「無愛想」は「愛想がなく、素っ気ないこと」を表す言葉です。一般的に、「「無愛想な人は接客業に向いていない」と言われますが、確かに人とコミュニケーションを取るのがうまい人は、たいてい愛想がいいものです。今回は「無愛想」について、その意味や使い方、「無愛想」な人の特徴や英語表現について解説します。

【目次】

「クールでカッコいい!」という価値観もあります。
「クールでカッコいい!」という価値観もあります。

【「無愛想」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「無愛想」は「ぶあいそう」もしくは「ぶあいそ」と読みます。

■意味

「無愛想」とは「愛想のないこと」ですが、では「愛想」とはなんでしょう?「愛想」とは「人に接するときの態度」を表し、とりわけ「人あたりのよい様子」や、「人に対する好意や親しみの気持ち」といった意味をもっています。従って「無愛想」は、「人あたりのよい様子」が「ない」、あるいは「人に対する好意や親しみの気持ち」が「ない」、つまり「人あたりが悪くつっけんどんなこと。好意的でない様子」という意味になります。


【「不愛想」との違い】

接頭語の「不」は、名詞などに付いて、それを打ち消し、否定する意を表します。例えば、「不人情」「不景気」「不手際」などの言葉では「〜がない」「〜が悪い」「〜がよくない」などの意味を添えます。「無」についても同様です。「不」と「無」の使い分けについては、「不」は状態を表す語に付くことが多く、「無」は体言に付くことが多いとはいえますが、古来、「不(無)気味」「不(無)作法」など、二通りある語も少なくありません。

一説には、「無」は「まったくない」ことを指し、「不」は「少しはある」、または「停滞している状態」を言うともいわれています。確かに、「不作」「不漁」「不備」「不況」などは、「まったくない」わけではありませんね。とはいえ、同様のことは「無能」や「無情」など、「無」にも当てはまります。以上のことから、「不愛想」は言葉としては成立しそうですが、ほとんどの辞書に「不愛想」の記載はありません。あえて「不愛想」とするほどの意味の違いももたせられないので、誤字と誤解されないためにも、一般的な「無愛想」を使うのがよいのではないでしょうか。


【「無愛想」とはどんな人?具体的な「特徴」は?】

■笑顔が少ない

■口数が少ない

■人と目を合わせない

■簡単には人に同調しない

■喜怒哀楽の感情をあまり表に出さない

■人からどう思われるのか気にせず、マイペース

■人見知り

「無愛想」な人には、「人に同調するのが嫌い」「意味なく笑うのがイヤ」など、なんらかの理由があって「無愛想にしている」人がいますが、中には人見知りのために緊張からうまく話せなかったり、自分の感情を表現するのが苦手で「無愛想だと思われている」人もいます。後者の場合、自分が周囲から誤解されがちなことに悩んでいる人も多いので、もし自分の近くにそんな人の存在に気付いたら、さり気なく気遣えるといいですね。


【使い方がわかる「例文」6選】

■1:「この場“”を収めるために、ひとまず先方に謝罪を、と言う部長の言葉に、彼は“イヤです”と無愛想に言い放った」

■2:「いつもは無愛想な彼が屈託なく笑う姿に、不本意ながらギャップ萌えしてしまった」

■3:「部長は口下手で無愛想だけれど、実は情に厚く、部下の面倒見もいい人だ」

■4:「私は新しい職場の複雑な人間関係に巻き込まれたくないという一心から、常に無愛想なふりをして周囲と距離を取っている」

■5:「無愛想な顔のせいで、“今日、機嫌悪い?”と聞かれたり、怖がられたりすることが多くてイヤだ。本当は飲み会だって嫌いじゃないんだ(涙)…」

■6:「新しくできたレストラン、美味しいしインテリアもいい感じなんだけど、フロアのスタッフがめっちゃ無愛想。二度と行かない」


【「類語」「言い換え」表現】

「愛想がなくて感じがよくない」という意味で「無愛想」と似た言葉はたくさんあります。いくつかご紹介しましょう。

■素っ気ない

「素っ気ない」とは「他人に対する思いやりや温かさが感じられない様子」のことです。

■ぶっきらぼう

「素っ気ない様子」という意味が「無愛想」と共通しています。違いは、「無愛想」は、「人に対してむっつりとした感じで、感じのよくない様子」を表しますが、「ぶっきらぼう」は「言動に愛嬌(あいきょう)や丁重さのない様子」を表します。

■すげない

「すげない」とは「愛想がない。思いやりがない。素っ気ない」という意味で、「すげなく断られた」「すげない返事」のように使われます。

■つっけんどん

「つっけんどん」とは「無遠慮でとげとげしいさま。冷淡なさま」。

■取り付く島もない

「つっけんどんで働き掛けるきっかけがない」と「頼る所が何もない」というふたつの意味をもち、前者は「無愛想」と似た意味です。

■木で鼻を括る

「きではなをくくる」と読み、「無愛想にふるまう。冷淡にあしらう」という意味になります。


【「対義語」は?】

■愛想がいい

■愛嬌がある

「愛嬌」とは「にこやかで人に好感を与える様子」です。「愛想」との違いは、「愛嬌」が「あるものに備わったかわいらしさ、ひょうきんで憎めない様子」を表しているのに対し、「愛想」は「愛想がよい」「愛想笑い」などのように、「人にいい感じを与えるために示す態度や動作」を指します。「愛嬌」は「愛嬌のある顔」のように、その人が生来備えたものを指すことが多いのに対し、「愛想」は「お愛想を言う」のように、意識的な動作や態度をいいます。そのため、「愛想よくしなさい」とは言いますが、「愛嬌よくしなさい」とは言いません。同様に、「愛想が尽きる」とは言っても、「愛嬌が尽きる」とは言いませんね。

■人懐こい

■人あたりがいい

■おもてなしの精神にあふれた


【「英語」にすると?】

「無愛想」を英語で表現すると[unfriendly]となります。

・She treated the visitor in an unfriendly manner.(彼女は無愛想な態度で客をあしらった)

・He is unfriendly to anyone.(彼は誰に対しても無愛想だ)

また、「社交的でない」「人付き合いを好まない」という意味をもつ[unsociable]で表現することも可能です。

・He is an unsociable person.(彼は無愛想な人間だ)

***

「無愛想」な人のなかには、人見知りであったり、自分の感情を表現するのが苦手なために、周囲から「人との関わりをもたないようにしている」と誤解され、悩みを抱えている人もいます。でも、「無愛想」な人を「クールでカッコいい!」と捉える価値観もありますよね。映画やアニメの人気キャラは、一見無愛想なツンデレが多いものです。「無愛想」な言動の裏に優しさと熱い気持ちが見え隠れ…こんなギャップ萌えに弱いのは、男性も女性も同じみたいです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :