創立費の会計仕訳と税務上の処理~開業費との違いも把握~

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法人を設立する際には、登記などの費用が必要となります。

設立の為に必要となった費用(創立費)は、当然法人費用(損金)として認められるのですが、その処理方法は知っていますか?

ここでは、創立費の範囲や処理方法、創立費と似た勘定科目である「開業費」との違いなどについて解説していきます。開業費の詳細については下記記事をご参照下さい。

目次

創立費とは?

創立費は、法人税法の定める繰延資産(支出の効果が1年以上にわたって継続するものを繰延資産と言います)の1つで、法人税法施行令第14条第1項1号で以下の様に定義されています。

創立費 発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。

創立費として認められるもの具体例は、以下の通りです。

  • 発起人に対する報酬
  • 設立登記の必要な登録免許税
  • 創立事務所の家賃
  • 株式申込証や目論見書等の印刷費用
  • 株主を募集する為に必要な広告費用
  • 設立事務時の使用人給料
  • 金融機関の取扱手数料
  • 創立総会の費用
  • 定款やその他の諸規則を作成する為の費用

なお、税務上は定款で会社設立時に通常発生する費用を会社の負担にする旨の記載をしていない場合でも、当然に会社の負担すべきものとして扱われます(参照元:法人税法基本通達8-1-1

また、会社の設立期間中に支払った費用のうち、創立費や開業費として処理出来ないものは1期目の経費として処理する事になります。但し、設立期間が通常よりも長期に渡る場合には、費用として認められれない事も有るので注意が必要です(参照元:法人税法基本通達2-6-2

元々個人事業をしていて個人事業を引き継いで設立された法人の場合は、当該事業から発生した損益は法人の費用とはなりません。

創立費と開業費の違い

法人を設立する際の会計処理項目に「創立費」と「開業費」という似たものが有ります。これらの違いは何なのでしょうか?

この点、両者の違いは「法人を設立する際に必要となった費用」か「法人設立後開業するまでに必要となった費用」かに有ります。つまり、前者が「創立費」で後者が「開業費」という事ですね。

法人の事業年度は設立登記が完了した日に始まりますが(参照元:国税庁「法人税法基本通達1-2-1」)、設立登記が完了した日に事業が開始するとは限りません。

そこで、設立登記が完了した日以降実際に開業するまでにかかった費用の内、特別なものについて開業費として計上する事が認められている、という訳です。

参考にどうぞ
開業費の範囲と会計上及び税務上の償却方法・期間など。 会社設立後開業するまでには、チラシやホームページを作ったり、打ち合わせをしたりと結構お金がかかります。開業するまでにかかった費用は、税務上通常の経費とは異なった扱いを受けるので、処理方法などを知っておかないと損をする可能性が有りますよ。ここでは開業費の範囲や会計処理等について解説していきます。

創立費は支払った年度の費用にしても、翌事業年度以降の費用にしてもOK!

創立時にかかった費用は、原則として支出時の費用(営業外費用)として処理する事になります。

参考:支出時の損金ですが、帳簿上の伝票日付は会社設立日です。

但し、創立費として資産計上した場合、後の事業年度で償却によって費用化する事も可能です。

繰延資産の償却方法には、以下の2つの方法が有ります。

  • ①均等償却
  • ②任意償却

均等償却では、税法で定められた期間にわたって月割で損金算入する事になります(法人税法第32条1項)。

一方の任意償却は、自由に償却費を計上する方法です。予め何年か決めて一定の金額を損金に算入しても良いですし、「今期は赤字だから償却しないでおこう」「今期は黒字が大きいので全額償却しよう」といった償却も出来ます。

そして、創立費には後者の任意償却が適用されます(法人税法施行令第64条第1項)。従って、創立費は自分の好きな様に損金算入する事が可能です。

創立費を償却する時の仕訳・使用する勘定科目は?

創立費となるべきものに対する支出をした場合、及び、償却時には以下の仕訳をきる事になります。(前提:創立時に必要な費用として20万円を支出。決算時に5万円を償却。)

創立費支出時の仕訳

借方金額貸方金額
創立費200,000円現預金200,000円

創立費償却時の仕訳

借方金額貸方金額
創立費償却50,000円創立費50,000円

なお、償却費以外の勘定科目で損金処理をした場合でも、その金額は償却費として損金処理した金額とみなされます法人税法基本通達8-3-2

創立費に係る消費税の扱い・区分

創立費を計上した場合、消費税についてはどの様に扱えばいいのでしょうか?

この点、創立費に係る消費税に関しては、実際に支出をした期の課税仕入として扱う事になっています(参照元:国税庁「消費税法基本通達11−3−4」)。償却をした事業年度という訳ではないので注意が必要ですね。

なお、全ての支出が課税仕入となる訳では有りません。消費税の区分(課税仕入・非課税仕入・対象外仕入)は支出した内容によって異なりますので、その点も気をつけましょう。

また、法人を設立した事業年度が免税事業者の場合は、消費税(仕入税額控除)について気にする必要は有りません。

創立費に関する別表の書き方

創立費として資産計上した場合、法人税の申告書(別表16−6)に以下の5項目を記載する必要が有ります(法人税法施行令第67条第1項)

  • 繰延資産の種類
  • 支出した金額
  • 前期までに償却した金額
  • 当期償却額
  • 期末現在の帳簿価額

上で紹介した仕訳例を基に記載例を作ったので、参考にして下さい。

創立費に関する別表については、それほど作成が難しくないですね。

まとめ

法人を設立する際の費用は、その設立した事業年度に全額費用としても良いですし、創立費として資産計上し翌事業年度以降に好きなタイミングで費用にする事も出来ます。

法人設立当初は赤字になるケースも多いので、創立費をうまく使って節税出来ると良いですね。

なお、補足ですが、個人事業主の場合は会社と違って創立という概念が無いので、創立費は登場しません。

もちろん開業費は個人事業主にもあります!

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