通勤時間1時間半の場所に家を建てるメリット・デメリットは?事前にチェックすべきポイントも解説

最終更新日 2024年01月18日
通勤時間1時間半の場所に家を建てるメリット・デメリットは?事前にチェックすべきポイントも解説

「マイホームは一戸建てがいい」と考えたときに、予算の都合などにより都市部にある勤務先から離れた場所が候補となる人もいるでしょう。検討している土地が通勤に1時間半かかる場所にある場合、そこに家を建てるメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか? この記事では、通勤時間1時間半の場所に家を建てるときに考えておきたいことを、SIRE代表取締役の木津雄二さんに伺い解説します。

通勤時間はどれくらい? 1時間半かけている人の割合は?

そもそも通勤時間はどれくらいなのか、また実際に持ち家から1時間半かけて通勤している人の割合とあわせて確認しましょう。

片道の通勤時間は?

総務省が発表した平成30年(2018年)の「住宅・土地統計調査」によると、片道の通勤時間(中央値)は以下のとおりです。
通勤時間1時間半は、全国平均から見ると約3倍、関東大都市圏であっても約2倍の長さであるとわかります。

エリア 片道の通勤時間(中央値) 1時間30分~2時間通勤シェア
全国 28.1分 2.9%
関東大都市圏
(中心市:さいたま市、千葉市、東京都特別区部、横浜市、川崎市、相模原市)
45.5分 6.0%
中京大都市圏
(中心市:名古屋市)
28.1分 1.7%
近畿大都市圏
(中心市:京都市、大阪市、堺市、神戸市)
35.5分 3.4%
※大都市圏は、中心市およびこれに社会・経済的に結合している周辺市町村で構成されています。
関東大都市圏、近畿大都市圏に住んでいる人は全国平均よりも通勤時間が長い。(図表/平成30年住宅・土地統計調査を元に編集部が作成)

持ち家がある人で通勤時間1時間半の人の割合は?

上の表にあるように、持ち家(一戸建て)がある人で片道の通勤時間1時間半~2時間の人の割合は、全国では100人中3人程度、関東大都市圏では100人中6人程度であることがわかります。

通勤時間1時間半はきつい?つらい?

通勤時間1時間半は、全国の通勤時間(中央値)の約3倍にもなりますが、実際きつかったり、つらいと感じたりするものなのでしょうか?

通勤手段による違い

同じ「通勤時間1時間半」でも、電車なのか車なのかによってきつさは異なります。

電車通勤の場合

「電車通勤の場合、駅から家や勤務先までの距離や乗り換えの多さによって負担感は違うと思います。例えば家から駅まで徒歩5分、駅から勤務先まで徒歩5分の場合、電車に乗っている時間は1時間20分と長くなります。駅から勤務先や家までそれぞれ徒歩15分かかる人よりも、きついと感じる人は少なそうです。

また乗車するのが始発駅で、下車する駅まで乗り換えなく座っていければ楽ですが、乗車時間は1時間だけれども乗り換えが2回あり、しかも満員電車で座れないとなると、通勤はつらいものとなるでしょう」(木津さん/以下同)

通勤の負担感の違い
1時間半の通勤がきついかどうかは駅からの距離や乗り換え回数、座れるかなどによる(イラスト/杉崎アチャ)

マイカー通勤の場合

「マイカー通勤の場合は、住んでいる場所や勤務先が大都市なのか地方都市なのかによって負担感は違います。大都市であれば信号が多く、通勤時間帯は渋滞もあり運転に神経を使います。地方都市であれば信号も渋滞もあまりないので、運転そのもののストレスは少なくてすみそうです。

いずれにしても、マイカー通勤はただ乗っているだけの電車と違い、自分で運転する集中力が必要になります。毎日片道1時間半をマイカー通勤するのは、かなりきついと思います」

就業体系による違い

通勤時間1時間半は、就業体系によってもきつさは違います。例えばパートで自分が家を出られる時間と帰宅時間をコントロールできるなら、通勤時間に対する負担感は小さいかもしれません。対して9時~18時のフルタイムの場合、毎朝7時半に家を出て、定時に上がったとしても帰宅は19時半になり、1日の半分は家にいないことになります。残業があると帰宅時間はもっと遅くなり、きついと感じることが多くなりそうです。

「ただしフルタイム勤務であってもリモートワークが中心で、通勤するのは週に1~2日だけというのであれば、通勤に1時間半かかっても、負担に感じない人は多いでしょう」

通勤時間1時間半の場所に家を建てるメリットは?

希望の広さの土地・家を建てやすい

「通勤時間1時間半となると郊外になるケースが多いため、都市部に比べて土地の坪単価が低くなるのが一般的です。そのため同じ予算で考えた場合、都市部では難しくても、通勤時間1時間半の場所では希望する広さの土地や家を建てられる可能性が高くなります」

都心部と郊外で同じ予算で建てられる家の違い
同じ予算でも都心から離れた場所なら広い土地に希望の家を建てやすくなる(イラスト/杉崎アチャ)

駅近に住める可能性がある

「例えば東京だと駅の近くはマンションが立ち並んでいるケースが多く、そもそも宅地が売りに出ていないことが多いです。あったとしても高額であるため手が出ずに、一戸建ての場合は駅から遠い場所しか選べない場合も少なくないでしょう。その点通勤時間1時間半かかるような郊外なら、駅前に住宅地が広がり、徒歩5分圏内に一戸建てを建てられることもあります」

のびのびとした子育てができる

「通勤時間1時間半かかるような郊外は、子育て環境がいいこともメリットだと思います。例えば都会であれば整備された公園に行くためだけに電車に乗らなければならないこともありますが、郊外なら公園はもちろん海や山が近いなど、自然に囲まれてのびのびと子育てを楽しめます」

趣味を楽しむ暮らしができる

「釣りやサーフィンが好きだから海の近くに住みたい、毎週キャンプを楽しみたいなど、都会では難しい趣味を楽しむ暮らしをしたい人もいるでしょう。そういった人は、通勤時間1時間半かかることよりも、自分がしたい暮らしができることにメリットを感じるのだと思います」

おしゃれなキャンプの写真
通勤1時間半かかるような場所だと海や山が近く多彩な趣味を楽しめる(画像/PIXTA)

親を近くに呼び寄せやすい

「『高齢の親が心配で、できれば近くで一緒に暮らしたい』といったときも、通勤1時間半かかるような郊外であれば呼び寄せやすいのではないかと思います。都心であれば近くに賃貸を借りようと思っても高額で二の足を踏むかもしれませんが、郊外であれば賃貸も安く、また二世帯住宅を建てる、同じ敷地内に『はなれ』を建てるといった選択もできそうです」

通勤時間1時間半の場所に家を建てるデメリットは?

家族と過ごす時間が短くなる

通勤時間の片道1時間半は往復で考えると3時間でそれだけ家族と過ごす時間は短くなります。通勤時間片道30分、往復1時間しかかからない人と比べると、家で家族と過ごす時間は1日で2時間、月の出勤日数を20日で計算すると1カ月で40時間も短くなってしまいます。

働ける時間が短くなる

「家にいる時間が短くなることを避けようとすると、今度は働く時間が短くなります。例えばパートで働くとして、朝10時から17時までの7時間を通勤と仕事に充てるとした場合、通勤に往復3時間かけるなら働ける時間は4時間しかありません。しかし通勤に往復30分しかかからない家の近所なら、6時間半働けるので収入増にもつながります」

通勤時間と家族との時間、労働時間との関係
往復3時間の通勤時間は、家族との時間・働く時間のどちらかを削ることになる(イラスト/杉崎アチャ)

利便性が悪くなり車が必要になる

「都市部と比較すると、郊外は商業施設や医療施設が少ないことが多く、利便性は悪くなる傾向があります。また郊外では、ショッピングモールや家電量販店など大きな商業施設は市街地から離れた国道沿いなどに建てられることが多いのも特徴です。そのため快適に暮らそうとすると車が必要になる可能性が高くなり、結果的に維持費がかかることはデメリットです」

フルタイムの共働きだと子育てとの両立が難しい場合も

ワーパパ、ワーママ(ワーキングパパ、ワーキングマザーの略)などフルタイムで働いている夫婦の両方が通勤時間1時間半の場所で働いているとすると、子育てとの両立は難しくなる場合があります。
とくに女性は妊娠中に1時間半も通勤するのは負担です。

「また子どもが熱を出したなどで保育園から呼び出しがあっても、すぐに駆けつけることも困難です。小さな子どもがいるご家庭は、実家が近いなどサポートしてくれる人がいなければ、少し厳しいかもしれません」

災害時に家に帰れない可能性がある

「大きな地震や台風の襲来、大雪が降ったときなどには、交通機関がストップすることがあります。そのようなとき勤務先から近い場所に家があれば、タクシーをつかまえたり、なんとか歩いて帰ったりすることもできるでしょう。しかし通勤に1時間半もかかる場所まで歩いて帰るのは、かなり難しいと考えられます」

東京だと通勤時間1時間半の場所はどのあたり?

東京だと、片道の通勤時間1時間半はどのあたりになるのでしょうか? 駅から勤務先、家までかかる時間をそれぞれ10分と想定し、乗車時間1時間10分(70分)程度の場所にある駅を、以下の条件で調べてみました。

  • 勤務先の最寄駅は、上りの終着駅とする
  • 乗り換えはないものとする
  • 2024年1月現在
路線(下りの始発駅) 列車の種類 駅名(所在地・所要時間)
東武東上線(池袋駅) 急行 小川町駅(埼玉県比企郡小川町・70分)
西武池袋線(池袋駅) 特急 横瀬駅(埼玉県秩父郡横瀬町・74分)
小田急小田原線(新宿駅) 快速急行 渋沢駅(神奈川県秦野市・68分)
JR東海道本線(東京駅) 特急 小田原駅(神奈川県小田原市・70分)
JR横須賀線(東京駅) 普通 横須賀駅(神奈川県横須賀市・74分)
JR総武本線(東京駅) 快速 成田駅(千葉県成田市・72分)
JR中央線(東京駅) 快速 高尾駅(東京都八王子市・69分)

通勤時間1時間半の場所を検討するときにチェックすべきポイントは?

実家が近い、その土地でどうしてもやりたいことがあるなど、通勤1時間半の場所に一戸建てを検討するとき、チェックしておくべきポイントを伺いました。

今後のライフプラン

「通勤時間1時間半の場所に家を建てるときには、これから自分たちの暮らしがどうなっていくのか、どうしたいのかをよく考えることが大切です。例えば『基本はテレワークで通勤は週1回だから』と思っていても、勤務先の方針でテレワークがなくなる可能性もあります。」

「ほかには子どもにどのような教育を受けさせたいのか、また両親が年老いてきたときにはどう対応するのかなども、きちんと考えておく必要があるでしょう」

ライフプランを考える夫婦
通勤時間1時間半の場所を検討するときにはこれからのライフプランもよく考えよう(イラスト/杉崎アチャ)

地域の今後の成長見通し

家を購入する市区町村が、今後成長していくのか衰退していくのかも確認しておくと安心です。例えば人口が増加傾向で、とくに若い世代の流入が多いようなエリアは、今後発展していくと考えられます。反対に人口が減少していて今後過疎化が進んでいくと思われる地域は、家の資産価値が下がったり、いざ売却したくなってもなかなか売れなかったりすることも考えられます。

自治体の子育て支援

「子育て支援制度は自治体によって大きく違うので、必ず確認していただきたいです。基本的に都市部のベッドタウンと呼ばれるような自治体は、とくに若い世代を呼び込むため、子育て支援を充実させて差別化を図ろうとしているケースが少なくありません。選ぶ駅によって自治体が変わるような場合には、ホームページなどで比較するとよいでしょう」

福祉施設や医療施設の充実度

家を建てるときには「終の住処(すみか)」と考える人も多いでしょう。そのような場合、福祉施設や医療施設の充実度も重要になります。介護施設の数や、総合病院、専門病院は近くにあるのかなどを調べておくと安心です。

通勤手当の支給限度額

「通勤手当に上限を設けないような大企業なら、新幹線通勤もできるでしょう。しかし多くの企業では支給限度額が決められています。支給限度額を超えた分は自己負担となるので、勤めている勤務先の支給限度額がいくらなのか、土地の購入を考えている場所が支給限度額の範囲内にあるのかは確認が必要です」

通勤1時間半かけてもそこに住みたいかどうかで決めよう

最後にあらためて木津さんに、通勤時間1時間半の場所に家を建てるときのポイントを伺いました。

「実際に通勤時間1時間半の場所に家を建てようかと考える人は、その土地に親が住んでいる、そこでやりたいことがあるなどなんらかの『地縁』があるケースがほとんどだと思います。単に『土地が安いから』といった消極的な理由で選ぶのではなく、通勤に1時間半かかってもそこに住みたいと思えるかどうかで決めればよいでしょう。その際『今』だけでなく、10年、20年先の自分たちの暮らしも想像することが何よりも大切だと思います」

まとめ

首都圏では100人中6人程度が通勤時間1時間半の場所に持ち家(一戸建て)がある

1時間半の通勤時間がきついかどうかは、駅からの距離や乗り換え回数などによって変わる

通勤に1時間半かけてでもそこに住みたいかどうかを考えよう

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/杉崎アチャ
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