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新妻聖子、ミュージカル界の歌姫の秘密兵器は「吸入器」声を守るため予備あわせ3台持ち

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.07.29 06:00FLASH編集部

新妻聖子、ミュージカル界の歌姫の秘密兵器は「吸入器」声を守るため予備あわせ3台持ち

デビュー当時から、大事なパートナーとして持ち歩く吸入器(写真・柏木ゆり)

 

 呼気で声帯が振動し、それが共鳴して声が生まれる。

 

「声帯というのは爪と同じくらいの大きさしかなく、しかももろい。そこが頑張って震えて音を出してくれているので、絶対に乱暴に扱っちゃいけない器官なんです」

 

 2003年に5000倍のオーディションを勝ち抜いたミュージカル『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役を演じてから今年で20年……いまや、ミュージカル界屈指の歌姫として先頭を走り続ける新妻聖子(42)。

 

 

“声も楽器のひとつ” と呼ばれるその美しい調べで、数多くの人を魅了し続けてきた彼女が、20年間ずっと恐れ続けてきたもの。それが、声帯にとっては天敵と呼ばれる風邪のウイルスだ。

 

「私は気持ちで頑張れるタイプの人間なので、痛いのとかは我慢できるんです。発熱にも耐えられる。以前、胃腸炎で40度の高熱が出てしまったときも、気力と根性で乗り切りました(笑)。でも……、喉風邪や鼻風邪で声が出なくなってしまったら、どうすることもできないんですよね」

 

 微苦笑を浮かべた新妻がバッグから取り出したものは……春風亭昇太師匠からプレゼントされたという千社札を貼ってある、繊細でもろい声帯を守る秘密兵器・オムロンネブライザー吸入器だ。

 

「量販店にあるスチームタイプのものと違って、医療用機器なので、細かいミストが声帯まで届くんです。歌い終わった後のクールダウンにもいいし、炎症があるときは処方された薬液を入れて使ったりもします」

 

 初めて医療機関で購入したのが20年前。以来、この吸入器は、大事なパートナーとして、ずっと新妻聖子の喉を陰から守り続けてきた。

 

「もとが心配性なので、壊れたらどうしようと思って。予備と、予備の予備とで、同じものを3台持っていますね(笑)。初代から数えると、このコで5代めくらいかな」

 

 足を運んでくださるお客様のために、やれるべきことはすべて、やる――。それが、新妻聖子のポリシーであり、プロフェッショナルとしての矜持。しかし、最善の努力をしていても、風邪のウイルスは侵入してくる。

 

「子供は年中風邪をひいていますから、育児中は仕方ないのかなと割り切っています。

 

 でも、コンサート前に風邪を引いたらやはりショックです。なんでよりによって今なのって。まず、5分くらい泣きます。それから気持ちを切り替えて、薬を飲んで、点滴をして。その日使える声帯の場所を探って、万が一、途中で声が出なくなったら、自分の口でお客様に謝ろう――それくらい腹をくくってステージに立ちます」

 

 その強い気持ちと責任感は、20年間少しも変わっていない。変わったのは、人の気持ちを理解しようとする気遣いと優しさ。お互い様だからと思えるようになったことだという。

 

「若いころは猪突猛進、正しいものは絶対に正しいと主張しないと気がすまなかったんです。言っていることは間違っていなくても、逃げ場がないところまで相手を追い詰めてしまうのはダメ。どんな理由があっても、絶対に人を責めてはいけないと、今はわかります」

 

 自分のことに精いっぱいで、相手のことが見えなかった。

 

「一日も早くうまくなりたい、結果を残したいと必死で。自分が極限まで頑張っているのに、あの人はなんでって、勝手に他人をジャッジして殺気立っていたんです(苦笑)」

 

「傲慢でしたね」と、肩をすくめた新妻に大きな変化をもたらしたのは、結婚・出産。現在進行形で、子育てを経験しているということだ。

 

「子供を生んで、育ててみてわかったのが、いかに自分がポンコツかということです。初めて経験することに動揺して、些細なことにイライラしたり、体調を崩したり……。

 

 でも当然、仕事場では私生活の大変さは見せないし、みんなもそうなんだろうなって。誰もが、何かを抱えながら仕事をしているんですよね。全部が全部、完璧にうまくできる人なんていない」

 

 追い打ちをかけるように、産後9カ月のころ、大きく体調を崩し、思うように声が出せなくなった。

 

「1年半くらい苦しみましたね。一度は、歌をあきらめようというところまでいったので、もう一度、歌えるようになったとき、残りの人生はボーナスステージだなって思いました。もう、贅沢は言わない。わがままも言わない。歌えるだけで幸せ。神様、また歌わせてくれてありがとう!」

 

 そう言った直後、「もっとも今でも、ぶつぶつと文句は言うし、ちょっとはわがままも言うんですけどね」と、ペロリと舌を出したその顔は、今も変わらずキュートでかわいい。

 

「昔は1年中仕事をしていた時期もありましたが、今は、子育て優先。でも、それがいい方向に作用している気がします。ふだんの生活があって、そこで貯めた、しなやかで柔らかくて、変幻自在の “表現の玉” をお客様に投げて、受け取っていただく――。

 

 そういう機会をいただけていることはすごくありがたいし、そうやって立たせていただける舞台が、より一層愛おしくなっています」

 

――その見つめる視線の先にあるのは?

 

「なんでしょう? 私にもわかりません。わかるのは……人間転んで、痛い思いをするのは絶対に無駄じゃないということですね」

 

にいづませいこ
1980年10月8日生まれ 愛知県出身 2003年5000倍のオーディションを突破し、ミュージカル『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役でデビュー。以降、数々の舞台でヒロインを務め、ミュージカル界屈指の歌姫として第一線で活躍中。第31回菊田一夫演劇賞、平成18年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第7回岩谷時子賞 奨励賞を受賞。年末には2人ミュージカル『ジョン&ジェン』(12月9~24日東京、12月26~28日大阪)に出演

 

写真・柏木ゆり 取材&文・工藤晋

( 週刊FLASH 2023年8月8日号 )

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