海外ではOKも日本では裁判所が却下…選択的夫婦別姓の現状

2021.05.17(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。4月26日(月)放送の「フラトピ!」では、“選択的夫婦別姓”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。4月26日(月)放送の「フラトピ!」では、“選択的夫婦別姓”について議論しました。

◆選択的夫婦別姓に関して、大きな意味を持つ判決が

近年、導入をめぐり議論が深まっている「選択的夫婦別姓」について、法律事務所ZeLoの南知果弁護士に話を伺いました。まず「私は賛成の立場」と自身の考えを明示しつつ、「民法750条で夫婦同氏の原則を定めているので、法律上、結婚するときは夫婦の姓を一つに統一しなければならないと決められている」と解説。ただ、現在は妻が夫の名字に変えることが圧倒的多数で、およそ96%を占めています。

そんななか、1997年にアメリカ・ニューヨーク市にて夫婦別姓で結婚した映画監督・想田和弘さん、柏木規与子さん夫婦は、2018年に千代田区に別姓で婚姻届を提出したところ受理されず、東京地裁で国に対し訴訟を起こしました。そして、今年4月21日にその判決が下り、東京地裁は訴えを却下。東京地裁の市原裁判長は「婚姻自体は有効に成立している」、「(夫婦別姓にするためには)家裁に不服を申し立てるのが適切」と話しています。

今回の件に関し、想田さんにリモートで話を聞いてみたところ「僕らの結婚観は基本的にはお互い別々の人間、違うルール、違う歴史があり、現実問題としてそれをどちらかが変えるとなると、いろいろな不都合も出てくる」と夫婦別姓を望む理由を明かします。

判決に関しては、訴訟の目的は婚姻の成立の確認と言い、「形式的には敗訴だが、一番欲しい部分はいただけたので実質的勝訴。裁判所は、僕らが夫婦であることを認めてくれた」と想田さん。そして、「僕らだけが救済されてもあまり意味がない。みんなが生きやすいような社会に変化していくことが大事。戸籍制度が別姓を選択肢として組み入れるような法改正が究極の目標。家庭裁判所に不服申し立てをすることも選択肢としてはある」と今後について語りました。

キャスターの堀潤は、今回の裁判について「選択的夫婦別姓がこれでドラスティックに変わることはないが、それに向けての下地はできた気がする」と期待を寄せます。

一方、南さんは、「2人の婚姻が有効だという、ある意味当然の判断が下されたが、裁判のなかで被告である国は別姓の夫婦の婚姻は有効ではないと主張していた」と振り返り、「対して裁判所は、外国で結婚しても、その国の方式に従っていれば別姓のままでの婚姻も有効という当然の判断を下した」と解説します。

ただ、裁判所の判断で「却下」は“門前払い判決”とも言われるそうで、「中身の審議に入らず、今回の問題は家庭裁判所に不服を申し立ててくださいということで訴えとして取り上げてもらえなかったという結論になっている」と南さん。

◆Z世代は選択的夫婦別姓をどう考えているのか?

南さんは、選択的夫婦別姓の課題は3点あると言います。1つは「伝統的に名字が同じことで家族の絆が強まるという考え方があること」。これは一方で社会が変化し、必ずしも氏に縛られない多様な家族の在り方を法制度上も認めてもいいという発想も盛り上がっています。

2つ目は「戸籍制度の問題」。現状では戸籍は同一の氏の人が同じ1つの戸籍に入るとことになっており、別姓を認める場合には戸籍制度をどうするのか。そして、3つ目は「子どもの名字」。父と母、子どもはどちらの名字を名乗るのか、この点も論点となっています。

最後に2人のZ世代、キャスターの田中陽南と株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんに望みを聞いてみると、田中は「“選択的”を増やすべき、多様性を認める社会に。夫婦別姓を選べないこと自体が、時代に遅れている」と主張。田中は周囲の最近結婚した女性から「名字を変える手続きはとても大変」という声を何度も聞いたそうで「自分で選んで自分の名字を名乗ることがあっていい」と訴えます。ちなみに、田中自身は結婚したら「同姓にしたい」と示しつつ、あらためて「“選択的”にしてほしい」と声を大にします。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんも、基本的に田中さんに賛同しつつ、「ミドルネーム案を含み、解を出しに行こう!」と自身の見解を述べます。「僕自身、両親の名前が違ったらいろいろ考えることがあるかもしれない」と素直な気落ちを吐露し、ミドルネームを導入すれば両方の名字が使え、どっちを選んでもいいし、どちらかだけを使っても良いと言い、「みんなで選べ、答えを前に進められるような議論を進めていくのがいい」と希望。

また、番組Twitterには「戸籍制度の変更にはコストが大きすぎないか」という意見も寄せられ、南さんは、「民法改正と合わせ、戸籍法の改正も不可欠になってくるが、多様な社会を認めるという意味ではそういった議論も必要」と言います。一方、堀は「戸籍制度をいじらなくてもマイナンバーで個人に番号が振り分けられているわけで、そのあたりからできる範囲で広げていけばいいと思う。しかし、今はマイナンバーが十分に稼働しているように思えない」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

 

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