<社説>沖縄予算2679億円 政府は狭量な態度改めよ


社会
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 政府は23日の閣議で2023年度予算案を決定した。うち沖縄関係予算は2679億円の当初案とした。2年連続で3千億円台を下回っている。問題は、県が使途を決められる「沖縄振興一括交付金」を22年度当初予算から3億円減らして約759億円とした一方で、国直轄の「沖縄振興特定事業推進費(推進費)」が5億円増えて85億円としたことだ。

 名護市辺野古の新基地建設で政府と県が鋭く対立していることの意趣返しなのか、政府からは当然説明もなく解せない。とはいえ、ここ数か月の出来事を振り返っても、なんともぎくしゃくした政府と県との関係性から、その原因は推し量れよう。
 松野博一官房長官が来県した際にも当選間もない那覇市長らには面会しても目と鼻の先にある県には出向かない。
 先月末には政府と親和性のある市町村長らが県を抜きに上京し、国が直接交付できる「特定事業推進費」の増額を求めた。住民の生活現場を直接預かる市町村が住民サービスを充実させるために予算獲得に奔走するのは歓迎されるべきだろう。しかしこうした「初めてで画期的だ」とする首長らの取り組みも、県とかい離する構図を見せつけられたようで後味はよくない。しかも閣議決定した予算案は、県を尻目に、それが見事に実現された格好だ。首長の活躍にも悲喜こもごも、素直に喜べない。複雑な感情を抱く県民もいるのではないか。
 意に沿わない県は冷遇して見せしめにする。俯瞰(ふかん)すれば県政の力をそぐ意図があるととられても仕方あるまい。
 そして県の頭越しに国の意に沿う市町村を優遇する。こうした政府の振る舞いは市町村を直轄領としてハンドリングし、住民意思と自治をゆがめかねない。政府の采配には危惧を禁じ得ない。
 半面で膨張を続ける防衛費は国力に見合わない水準に達しつつある。しかもそれは鹿児島県を含めて沖縄など南西地域に異様なまでに比重を置く。自衛隊施設の整備やミサイル配備、弾薬庫建設と、島の武装化が進むことで、命の危険すら感じさせる使い道になった。「アメとムチ」といわれるが、いつしか「ムチとムチ」の構図と化したのも次年度予算の留意点だろう。
 岸田文雄首相に継承される政策集団宏池会の創設者、池田勇人氏は「寛容と忍耐」をキャッチフレーズに国民との対話路線を重視した。そして「所得倍増計画」を掲げ、経済成長を推進した。
 そんな路線をかなぐり捨ててしまったのか。対話を尽くさないばかりか、考え方の多様性を奪って政府方針に同調を強いる。そんな傲岸(ごうがん)不遜な統治手法では人心が離れるのは必然ではないか。政府と政治方向と手法は違っても、県民多数の支持を受けた県政であることに寸分の疑いもない。狭量極まりない政府の振る舞いは筋違いも甚だしい。