「感謝申し上げます」は、目上の方に感謝の気持ちを伝える正しい敬語表現です。あまりに身近な言葉すぎて、実は意味をよく考えたことがない人も多いのではないでしょうか。また、普段の会話で使うには、少し堅苦しく聞こえることもあるかもしれません。相手との関係や場面を考慮し、適切な言葉を選んで、「ありがとう」の気持ちを上手に伝えましょう。

【目次】

「感謝申し上げます」を正しく使おう!
「感謝申し上げます」を正しく使おう!

今さら聞けない! 「感謝申し上げます」の基礎知識

■「感謝申し上げます」の正確な「意味」

では、そもそも「感謝」とはどんな意味なのでしょうか。『日本国語大辞典』には、【ありがたいと感じて礼を述べること。また、ありがたいと感ずる気持ち】と記載されています。「申し上げる」は「言う」の謙譲語で、これに聞き手への丁寧な気持ちを表す助動詞の「ます」で構成されたのが、「感謝申し上げます」です。
目上の人へ感謝の気持ちを伝える際に使用されます。

■「敬語」としての種類は?

「敬語」には、以下の3種類があります。

(1)敬う気持ちを表現する「尊敬語」(お話しくださる、ご利用なさる、様、先生、など)
(2)へりくだって敬意を表す「謙譲語」(いただく、申す、うかがう、拝見する、など)
(3)丁寧な言い方で敬意を表す「丁寧語」(です、ます、ございます、など)

名詞の「感謝」に、動詞「言う」の謙譲語である「申し上げる」がつく「感謝申し上げます」は、謙譲語です。
同じような構成となる表現に、
・お祝い申し上げます。
・お悔やみ申し上げます。
・ご報告申し上げます。
…などがありますが、「感謝」や「失礼」は、頭に「お/ご」を使わないので気を付けましょう。

■仕事ではどんな「場面」で使える?

目上の方へ、感謝の気持ちを伝える際に使用されます。

■使用時の「注意点」は?

時折耳にする「誠に感謝申し上げます」という言葉。一見、問題がないように聞こえますが、実は間違った使い方です。以下、文法的に説明しましょう。

「誠に」は、「じつに。本当に」という意味の副詞です。「誠に美しい」のように、文法上、副詞は形容詞や形容動詞を修飾します。従って、「感謝申し上げます」の修飾語として使うことはできません。一方で、「誠にありがとうございます」は正しい表現です。「ありがとうございます」は、「ありがたい」という形容詞に補助動詞の「ございます」が組み合わさって成り立った言葉だからです。

また、「感謝申し上げます。ありがとうございました」という表現からは、心から感謝している気持ちが伝わってきますが、「感謝」と「ありがたい」という、ほぼ同じ意味の言葉を重ねることに違和感をもつ人もいます。文法的には二重表現ともいえますので、気を付けましょう。

感謝の気持ちを伝えるスマートな「例文」3選

では、取引先の相手や上司に対し、感謝の気持ちを表現する例文を挙げてみましょう。「感謝申し上げます」を修飾する言葉として、「心から」「心より」「厚く」を覚えておくと便利です。また、感謝する対象がふたつある場合は、「重ねて」と表現するとスマートです。

■1:「ご足労いただき、厚く感謝申し上げます」

■2:「お力添えを賜り、心より感謝申し上げます」

■3:「快くご協力いただきましたうえに、早々のご対応、重ねて感謝申し上げます」

「言い換え」表現と「類語」を知って、語彙力アップ!

■1:「感謝の言葉もありません」

「言葉にできないほど感謝している」や「感謝のあまり言葉が見つからない」という意味を表しています。

■2:「深謝申し上げます」

「深く感謝する」という意味で、より深い謝意を表していますが、少々仰々しい言葉ですので、フォーマルな場面に相応しい表現といえます。

■3:「感謝いたします」

「感謝申し上げます」よりも少し敬意の低い表現ですが、正しい謙譲語ですから、目上の方に使ってOKです。

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「感謝申し上げます」は、目上の方に対し、さまざまな状況で使える便利な表現です。ただ、これを使う際の状況や相手との関係性次第では、少々大仰すぎて、かえって無礼な印象を与えてしまうこともあります。丁寧すぎる表現は、本心を伝えません。慇懃無礼にならないよう、基本の言葉である「ありがとうございます」と、上手に使い分けてくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :