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【共感とは?】心理学の観点から共感を理解する|精神科医監修ブログ

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2023年1月6日

最終更新日 2024年3月2日

精神科医監修ブログテーマは『共感』心理学の観点から『共感とは?』を理解しましょう!

今回の精神科医監修ブログのテーマは『共感とは?』です。

―そもそも心理学における共感とは何か?

―心理学において共感には2つの種類がある?

―一見(一聴)ポジティブなイメージを持つ『共感』に潜む危険性とは?

気になるポイントについて公認心理師である筆者が心理学の観点から解説します。

 

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序:ハローキティに見る共感物語

日本国内だけではなく世界的にも有名で、子どもから大人まで幅広い層からの支持を得ているキャラクターの「ハローキティ」。キティちゃんの愛称で親しまれていて、11月1日には誕生日を迎えました。キャラクターとして誕生した当初、みんなから親近感を持ってもらえるようにとキティちゃんには誕生日の他、体重や身長、特技や家族構成なども設定されたそうです。

 

そのキティちゃんですが、ミッキーマウス、アンパンマンなど他のキャラクターには必ず描かれている口がありません。人間もコロナ禍でマスクをすることが日常的になってから耳にすることが増えましたが、顔のパーツの中でも口元は表情を理解するのに大事な要素なのです。その口元が描かれていない理由、気になりませんか?

 

キティちゃんは、見る人が楽しいときには笑っているように見えて、悲しいときには一緒に泣いたり慰めてくれたりしているように見えるなど、見る人が自由に感情を想像できる、感情移入しやすくなる、という理由で口が描かれていないのです。つまり、固定の表情がないからこそ同じ気持ちを共有でき、寄り添って共感してくれるわけです。

 

SNSが欠かせない現代では、ユーザーの共感を生む仕組みをつくることで企業の売り上げやブランド力の向上を狙うマーケティングの手法として共感型マーケティングという言葉もあるほど、共感は大事な概念なのです。

 

心理学における共感とは?


「共感」という言葉自体は、日常生活の中において自然と使われることも多いのではないでしょうか。例えば、ドラマを見ていて主人公と同じ気持ちになったり、好きなアーティストの楽曲を聴いて歌詞と自分を重ねたり。友人との会話で「それ、わかるー!」というのも共感の一種ですよね。これは自分も同じような経験をしたということを思い出し、気持ちの上で再体験している状態であり、対人関係や社会生活を円滑にする役割の1つでもあります。

 

一般的な「共感」は今述べたようなものですが、心理学分野で言う「共感」はそれとはちょっと違います。

 

クライエント中心療法(来談者中心療法)という心理療法を提唱したアメリカの心理学者ロジャーズは、面接におけるセラピストに必要な3条件を掲げており、その中の1つに「共感的理解」を挙げています。共感的理解とは、相手の立場になって理解するように努めることであり、あたかも自分が感じているかのように振る舞うことを言います。

【参考】傾聴|厚生労働省

 

 

例えば相談者(クライエント)が怒りの感情を表出したときは「あたかも怒っているかのように」感じ、困惑の様子を示していれば「あたかも困惑しているかのように」感じ取ります。“あたかも”なので、実際にはそうではないのですが、クライエントと同じ気持ちであるという状態で心理療法を行います。カウンセラーがクライエントに対し、あなたの感情を理解していると伝えることによって、クライエントが自己理解を深める手助けになるとも考えられています。

 

ロジャーズはまた、集団の共感性を高める実践の1つとしてエンカウンターグループという集団心理療法の開発もしました。用意された課題に沿って進める構成的(グループ)エンカウンターと、課題などが設定されていない非構成的(ベーシック)エンカウンターがあり、前者はリーダーから提示された課題をグループで実践し、その後それぞれが感じたことを表現し合うもので、後者は参加者が感じたことなどを本音で話し合い、進行役のスタッフにより進められるという流れです。

 

どちらも参加者同士が言葉や感情の交流を通してお互いの理解を深め、個人の成長を高め合ったり対人関係の改善につなげたりすることを目的としています。主に数日間かけて実施されることが多いエンカウンターグループは、人間関係能力の向上のため、会社の新人研修や心理学を専攻する学生たちが学ぶ場として利用されることもあります。

 

心理学における共感の2つの種類


心理学(のとあるジャンル)においては、共感は2つに分類され、1つを情動的共感性、もう1つを認知的共感性と言います。情動的共感性は、相手の情動や感情を自分の情動や感情をして写し取ること、つまり相手が悲しんでいれば自分まで悲しくなってしまうことを指します。認知的共感性は、相手の情動や感情を写し取ることなく相手が悲しんでいると理解するプロセスのことを指します。

 

 

今回、これ以上の詳細については触れませんが、この2つは優劣がつくものではなくどちらも重要で、それぞれが補い合いながら共感という感覚を担っているのです。

 

共感の危険性あれこれ…


ここまで共感は大事だという話をしてきましたが、共感に基づく判断はむしろ危険で、社会の中で様々な問題を悪化させると主張した人もいます。ブルームという心理学者は、特に情動的共感性は近くの人や似ている人に生じやすく、敵対関係にある人に対しては攻撃的な行動を引き起こすことがあるなどの理由から、共感に基づく判断は危険であると言っています。しかしながら、同時に認知的共感性には社会的に重要な意義があるとも主張しており、苦しんでいる人や悲しんでいる人のその苦しみや悲しみを感じ取ることではなく、その苦痛や悲嘆を解消するためにできることを考えることができるのは強みであると言っています。

 

他にも、共感が苦手な例として、発達障害の1つである自閉スペクトラム症児・者には他者の気持ちや心の状態を推測する能力の獲得が難しい・遅いという研究があります。自閉スペクトラム症児・者は、自分と他者の考え方や物の見方が違う可能性があるということを理解するのが苦手な特徴をもっています。そのため、自分の知っている範疇を越える内容になると、柔軟にその人の気持ちに寄り添うことは難しく、相手が期待するような反応ができないこともしばしばあるのです。

参考】

ニューロダイバーシティ『人間のゲノムの自然で正常な変異』とは?

【精神科医師が解説】アスペルガー症候群とは何でしょう?

 

『共感は大事』と思考停止してしまうことで、生まれつき共感が苦手な方々を知らずのうちに排他してしまうかもしれません。共感の必要性を声高に叫ぶことは、共感的でなくなる危険性を孕むわけです。『過ぎたるは猶及ばざるが如し』は共感においても大切な発想ですね。

 

個人個人によって得意不得意はありますが、共感する力が高い人々は他者に対する興味関心が強く、相手の話をさえぎらずに最後まで聞き、否定せずに受け入れる傾向が強いという研究もあるようなので、参考にしてみるのも良いかもしれません。ほどよく共感できる力を身につけ、円滑な社会生活、人間関係につなげられたら良いですね。

 

【解説】

ふ~みん(公認心理師)

余談ですが、今や子供用品、観光地のお土産屋さん、広告など様々な場面で目にするキティちゃん。近頃は子どもだけでなく大人にも癒し効果をもたらすとひそかに注目されているぬいぐるみセラピーにもおすすめのキャラクターです。

ふ~みん記事一覧

 

【監修】

本山真(精神科医師/精神保健指定医/産業医/医療法人ラック理事長)

2002年東京大学医学部医学科卒業。2008年埼玉県さいたま市に宮原メンタルクリニック開院。2016年医療法人ラック設立、2018年には2院目となる綾瀬メンタルクリニックを開院。株式会社サポートメンタルヘルス代表取締役社長として、中小企業のハラスメント対策サービス(ハラスメント・コンサルティング・デスク)をリリース。ご興味がございましたらお問い合わせください。

 

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