今回は、ビジネスメールでよく目にする「取り急ぎお礼申し上げます」というフレーズについて。「取り急ぎ」ってどういう意味? 緊急性や重要性はどれくらい? 目上の人に使ってもいいの? そんな“不安”を抱えながらもなんとなく使っている人もいるのでは? しっかりと意味や使い方をマスターしていきましょう。

【目次】

「取り急ぎお礼申し上げます」はいつ使う?
「取り急ぎお礼申し上げます」はいつ使う?

 

【「取り急ぎお礼申し上げます」の意味や使い方、基礎知識】

■意味

「取り急ぎ」とは「取り急ぐ」の連用形で、副詞的に用いて「急ぐ状態」を強めて表現しています。「取り急ぎ一筆申し上げます」といったように主に手紙文に用いられ、現在ではメールでもよく使われています。

「取り急ぎお礼申し上げます」を深掘り解説すると、「今はゆっくりお礼を述べている時間がありませんが、ひと言感謝の気持ちをお伝えします」という意味に。対面や電話などでの会話ではふさわしくありません。

■どんなときに使える?

「取り急ぎ」は、本来守るべきマナーや説明を省略して、大急ぎで用件を伝える様子を表すフレーズなので、何日も経ってからの連絡には不向きです。例えば業務上でトラブルが発生したら、時候の挨拶や日頃の感謝の気持ちなどを省略してでも、迅速な報告や対応、謝罪が必要ですね。そんな際に「取り急ぎ、ご報告まで」などと締めくくるのです。

「取り急ぎお礼申し上げます」も同様。「どのくらいの時間内なら使えるか?」とは示しにくいのですが、“感謝すべき事柄を知ったときが使い時”と心得えておくといいかもしれません。

■誰にでも使ってOK?

「取り急ぎ」は“すべきことを省略している”という意味をもつので、使用する相手は気の置けない取引先や、親しい仕事相手などが適当です。また、同僚や目下の相手に「お礼申し上げます」は使わないので、「取り急ぎお礼まで」でいいでしょう。


【ビジネスではこんなシーンで!「例文」3選】

「取り急ぎお礼申し上げます」は、「今はまず、急いで感謝の気持ちだけお伝えしたい」という“迅速な対応”が必要な際に活躍するフレーズです。実際にビジネスではどんなシーンで使えるのか、例文を挙げてみましょう。

■1:「本日のイベントも滞りなく終了し、ご尽力ありがとうございました。取り急ぎお礼申し上げます」

■2:「ご提案いただきました件、取り急ぎお礼申し上げます。部内で検討いたしますので、少々お時間を頂戴したく存じます」

■3:「ご多忙の最中にもかかわらずお越しいただき、ありがとうございました。取り急ぎお礼申し上げます」


目上の人に「取り急ぎ」はNG!「言い換え」もしっかり確認】

「取り急ぎ」というワードには、「丁寧な連絡ができないことを恐縮する気持ち」が込められているので、取引先や上司などの目上の相手には、本来使用すべきではないフレーズです。しかし、そんな相手にも「取り急ぎ」を使いたいシーンはあるもの。そんな際には“大人の語彙力”を発揮して言い換えワードを活用しましょう。

■目上の相手への「言い換え」

取引先や上司などには、「まずはお礼申し上げます」「本日はお礼のみにて失礼いたします」とするのが正解。

■どんな相手にもフォローを忘れずに

言い換えが必要な相手でも、「取り急ぎ」を使える相手でも、あまり時間を空けずに「先日の〇〇の件、改めてお礼申し上げます」といった文と供に、しっかりと感謝の気持ちや内容を表現した“フォロー”が必要です。「取り急ぎ」と「改めてのフォロー」はセットであると心得て。


【「取り急ぎ」の「OK類語」と「NG類語」】

■OK類語:「まずは」「一旦」「略儀ながら」「~のみで」

「略儀ながらお礼申し上げます」や、「本日はお礼のみにて失礼いたしますが、再度ご連絡させていただきたく存じます」などは、どんな相手にも失礼のない“略式のお礼”といえるでしょう。

■NG類語:「取り敢えず」

「取り敢えず(とりあえず)」は類語でありながら注意が必要な言葉です。本来は平安時代から「ほかに何する暇もなく」「たちどころに」「すぐに」という意味で使用されてきましたが、現代では「さしあたって」とか「間に合わせとして」という意味が強くなりました。本人は「すぐにお礼を申し上げたい」という気持ちで使っても、相手には「間に合わせなのか」と受け取られる場合も。勘違いや失礼を避けるためにも、ビジネスシーンで「取り敢えず」は封印したほうがよさそうです。


【「取り急ぎお礼申し上げます」使用上の注意点まとめ】

・メールなどで迅速に使用

・改めての連絡を忘れずに

・目上の相手には使用しない

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よく目にする「取り急ぎお礼申し上げます」ですが、相手やタイミングを考慮して使うべきでした。時間がないときに重宝するワードやフレーズこそ、ひと呼吸おいて見直してみることが大切ですね。

この記事の執筆者
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