総会を開催しない決議方法

イントロダクション

書面による決議

総会決議事項について書面を用いて決議する方法の説明
2つの決議方法・決議の流れ・注意点について

書面による決議後の広報

書面による決議後の広報の義務・必要性に関する説明
決議書の保管・閲覧請求対応や積極的な広報について

書面による決議

総会決議事項は、本来、総会を開催して決議しなければいけませんが、総会を開催せずに決議を行う方法があります。しかし、その決議の都度、組合員全員の承諾または合意が必要であるため、次のような限定された局面でしか利用できません。

  • 組合員総数が少なく、決議事項につき全員異議なきことが明白
  • 緊急に決議を要する事項が発生し、会場の準備などが困難

2つの決議方法

総会を開催せずに決議を行う方法は、「書面による決議(書面決議)」と「みなし書面決議」の2つあります。

書面による決議(書面決議)

総会を開催して決議をすることが必要な場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議が可能です。

みなし書面決議

総会決議事項について、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとみなされます。

書面による決議とみなし書面決議の文章例

書面による決議の流れ

書面による決議は、次のとおり実行されます。

  1. 理事会決議による決定
    • 理事会決議により、書面による決議(みなし書面決議)を行うことを決定します。
  2. 組合員への事前説明・事前アンケート(重要案件)
    • 決議事項について、事前説明・事前アンケートを行います。
    • 結果を書面決議書の作成に反映させます。
  3. 書面決議書の作成・配布・全部回収
    • 決議書(承諾書兼議決権行使書または合意書)を作成します。
    • 組合員全員に書面を配布し、署名・押印してもらいます。
    • 承諾書または合意書を全て回収した時点で決議が成立します。

総会を開催するわけではないので招集手続は不要ですが、少なくとも議題と議案の要領を事前説明しましょう。

書面による決議の注意点

書面決議により、「総会の決議があったもの」とみなされますが、「総会が開催されたもの」とはみなされません。したがって、理事長に課されている年1回の通常総会招集義務、通常総会における事務報告義務・会計報告義務などが履行できません。

通常総会関連義務が履行できない点から、通常総会決議事項を書面による決議で行うことは推奨できません。

なお、通常総会における事務報告義務(会計報告義務)に違反した場合、20万円以下の過料に処されます法71四

書面による決議後の広報

書面による決議後は、総会が開催された場合と同じく、決議書の保管・閲覧請求対応義務が理事長に課され、積極的な広報も推奨されます。

決議書の保管義務・閲覧請求対応義務

決議書は理事長が保管し、その保管場所を所定箇所に掲示して公開する必要があります。

理事長は、組合員または利害関係人から請求があったときは、決議書を閲覧させなければいけません。なお、理事長は、閲覧について相当の日時・場所を指定できます。

「利害関係人」とは、「法律上の」利害関係がある者です。具体的には、敷地・専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介依頼を受けた宅地建物取引主任者などのことです標規コメ49I

単に「事実上の」利益・不利益を受ける者、親族関係にあるだけの者は、利害関係人ではありません

決議書の保管・閲覧請求対応義務に違反した場合は、20万円以下の過料に処されます法71一~二

積極的な広報

総会決定事項の実施・遵守に関する無用のトラブルを避け、組合員や占有者に内容・結果を知らせる必要があります。

そのため、書面決議の結果を知らせる書面を作成し、戸別に配布するなどの対応をされることを推奨します。


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