない。

企業組織においては、自分一人では仕事は進まないし、一人で成し遂げることができる成果はたかが知れている。
たとえあなたがトップセールスであっても、組織全体の成果には叶わないからだ。

人は誰しも平等に、1日24時間の時間しか与えられない。この限られた時間の中で、より多くの成果を出すには、他人の時間と知恵を拝借し、あなた自身は、あなたにしかできないことに如何にフォーカスできるかにかかっている。

つまり、上司部下、先輩後輩、関連部署と言った周りとの連携をどのように図り、最適化し、成果を上げているかだ。

言い換えれば、周りをどれだけ巻き込んだ活動内容になっているかが重要なのだ。では、「周りを巻き込む」とはどういうことか。

協調性、チームワークと言ったフレーズが思い浮かぶかもしれない。
大切なことだと思う。しかし、ここで言う「周りを巻き込む」とは、良い意味での ”人のフンドシで相撲” をとることだ。

すなわち、他人の時間と知恵を借りて、一人では成し遂げることが難しい、大きな成果を出すことを意味している。

こんな話をすると、「私には仕事を手伝ってくれる部下はいません」などと言う人がいる。あまりにも視野が狭い。

上司、同僚、関連部署の人たちは、あなたが想像する以上に、あなたを見ているし、手伝っているものだ。
そして、あなたを手伝うことによって、何らかの喜びを見い出せるなら、手伝い方に変化が現れる。

つまり、周りの人たちの「業務としての手伝い」を、「共感としての手伝い」に引き上げることが、「周りを巻き込む」、すなわち「人のフンドシで相撲」をとる、ということに他ならない。

例えば、いつも注文書や契約書を処理してくれる営業事務に感謝の言葉を伝えているだろうか? 交通費や勤怠管理で世話になっている総務や経理の人の業務上の悩みを聞いているだろうか?

営業事務や総務、経理と言った部署の仕事は、ある意味うまくいって当たり前。評価がされにくい仕事だ。そんな部署の人たちの話を聞き、僅かでも彼ら彼女らの困りごとに協力することで、関係は歴然と好転する。

例えば、案件発生時には、自分一人で案件を処理しようと孤軍奮闘せずに、関係者を集めたプロジェクトを組んで、ワイガヤのミーティングから参加者に仕事を割り振ることをしているだろうか?

一見、面倒で遠回りに思えるが、他人の時間と知恵を借りて進める仕事は、想像以上に大きな成果を生むし、組織を活性化させる。

加えて、昇進人事は、直属の上司一人が決めるのではない。

日常業務の出来不出来や実績は、良い時もあれば悪い時もある。上下する実績に応じて評価を上下させていては、いつまでたっても将来のリーダーは定まらない。ましてや、どんぐりの背比べが如くの状況では、周りから聞こえてくる評判が重要な判断材料となる。

自らの腕力で強引に上げた成果は、組織においては、所詮一時の儚い評価でしかない。

上司、組織論から見た場合の昇進・出世とは、組織を任せるに足る、「周りを巻き込む力」が試されているといえるだろう。

僕のかつての部下や、周りでそこそこの出世を手に入れてる人は、気配り上手、巻き込み上手が多かった。

見方を変えれば、尖った凄い人ではなく、所謂いい人が出世していた。

もし、あなたが、「こんなに頑張っているのに」「これだけの実績を収めているのに」と言う思いを持っているなら、一度肩の荷をおろし、凄い人を目指すのをやめてみてはどうだろう。

周りへの気配りと周りを巻き込む仕事で、評価は180度変わるかもしれない。

つづく












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