ネット上の投稿で「名誉毀損」や「侮辱」として罪に問われるのはどんなものか。弁護士の小林航太さんは「明確な線引きは難しいが、社会通念上許容される限度を超えた人格攻撃は該当することがある。ネット上でも法律とマナーを守ることが必要だ」という――。(第2回)

※本稿は、小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

刑法 第230条(名誉毀損)
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損きそんした者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。

刑法 第231条(侮辱)
1 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処する。

「誹謗中傷」に法的な定義はない

悪口を言ったり、言葉でいやがらせをしたりデマや嘘を触れ回ったりすることを一般に「誹謗ひぼう中傷」と言いますが、「誹謗中傷」には法的な定義はありません。

誹謗中傷が名誉毀損または侮辱にあたる場合、民事上・刑事上の責任を負うことになります。ですので、どのような表現が名誉毀損や侮辱にあたるかを知っておく必要があります。SNSによって発言がしやすくなりましたが、インターネット上も公共の場です。法律とマナーを守って利用しましょう。

刑事上の名誉毀損と侮辱の違い

名誉毀損と侮辱は、民事上と刑事上とで定義・要件が異なります。

まず、刑事上の定義・要件について見てみましょう。

刑法の条文をもとに整理すると、名誉毀損罪と侮辱罪の定義は以下のとおりです。

・名誉毀損罪……(a)公然と、(b)事実を摘示し、(c)人の名誉を毀損すること
・侮辱罪……(a)公然と、(b)事実を摘示せずに、(c)人を侮辱すること