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混合農業


簡単なまとめ

混合農業とは、作物栽培と家畜飼育を組み合わせた農業。中世の三圃式農業から発展して成立した。

  • 冬作物(小麦、ライ麦)
  • 夏作物(大麦、燕麦)
  • 根菜類(カブ、てんさい)
  • 牧草(クローバーなど)

の輪作を行う。家畜は舎飼いする。

  • ヨーロッパ
  • アメリカ合衆国のコーンベルト
  • 南米のパンパ

でみられる。

混合農業

混合農業は、主にヨーロッパ・北米で行われている商業的農業の一形態で、作物栽培と家畜の飼育を組み合わせた農業のことを指します。

作物栽培家畜飼育の混合」

これが、「混合」農業が混合農業たる所以です。従って定義上は商業的農業とは限らず、実際に自給的混合農業も存在するのですが、小規模で多くが商業的に行われているため、高校地理では混合農業は商業的農業として扱われます。

混合農業は、その性格から集約的かつ商業的で、土地生産性・労働生産性共に高い農業です。

混合農業では、

  • 牧草
  • 冬作(小麦・ライ麦などの食用穀物のことが多い)
  • 根菜類(カブ、テンサイなど)
  • 夏作(トウモロコシ・燕麦など飼料作物のことが多い)

の四種に農地を分け、毎年植える作物を交代していきます。よくある図がこれですね。

混合農業.png

なんで「混合」する?

普通に考えて、土地を四つに分けて違う作物を栽培し、家畜飼育も行うというのは明らかに非効率です。一つの土地で一つの作物をブワーッと一気に栽培した方が楽ですし、効率も圧倒的によいはずですよね。

しかし、ヨーロッパではそうはいかず、結局この形態が最も効率が良いからこそ混合農業が広まっているのです。この理由について解説していきましょう。

これを理解する上で重要な知識が、「連作障害」というものです。

同じ土地で同じ作物を何年も連続で栽培していると、次第に収量が落ちていき作物がうまく育たなくなります。これを「連作障害」といいます。

植物の種類ごとによく吸収する栄養素は決まっており、したがって同じ作物を連続して栽培すると特定の種類の養分だけが土中からなくなってしまいます。また、特定の植物種につく病原菌というのも存在するのですが、連作を行うと土中にその病原菌が増えてしまうという現象が起こります。これが、連作障害が起こる仕組みです。

本題に戻りましょう。

ヨーロッパの人々の主食はパンですから、極論を言えば小麦だけ栽培できれば後は不要です。本当ならば小麦を連作したいのです。

ところが、小麦というのは非常に連作障害に弱い穀物で、よほど肥えた土地でない限り連作は不可能。そのため、連作障害を防ぐために耕地を分け、一年小麦を作った土地は次の年に休ませるか、他の作物を栽培しなければなりません

そして、作物栽培に家畜の飼育も組み合わせる手法も、連作障害を防ぐ非常に有効な方法の一つでした。

この続きも含めて、混合農業の成り立ちについて解説していきましょう。

混合農業の成り立ち

小麦が連作障害に弱いことは紀元前のローマ時代から知られており、このためローマ時代には土地を二か所に分け、片方は休耕、片方は小麦栽培を行うという二圃式農業が行われていました。土地が実質半分しか使えないので、あまり効率は良くありません。

そこで、生産性を向上すべく中世の西ヨーロッパでは三圃式農業という形態が開発されました。土地を三種類に分け、夏作、冬作、休耕でぐるぐる回していきます。

三圃式農業の画期的だった点は、家畜の飼育が組み合わされたことでした。家畜は休耕地に放牧され、糞尿が肥料となって地力の早期回復に役立ちます。このおかげで休耕期間を短縮することができ、二圃式から三圃式に進化をとげることができたのです。

しかし、三圃式農業にも欠点がありました。それは、

  • 依然として休耕地が存在し、土地が無駄になっている点
  • 冬の間家畜の牧草が不足し、維持が不可能であるため冬になる前に家畜を大量に屠殺しなければならなかった点

です。

二点目が特に重大な欠陥で、農家の大事な財産でもある家畜をなかなか増やせない主な原因になっていました。蛇足ながら、これが冬の間人々に腐った肉を食べることを強いる直接的な原因となり、結果中世のヨーロッパで腐肉の味をごまかすために香辛料の需要が高まったというのは有名な話です。

これを解決したのが、18世紀にイギリスで開発されたノーフォーク農法と呼ばれる新しい農法でした。この農法では、三圃式に代わって四輪作とし、飼料として根菜類の栽培を追加、さらに休耕地としていた区画でクローバーなどのマメ科の牧草を栽培して休耕地の撲滅地力の回復飼料の確保を同時に実現。牧草は干し草に加工して冬の間家畜に与えることで、冬前に家畜を大量に屠殺する必要がなくなりました。この内容は世界史でも問われることがあるので確実に押さえておきましょう。これが、現在の混合農業の原点と言われています。

この混合農業は、

  • 休耕地がなく、土地を有効利用できる
  • 年間を通して多数の家畜を飼育することが可能

という利点がありました。そのため、生産性が高く家畜飼育に重点が置かれるという特徴が現れたのです。

補足~マメ科の牧草と休閑地の撲滅

では、なぜ休耕地をなくすことができたのでしょうか? 高校地理の範囲からは外れてしまいますが、少しだけお話しておきましょう。

これには、牧草として栽培されるマメ科植物が深く関わっています。

マメ科植物は、その根に根粒菌と呼ばれる菌を共生させています。この根粒菌が今回のキーマン。根粒菌は空気中の窒素を窒素化合物に変換して土中に固定し、植物にとっての三大栄養素の一つである窒素化合物を土中に増やしてくれます。つまり、マメ科植物を植えておけば、土が勝手に肥えていくのです。

そのため、マメ科植物はやせた土地でも育ちマメ科植物を育てた後の土地は作物がよく育つのです。大豆がやせ地でも育ちやすいのもこれが理由です。

混合農業の完成、そして派生

三圃式農業から混合農業への移行、そして混合農業から酪農・園芸農業などへの派生には、近代特有の市場原理がはたらいてきます。

そもそも混合農業の完成、そして根業農業から酪農・園芸農業など各分野に特化した農業が派生していった背景には、

  • 新大陸からの安い穀物の流入
  • 都市の発達による巨大消費地の誕生

が関わっています。

穀物栽培は他と比較して儲からないと判断した農家は、都市近郊では商品価値の高い野菜や花卉、果物を生産する園芸農業に特化していったり、やせ地で耕作に向かない地域では乳製品の生産に特化する酪農が成立しました。

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