合理的配慮とは?簡単にわかりやすく説明します!【学校・具体例・どこまで・文部科学省・厚生労働省・保育・教育・福祉・会社・企業・職場・小学校】

みなさんは、合理的配慮という言葉を聞いたことはありますか?最近はメディアでも取り上げられることが多くなり、世間の関心が高まっているこの言葉。しかし、まだまだこの言葉に馴染みがなく、実際にはどんなことを意味しているのか分からないという方も多いのではないでしょうか?合理的配慮とは、障害の有無に関わらず、一人ひとりが過ごしやすい社会を実現するためにとても重要な概念。さて、今回はその【合理的配慮】について解説していきますよ。

合理的配慮とは?

全ての人が等しく社会に参加できるように配慮すること

合理的配慮とは、すべての人が等しく社会に参加できるように配慮することを意味します。どんな事情を持つ人であっても、人権と基本的な自由を当たり前に行使できるように環境の調整・変更を行います。ここで”どんな事情を持つ人”とは、特に障害特性を持つ人のことを表しています。障害のある人といっても、その症状や特性、必要な配慮は人によってさまざま。合理的配慮とは、一人ひとりの特性に合わせた配慮を行うことを指しています。

2016年4月に施行された障害者差別解消法によって定められている配慮のこと

それだけでなく、合理的配慮とは、2016年4月に施行された【障害者差別解消法 (正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)】によって定められた配慮のことを指します。この法律が定められたことによって、障害を持つ人々に対して、適切な配慮をすることが義務付けられました。義務付けられたことによって、当事者が配慮してほしいことを自ら発信しやすくなりました。

障害者差別解消法の内容や制定された背景とは?

障害を理由とする不当な扱いを禁止する法律

障害者差別解消法とは、障害を理由とした不当な扱いを禁止する法律。不当な差別的取扱いについては、国・地方公共 団体、民間事業主全てが、法的義務を負います。不当的な差別的取り扱いには、障害者であるという理由で、サービスの提供を拒否することや、制限すること、条件をつけることなどが挙げられます。具体的に以下のような行動が含まれています。

・障害者の受付対応を断ること
・障害者から声をかけれらたり質問されているにもかかわらず、付き添いやサポートの人にだけ答える
・学校への入学を障害者に対して拒否すること
・障害者に対してサービスを提供しないこと

裁判規範性のある差別を禁止する法律が求められていた

この法律が制定・施行された背景には、2006(平成18)年12月の国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」があります。日本政府も2007年にこの条約に署名し、内閣に「障碍者制度改革推進本部」を設置しました。この部署の設置から、日本国内における障害者差別について検討される機会が増えました。その後、障害者差別を禁止する法整備を目指し、諸外国の法制度のヒアリングをはじめとした法整備に向けた動きが見られるようになります。差別を禁止する法律を作るにあたって、必要になる司法手続きや雇用、就労などについての検討が行われ、2012年には論点の中間整理が行われます。その後議論は、ハラスメントや欠格事由、障害女性などの課題や差別を受けた場合の紛争解決の仕組みの在り方へと変化。法改正にともない、議論の場所は障害者政策委員会に引き継がれ、その後も度重なる議論がなされました。その結果、すべての意見を踏まえた【障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案】が提出され、その原案がそのまま現代の障害者差別解消法として公布・施行されました。

合理的配慮の実施には4つのステップが必要

①当事者の申し出

合理的配慮の実施には、4つのステップがあります。まず最初のステップとして必要になるのが、当事者からの申し出。障害者本人が、自分の置かれた環境において何を必要としているかは、周囲の人々が判断できることではありません。そのため、まず最初に当事者から申し出てもらうことが最も重要となります。しかし、実際には当事者からは相談しずらいと感じているケースも。そのため、ヒアリング用のアンケートを社内で実施するなどの工夫が求められるでしょう。

②配慮の内容について話し合い

当事者からの申し出があったら、次に配慮の内容について話し合いを行います。該当する当事者と企業・学校・自治体等で配慮について話し合うことが、適切な配慮をすることにつながります。この時、当事者との話し合いがうまく進まなかったり、十分な話し合いができない場合は、該当する障害者の家族や支援者と話をすることも有効でしょう。当事者の抱えている問題や課題を十分に理解した上で、合理的配慮を実施しましょう。

③合理的配慮の実施

当事者との話し合いを十分に行った後、実際に合理的配慮を実施していきます。話し合いをして、どのような合理的配慮を行うかを決定する際は、当事者の意見を最大限優先する必要があります。当事者から求められた配慮の内容が、会社や学校にとってあまりにも負担が多い場合は、代替案を出しましょう。また、実際に合理的配慮を実施するに伴い、障害の有無を公にする場合は、当事者が同意する必要があります。

④合理的配慮の経過モニタリング・評価

合理的配慮の経過モニタリングと評価を行うことは、合理的配慮を行う上で絶対に怠ってはいけないこと。十分に話し合いをして決定した配慮を行っても、すべての課題が解決するとは限りません。そのため、合理的配慮を実施しながら、定期的に経過をモニタリングする必要があります。モニタリングと評価をして、行っている配慮が効果を発揮しているかを確認し、効果が得られていない場合は原因を検証。その上で、配慮の内容の変更が必要になるでしょう。

具体的な合理的配慮の例は?

【保育】言葉の発達に遅れがある子供に意識的に言葉掛けを行う

ここからは、実際に行われた合理的配慮の具体例をいくつか紹介していきます。
まず1つ目に紹介するのは、言葉の発達に遅れがみられる子供の保育の中で合理的配慮を実施した例です。言葉の発達に遅れがみられるAさんは、友達や先生たちとの会話が成り立たないことがありました。主語と述語が逆になってしまったり、話しかけられた言葉をオウム返ししたりする姿がよく見られます。行動の見通しが立てられないという特性もあったため、指示を出されるまで同じ行動を繰り返したりすることも。そこで、園内では、作業をするとき、行動を良く見守って、次の行動を言葉掛けするように意識しました。それだけでなく、語彙の増加を目指して、単語を描いた絵のカードを用いた指導を行うように。こうした配慮は、Aさんがより快適に園での生活を送れるようにする目的があります。

【保育】変化が苦手な子供が安心して過ごせる環境づくり・サポート

また、保育の中で変化が苦手な子供が安心して過ごせるように、合理的配慮が行われた例もあります。環境や状況の変化が苦手で、パニックや癇癪を起してしまうことがあるBさん。特に園の中で、子供たちが自由に席に座る時間に、毎日同じ席に座っています。しかし、自由に席をえらぶ関係で他の子が座ってしまうこともありますよね。それによってパニックになってしまうことを防ぐため、先生たちは、Bさんがいつも座っている席から変更しなくていいように、Bさん専用の席を作ることにしました。環境の変化が苦手な子供は、こだわりが非常に強い傾向にあります。このケースでは、そのこだわりをなるべく尊重するという形で、Bさんの抱えていた困難を解決しました。

【学校】読み書きが困難な生徒が音声ソフトで学習できるように

学校での勉強が始まると、読み書きのスキルが求められるようになりますよね。しかし、勉強したいという強い気持ちがあっても、自分の持つ特性によってうまく進まないことも。小学校に通うCさんは、読み書きが困難で、文字で書かれた情報をうまく理解できません。そこで学校側は、Cさんが音声ソフトを使って学習することを許可し、なるべく音声で学習できるようなカリキュラムを組みました。この配慮によって、Cさんは学校の授業の理解度が深まりました。

【学校】介助者や盲導犬とともに学校生活を送れるようにする

障害を持つ人の中には、介助者や盲導犬と生活している人も多いです。介助者や盲導犬の必要性は、学校や職場においても同じもの。歩行をはじめとした日常生活において、介助者が必要なDさんは、小学校に通っています。授業を受けたり、学校生活を送る中でも、介助者の手助けが日常的に必要不可欠です。そこで学校側は、Dさんが学校生活を送る中で、日常的に介助者と共に過ごすことを許可しました。同級生やクラスメイトに対しても、十分に理解してもらい、これによってDさんは学校生活を介助者とともに過ごすことができるように。この配慮によって、Dさんが学校生活においてできることが格段に増え、充実した学校生活を送ることにつながりました。

【学校】刺激が苦手な生徒が仕切りのある場所で勉強できるようにする

障害の特性によって、光やにおい、音などの外部からの刺激が苦手な子供も。学校での生活は、想像以上に刺激がおおいですよね。隣に座っている友人の鉛筆の音や、授業中の小さな話し声などすこしの刺激が授業をうけにくくなってしまう要因となります。中学校に通うEさんは、音とにおいが特に苦手で、鉛筆やノートをめくる音、洗剤のにおいが刺激になってしまいます。そこで学校は、Eさんがより集中して授業を受けられるように、仕切りのある場所で授業を受けられるように配慮しました。

【職場】手話が可能な人材を配属する

耳が聞こえない人にとって、手話はとても重要なコミュニケーション言語です。会社員のFさんは、耳が聞こえないため、手話を用いてコミュニケーションを取ります。手話を使える人が職場にいた方が、仕事が円滑に進められるため、Fさんと会社は話し合いをして、手話が可能な人材を同じ部署に配属することにしました。これによって、Fさんが耳が聞こえないという理由でできなかった仕事も取り組めるようになりました。こうした配慮は、障害のある人でも同じように仕事ができるようになるという目的があり、合理的配慮の理念に合致しています。 

【職場】特性に合わせた仕事のみを担当業務にする

発達障害を持つGさんは、ADHDの特性によりケアレスミスが多く、時間管理が苦手です。じっと座って長時間仕事をすることも苦手なので、職場では注意されることもしばしば。自分の特性によって、自分ひとりで仕事を進めることが困難であると判断したGさんは、会社に相談することに。話し合いを重ねた結果、自分の特性に合わせた仕事のみを担当業務とすることになりました。他の社員にも協力を仰ぎ、作業の手順を図にして分かりやすく説明したり、指示を一つずつ出すといった工夫をしてもらうことになりました。

教育的支援や特別な支援との違い

法律によって義務付けられているかどうか

ここまで、合理的配慮の具体例をいくつか紹介しました。合理的配慮とは、保育や学校、職場すべての場所で行われる配慮です。それでは、合理的配慮と教育的支援や特別な支援との違いはあるのでしょうか?まず、1つ目に違いとして挙げられるのは、法律によって義務付けられた配慮かどうかという点。教育的支援や特別の支援は、周囲の人が気づいた時点で行われることが多く、支援するかどうかについて定める法律はありません。そのため、実際に行わないという選択肢も。しかし、合理的配慮という概念は、障害者差別解消法という法律によって義務付けられたものです。そのため、当事者から相談を受けた場合に、合理的配慮を行わないという選択肢はなく、必ず実施しなければならないものとなっています。

同じスタートラインに全員が等しく並ぶための配慮であるという点

それだけでなく、合理的配慮は教育的支援や特別の支援と異なり、すべての人が同じスタートラインに並ぶための配慮であるとされています。教育的支援や特別な支援は、当事者の抱える問題を解消するという目的があります。対して合理的配慮は、どんな事情がある人でも、すべての人が同じように自分の人権や自由を持てるようにするためにするもの。この2つの間では、実施される根本的な目的が大きく異なっています。

まとめ

合理的配慮について理解をふかめよう!

今回は、合理的配慮について詳しく説明しました。合理的配慮を行うと一言で表しても、具体的にどういった配慮を行うべきなのかは、当事者によってさまざま。合理的配慮とは何なのか、どのようなステップを用いることが適切なのかを理解しておきましょう。これについて理解しておくことによって、自分が実際に合理的配慮を実施するときにかなり役に立ちます。まだまだ一般的な理解度が低いからこそ、これからはより多くの人が合理的配慮について知っておく必要があるでしょう。