「なんで円周率を使えば円周が求められるの?」
「そもそも円周率って何?」
このように子どもから質問された時、なんて答えますか?
ほとんどの人が自信を持って答えることや、子どもに分かるように説明することができないと思います。おそらく円周率は小学校の算数で一番か二番くらいの鬼門です。
そこで今回、円周率から円周が求められる理由、そして円周率を確かめる方法など、円周率に関して子どもに教えられるくらい丁寧に解説していきます。
円周を求める公式
円周は『直径×円周率』で計算できます。小学校算数では円周率を\(3.14\)としているので、円周は『直径\(×3.14\)』です。
たとえば以下のような問題の場合。
例題
直径\(4cm\)の円の円周を求めよ。
答えはこのように求めることができます。
$$4×3.14=12.56(cm)$$
つづいて、「直径×円周率」で円周が求められる理由について説明します。
なぜ「直径×円周率」で円周が求まるのか?
円周率はそもそも、「円周と直径の比率(:\(\frac {円周}{直径}\))」と定義されています。
ここで重要なのは『定理』ではなく『定義』だということです。
たとえば【平行四辺形の面積が「底辺×高さ」で計算できる】というのは【平行四辺形は長方形に変形できる】⇒【長方形の面積は「縦×横」で計算できる】⇒【平行四辺形の底辺と高さが長方形の縦と横に当たる】といったように導くことができます。
これが『定理』です。
一方で、【向かい合う辺が平行の四角形は“平行四辺形”】というのは人間が定めた『定義』です。
「なぜ四角形は向かい合う辺が平行なら平行四辺形というのか?」というと、そのように人間が定めたからです。
もちろん、分かりやすい名称にしたというような理由はあるでしょうが、そこに理論的な意味はありません。
これが『定義』と『定理』の違いです。
さて、話を戻しましょう。
『円周=直径×円周率』というのは平行四辺形の名称と同様、人間が定めた『定義』です。
偉い人が「直径に3.14…をかけたら円周になる!」と発見・証明したからではなく、直径にかけたら円周になる値を“円周率”と定めたのです。
そのため、「なんで直径×円周率で円周が求められるの?」と聞かれたら、「そのように円周率を定義したからだよ」というのが答えになります。
あまりしっくりこないと思いますが、『定義』と『定理』の違いをイメージするよいきっかけとなるでしょう。
ちなみに「どんな大きさの円も直径と円周の比が一定である」ということは「相似な図形の長さの比は相似比と等しい」ということからわかります。つまり『定理』です。
大きさの違う真円は「相似な図形」と言える。相似比が\(n\)倍の円は直径も円周も\(n\)倍になるので、円周を直径で割った値は円の大きさによらず一定というのがわかる。
しかしその一定の値自体は書き記すことができないので、“円周率”と『定義』したのです。
- 「どんな大きさの円でも円周を直径で割ると決まった値になる」:定理
- 「円周を直径で割った値が円周率」:定義
定理は導けるもの、定義は人間が定めたもの、という風に考えましょう。
円周率という概念は人間が定めたものですが、円周率がたしかに3.14…となるのはきちんと確かめる方法があります。
円周率を確かめる方法
【方法1】実際に円周を測ってみる
直径と円周が分かれば円周率を計算することができます。
糸とハサミ、定規を使えば原始的な方法で円周をはかる事ができるので、そこから円周率を確かめてみましょう。
- コンパスを使って紙に円を書く
- 糸を円に1周させて円周の長さで糸を切る(印をつけるだけでもOK)
- 糸の長さ測ることで円周の長さを把握する
- 円周を直径で割る
計算が楽なように、直径は\(1cm\)、\(2cm\)、\(3cm\)などの整数にするといいでしょう。直径を大きくするほど測定の際の誤差が相対的に小さくなるため、正しい円周率に近づきます。
小学生でも簡単にできるのでおすすめの方法です。
続いて小学生には少し難しいかもしれませんが、円周率をより正確に求める方法を紹介します。
【方法2】正多角形で円を挟んで円周率を絞り込む
円を正多角形で挟みます。
たとえばわかりやすい例として、正方形で円を挟むと考えましょう。円周は内接する正方形よりは大きいけど外接する正方形よりは小さいというのが分かると思います。
正○角形の角を増やしていくと、内接する多角形・外接する多角形がともに円に近づいていきますが、内接する多角形が円より大きくなったり、外接する多角形が円より小さくなったりすることはありません。
円周は正確に求める事ができないのに対し、円周を内接・外接する正○角形の辺の総和は計算で求められるというのがポイントです。
そして直径\(1\)とすると円周がそのまま円周率の値になります。(「円周=直径×円周率」のため)
そこで直径\(1\)の円を正○角形で挟み込んだ時、『内接する辺の総和<円周<外接する辺の総和』と表すと以下の通り。
- 正方形:2.828…<円周<4
- 正六角形:3<円周<
- 正八角形:
- 正十角形:
3.090… <円周<3.249… - 正十二角形:
3.105… <円周<3.215…
角を増やしていくと、内接・外接が円周率\((=3.141…)\)に近づいていっているのが分かると思います。
ちなみに内接・外接する正○角形の辺の総和の計算方法は、難しいので覚える必要も導出できる必要もないですが、それぞれ以下の通り。
半径\(r\)に内接する正\(n\)角形の辺の総和は\(2nr\sin\dfrac{\pi}{n}\)、外接する正\(n\)角形の辺の総和は\(2nr\tan\dfrac{\pi}{n}\)です。
直径\(1\)(半径\(0.5\))の円を正\(n\)角形で挟み込むと考えると以下のようになります。
\(n\sin\dfrac {\pi}{n}\)<円周率<\(n\tan\dfrac{\pi}{n}\)
また、「直径\(1\)に内接・外接する正多角形の辺の総和」をそれぞれ求めるプログラムを作成しました。
【正□角形】の□に数字を入れれば、その正多角形の辺の総和を内接・外接ともに計算してくれます。
数字を増やしていくと、円周の幅が「3.14159 26535 89793 …」に近づいていくのが確認できると思います。
小学生に教える内容としては後半は難しいとは思いますが、「内接・外接する正多角形で円周率が求められる」ということだけでも理解してもらい、「徐々に円周率に近づいていく楽しさ」を体感してもらえればなと思います。
ちなみに円周の長さを求める練習問題を用意しました。問題はランダムで変わるため、面積問題に慣れるためには役立つと思うのでぜひご活用ください。
凄く分かりやすい。ありがとうございます。