目次

  1. 1. 家族信託と商事信託の違い
  2. 2. 商事信託とは
    1. 2-1. 企業が営利目的で行う資産管理の方法
    2. 2-2. 商事信託は資産管理の負担を軽減できる
    3. 2-3. 商事信託は柔軟な資産管理がしづらい
  3. 3. 家族信託とは
    1. 3-1. 家族信託は非営利で行う民事信託の一つ
  4. 4. 家族信託と商事信託、どちらを選ぶべきか?
    1. 4-1. 家族信託をまず検討する

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家族信託と商事信託の違い

商事信託とは、主に財産の管理や運用のために信託銀行や信託会社が営利目的で行う信託を指します。商事信託を行うには、内閣総理大臣の免許や登録が必要です。

信託銀行や信託会社が営利目的で行う資産管理や運用のことを商事信託といい、投資信託も商事信託の一種です。民事信託とはさまざまな面で違いがあります。

もっとも大きな違いは「受託者」です。商事信託の受託者は、内閣総理大臣の免許や登録を受けた信託会社や信託銀行ですが、民事信託は信頼できる家族などの人物が受託者になります。

また、商事信託には「管理型信託」と「運用型信託」などといった種別があり、それぞれについて受託者の権限の範囲が異なります。

運用型信託では、資産の管理や運用について受託者にある程度の裁量が認められますが、管理型信託は受託者の権限の範囲が狭く、委託者の指示に基づいて運用を行います。

商事信託ならではのメリットがあります。大きなメリットは、資産管理の負担を軽減できることです。

たとえば、収益用の不動産で考えてみると、その恩恵が顕著でしょう。不動産の管理や運用の手間、賃料など収支の計算、建物自体の維持修繕の計画など複雑で難しい作業を自力でこなさずにすみます。プロに任せている安心感もメリットのうちです。

自分で資産管理をするのが不安だったり、身近に頼れそうな家族がいなっかりする人にとっては、商事信託を選ぶことで安心の資産管理を実現できる可能性があります。

商事信託のデメリットは、その柔軟性のなさにあります。たとえば、信託できる財産の範囲が狭い点です。現状のところ信託財産は原則として金銭に限定されるうえ、信託できる最低金額が数百万円以上といった制限が設けられる傾向にあります。

また自宅不動産や未上場株式の信託には未対応で、そういった財産に対する委託者の目的や希望を達成しにくいのが現実です。なお、収益用不動産でも、条件によっては信託できないこともあります。

従って、限られた種類の資産を、限られた目的のために信託するのが商事信託で、柔軟な資産管理を求めるなら民事信託が適しているでしょう。

家族信託は、民事信託の別称といえます。ちなみに「民事信託」という法律用語があるわけではなく、商事信託に対応する信託制度の概要を説明するときの便宜上の言葉として利用されることの多い用語です。

家族信託では、信頼できる家族や親族を受託者として資産管理や運用などを任せる点で、商事信託とは大きく異なります。

家族信託は非営利目的の信託です。営利目的は商事信託になり、信託銀行や信託会社しか受託者になれないのが原則です。

信頼できる家族や親族に、資産の管理や運用を任せることが家族信託の前提です。そして財産管理や運用などの方法を信託契約の中で定め、信託契約書を作成する方法が一般的です。

商事信託と比較して、家族信託なら委託者の目的に合わせた柔軟な内容設計がしやすいですし、自宅不動産や未上場株式も信託できます。

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家族信託、商事信託それぞれにメリットとデメリットがあります。

信託について二者択一を迫られた時に重要なことは、「委託者の希望を叶え、不安を解消するためにはどちらが適しているのか」という視点です。家族信託を選んだ場合と、商事信託を選んだ場合、どちらがより委託者の希望に沿えるかを検討しましょう。

商事信託で気になる商品があるなら、取り扱う銀行などに話を聞いてみると良いでしょう。家族信託について疑問点や不安があるなら、弁護士や司法書士といった専門家への相談をおすすめします。

あえて言えば、まずは家族信託の利用を考えると良いでしょう。

商事信託ならではのメリットもありますが、コスト面での負担や資産管理における柔軟性の低さをかんがみると、選択肢として検討するのは後回しになっても問題ありません。

なぜなら商事信託は、家族の生活を守りたい、不動産を最終的に渡す人を決めておきたい、認知症になった場合に備えて資産管理の体制を整えておきたいなどの、人によって異なる利用目的に対応しきれないのが実情だからです。

ただし、家族信託は比較的新しい制度のため参考にできる前例が少なく、自力での手続きは困難です。また将来的なトラブルを可能な限り避けるためにも、疑問や不安があるなら、家族信託の経験が豊富な弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)

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