マンションを賃貸に出す流れやかかる費用・住宅ローンはどうなる?税金やリフォーム費用 メリット・デメリットも紹介

最終更新日 2023年03月28日
マンションを賃貸に出す流れやかかる費用・住宅ローンはどうなる?税金やリフォーム費用 メリット・デメリットも紹介

転勤のためや、家賃収入のためなどさまざまな事情で、分譲マンションを賃貸に出すことがあります。分譲マンションを貸す流れや、必要になる費用や税金・リフォーム費用、住宅ローンはどうなるのかなど、メリット・デメリットを、賃貸や不動産業務に詳しい大丸 賃貸営業部課長の野口さんと賃貸営業部支店長の川上さんに伺いました。

分譲マンションを賃貸に出すには?手順・費用を紹介

(1)入居者との契約を仲介してくれる不動産会社を探す

分譲マンションを賃貸に出したい場合、まずは入居者を仲介してくれる不動産会社を探すことから始めます。貸したい物件の状態や貸したい期間などの条件を不動産会社に相談し、ざっくりとした査定金額を教えてもらうことができます。
まずは物件の近くの不動産会社をインターネットで検索したり、何軒か足を運び信頼できそうな会社を探しましょう。入居者の募集に関しては、一つの不動産会社に絞る必要はありません。

「不動産会社に入居者募集の相談をしに行くのなら、物件の近くの不動産会社を選ぶのがおすすめ。物件をすぐに見に来てくれますし、地域の家賃事情にも詳しいです。入居者の募集に関しては、基本的にほとんどの不動産会社が引き受けてくれますので、いくつかの不動産会社に相談して決めるのが良いでしょう。

また、住んでいるマンションの管理会社のグループ会社が賃貸の入居者募集をやっている場合は、管理会社に相談する方法もあります」(野口さん)

(2)家賃、賃貸に出す期間、リフォームの有無、賃貸契約の種類などを決める

入居者募集の条件を確定する

不動産会社を決めたら、下にあるような入居者募集の条件を確定させます。
どのような条件なら入居者が集まりそうか、不動産会社と相談しながら決めていきましょう。

<入居者募集前に決めること>
・家賃、管理費(共益費)
・敷金・礼金
・賃貸に出す期間
・リフォームの有無
・入居者の条件(ファミリー向けなど)
・保証会社をどこにするか
・管理を管理会社に委託するか、自分で管理するか

「入居者が集まりやすいように、リフォームの内容は不動産会社と相談するのがおすすめです。入居者の募集とリフォームは同時進行することが多く、入居までに完了していれば大丈夫です。ただ、やはりリフォームが完了した状態で内見できる方が決まりやすいと思います」(野口さん)

壁紙の張り替えにかかる費用の目安
・キッチン 4~7万円
・トイレ 3~6万円・6畳 5~6万円
・8畳 6~7万円
・10畳 7~8万円
張り替えるクロスや、施工する場所の状態によって費用は変わります。

賃貸借契約の種類を決める

さらに、賃貸借契約はどの方法にするのかを決めます。
賃貸借契約には、以下の3つの種類があります。

・普通借家契約
・定期借家契約
・サブリース

転勤などで分譲マンションを一定期間だけ賃貸に出す場合は、期限付きの契約である「定期借家契約」を選ぶことになります。

「定期借家契約」は簡単にいうと、契約期間が満了したら入居者は必ず物件から退去しなければならない契約です。貸主が転勤などから戻ってきたときに、借主が「物件が気に入ったので契約更新をしてあと2年住みたい」と言っても、貸主はそれを断ることができます。

管理方法について決める

また、物件の管理方法についても決めます。マンションの管理方法は次の2つです。

・管理を管理会社に委託する
・自分で管理する

マンションを貸し出している間に、エアコンなどの設備が壊れたり、水漏れが発生したりするかもしれません。こういった住戸の管理を、管理会社に依頼するか、自分で対応するか選びます。

転勤などの理由で分譲マンションを賃貸に出す場合だと、管理会社に委託せず、自分で管理をするオーナーさんが多いです。管理の内容としては設備の修繕が多く、次いで漏水や騒音の相談があります。マンションの管理というと難しく感じるかもしれませんが、仲介した不動産会社が相談に乗ってくれると思います」(川上さん)

「管理会社に委託するのがおすすめなのは、海外転勤など、マンション管理が難しい状況になるならば管理会社に委託するのがおすすめです。自分で管理しようとするとどうしてもトラブル対応が遅くなりますし、オーナーが海外に居ることで入居をためらう方もいらっしゃいます。法人契約では、海外オーナーNGのケースも多々あります」(野口さん)

海外転勤しているマンションのオーナー
海外転勤だと、マンションで起きたトラブルに速やかに対応するのが難しい

(3)入居者を探す

いよいよ入居者を募集します。不動産会社がチラシやネット広告などで募集活動をしてくれるので、貸主がこの期間にやることは特にありません。

入居の候補者が現れたら、その方の条件を審査し、マンションを貸すかどうか決めます。
入居審査では、就業先や年収(収入の流れ)、人柄などをチェックします。また、保証会社の審査もこのタイミングで行われます。

(4)賃貸借契約を締結する

入居者(借主)が決定したら、賃貸借契約を締結します。
借主が入居する前に、引越しの準備をし、電気・ガス・水道やインターネットなど、個人契約したものを解約しておきましょう。普通の賃貸物件から退去するときと同じです。

(5)敷金・礼金、初月の家賃が振り込まれる

賃貸借契約の締結から入居までの間に、敷金・礼金と初月の家賃や管理費(共益費)が振り込まれます。基本的には保証会社から振り込まれますが、プランによっては入居者から直接振り込まれることもあります。ここから、貸主としての収入がスタートです。

■かかる費用:なし
■収入:敷金・礼金、初月の家賃、管理費(共益費)

(6)借主が部屋に入居する

借主が入居します。基本的には保証会社から毎月家賃や管理費(共益費)が振り込まれます。マンションの管理を管理会社に委託する場合、管理委託費の支払いもスタートします。

借主が暮らしている間に、エアコンや給湯器などの設備が経年劣化で壊れてしまうかもしれません。借主の過失でなければ、貸主が修繕費を支払う必要があります。頻度は低いですが、キッチンやお風呂が故障する可能性も0ではありません。設備の数や値段にもよりますが、急な故障に備えて100万円程度の修繕費を確保しておくと安心です。

■かかる費用:毎月の管理委託費(委託する場合)、修繕費など(設備の修繕が必要になった場合)
■収入:毎月の家賃・管理費(共益費)

設備の修繕費が発生してしまったオーナー
無事入居者が決まって、あとは毎月家賃収入を受け取るだけ……ではなく、入居後も設備の修繕などで出費が発生することがある

分譲マンションを賃貸に出すメリット

メリット1:物件を資産として持ち続けられる

転勤などを理由に購入した分譲マンションから離れなければならない場合、マンションを売却するか、賃貸に出すか、空き家にしておくしかありません。売却するとまとまったお金が手に入りますが、せっかく気に入って購入したマンションの所有権を手放すことになります。

住めない期間は賃貸に出しておけば、マンションを資産として持ち続けることができます。

メリット2:家賃収入を得られる

定期的な家賃収入はありがたいもの。管理の手間はありますが、不労所得といえます。家賃の振り込みは、借主から直接ではなく、保証会社を通して行われることが多いです。万が一借主が家賃を滞納しても、保証会社が補償してくれるので安心です。

また、人が住むことで換気や温度調節などが行われ、物件が傷みにくくなるといったメリットもあります。

メリット3:ローン金利、固定資産税、管理費など物件の維持管理にかかる費用を経費計上できる

家賃収入は不動産所得となります。不動産所得を得るためにかかった費用は経費として計上できます。例えば、ローンの金利、固定資産税、管理費、リフォームや修理にかかった費用などです。

税金は、収入から経費を抜いた金額(所得)に対してかかるため、これらが経費として計上できると節税になります。

分譲マンションを賃貸に出す人
「ずっと住みたい」と気に入って購入したマンションなら、数年の留守のために手放してしまってはもったいない。賃貸に出せば、家賃収入を得ながら所有権を持ち続けられる

分譲マンションを賃貸に出すデメリット

デメリット1:ローンの借り換えが必要になり、住宅ローン控除の対象から外れる

住宅ローンは、マイホームを購入するために組むローンです。原則として、購入者やその家族が住むための住居や土地の購入費用に充てることになっています。

住宅ローンを借りている人は、年末調整や確定申告によってローン残高の一定割合が所得税(※)から還付(個人事業主の場合は控除)されます。これが「住宅ローン控除」で、住宅ローンを組む大きなメリットとなっています。
※所得税から控除しきれない場合、翌年度の住民税から税金が控除される

住宅ローンで購入した分譲マンションを賃貸に出すならと購入者やその家族が住むための住居」ではなくなってしまうので、不動産投資用のローンに借り換えをしなければなりません。

自分の住む家を購入するための住宅ローンは、国民の生活の基盤となるため、多くの人が借りやすいように金利は低めに設定されています。一方、賃貸に出すための住宅や投資用の住宅のために借りる不動産投資用のローンは、事業用ローンの一つであり、金利は高めに設定されています。ローンを借り換えすることで、金利が高くなったり、住宅ローン控除が受けられなくなったりします。

住宅ローンの契約に違反してこっそり賃貸に出すと、ローンの一括返済を求められるなどのペナルティーがあります。

デメリット2:設備の修繕や、トラブル対応をしなければならない

住戸の設備が壊れてしまった場合や、騒音などのトラブルが発生した場合、速やかに対応をしなければなりません。管理を委託していれば、管理会社が対応してくれます。

デメリット3:空き家になるリスクがある

入居者の募集を行ったからといって、必ず借主が見つかるとは限りません。

「基本的に更新して住み続けられる普通借家契約と違い、期限がある定期借家契約は、入居者を見つける難易度が高くなります。立地や間取りが似ている物件よりも、家賃を下げるなどの譲歩が必要なことも。

入居者探しに時間がかかると、その間にもどんどん賃貸に出せる期間が短くなってしまいます。家賃の設定は不動産業者と相談し、『空き家にしておくよりは少しでも家賃収入が得られる方がお得』と考えるのがおすすめです」(野口さん)

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賃貸に出したマンションが空き家状態の人
賃貸に出したけれど入居者が見つからないこともある。期限付きで貸し出す場合、賃貸期間が短いほど人気が下がる

賃貸に出すのに向いている分譲マンションの特徴

分譲マンションを購入するときに「転勤が多いからいつか賃貸に出すかもしれない」と想定し、できるだけ賃貸のニーズも高そうな物件を探す方も多いです。どのような分譲マンションが賃貸に向いているのでしょうか。

「一般的なところだと、
立地が良いか
宅配ボックスやオートロックなど人気の設備がついているか
内装・外装が綺麗か どうかがポイントになります。

『分譲マンションを期間限定で賃貸に出す』という条件で考えると、単身者向けの住戸の方が圧倒的に借り手を見つけやすいです。ファミリー向けの住宅で2~3年の期限がついていると、お子さんの通学の都合などを考えて避けられてしまうからです。こういった場合は家賃を低めに設定して、広々した部屋に住みたい単身者を探したりします。

賃貸に出すことを想定しているのなら、造作家具(オーダーメイドの取り付け家具)やリフォームは、万人受けするものをおすすめします。良かれと思って多額のお金をかけてリフォームしても、好みの分かれるものだったり、リフォーム費用を回収しようと家賃を高くしてしまっては、借り手が見つかりにくいです。賃貸に出したとき人気が出るようなリフォームをしたいのなら、不動産会社が内容の相談に乗ってくれます」(野口さん)

自分の分譲マンションは、貸すか売るかどっちが向いてる?

一旦空けることになる分譲マンション、賃貸に出すか、思い切って売ってしまうか、どちらが良いかは不動産会社に相談してみましょう。賃貸に出す場合の査定額、売却した場合の査定額も出してもらえます。

地域によって賃貸のニーズ、中古マンション購入のニーズは異なりますから、地域の不動産会社を複数まわって相談してみてください。

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ファミリー向けマンションに入居したい単身者
期限付き賃貸はファミリー人気が低く、単身者向けの広さの方が入居者が決まりやすい。とはいえ、ファミリー向けの広々したマンションに一人で住みたい単身者もいる

分譲マンションを賃貸に出すときのよくある税金の疑問

分譲マンションを賃貸に出すと、税金はどう変わる?

分譲マンションを賃貸に出して得た収入(家賃、管理費、礼金など)は、「不動産所得」になります。不動産所得がある場合、確定申告をして収入や経費を申告しなければなりません。

所得が増えるのは嬉しいことですが、その分税金の金額も増える可能性があります。

所得税は、所得(収入-経費)に税率をかけて算出されます。超過累進課税が採用されており、所得が上がるほど税率は高くなります。また、住民税の所得割は課税所得に税率10%をかけて算出するため、所得が上がれば税金も増えていきます。

分譲マンションを賃貸に出すときの節税方法は?

家賃収入などの不動産所得を得たら、その分税金がかかります。できるだけ節税するにはどのような方法があるのでしょうか。

経費の計上

一つめに、経費を漏れなく計上します。所得税(※)や住民税は所得が多ければ多いほど高くなります。所得とは、売上から経費を引いたもの。経費を漏れなく計上することで、所得が低く抑えられ、節税することができます。
※復興特別所得税は所得税額の2.1%かかる

ただし、経費として計上できるのは不動産収入を得るために使った費用のみです。プライベートな支出を経費計上すると、追徴課税などの対象になります。

不動産所得の経費として計上できるもの

【初期費用】
・リフォーム代
・クリーニング代
・不動産会社への成功報酬
・不動産会社との打ち合わせにかかった交通費 など

【維持管理費用】
・ローンの利子
・火災保険などの保険料
・固定資産税
・減価償却費
・設備の修繕費
・管理委託費
・税理士報酬
・水道光熱費 など

確定申告(青色申告)を行う

二つめに、確定申告を青色申告で行う方法があります。確定申告には白色申告と青色申告があります。申告方法によって、記帳の方法や受けられる特別控除の金額が違い、特に事前の手続が要らない白色申告では特別控除を受けられませんが、青色申告であれば受けられるからです。

青色申告をすることで受けられる特別控除とは、不動産の所得から差し引ける控除のことで、10万円から最高65万円を差し引けます。

例えば年間240万円の不動産収入(売上)があり、経費が50万円、青色申告特別控除が10万円だった場合

売上 – 経費 – 青色申告特別控除 = 不動産所得
240万円 – 50万円 – 10万円 = 180万円

となります。不動産所得に他の所得を加えた所得金額から、個々の環境に応じた所得控除を差し引き、税金がかかる「課税所得金額」が算出されます。

白色申告では、事前申請の必要がなく、簡易簿記という簡単な方法の記帳でOKですが、特別控除を受けることはできません。青色申告は、その年の3月15日まで(1月16日以後に新規に業務を開始した場合は、業務を開始した日から2か月以内)に、「所得税の青色申告承認申請書」と「開業届」を所管の税務署に提出する必要があり、記帳の方法も指定されています。

白色申告とは違い手続きが必要となりますが、10万円か55万円(電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行う場合は65万円)の特別控除を受けることができ節税につながります。

ただし、自分が住んでいた分譲マンション1室を賃貸に出す場合は、青色申告の中でも控除が10万円のものになります。65万円の控除を受けるには、アパートなら10室以上、貸家なら5棟以上を運用していることが条件です。

また、青色申告の場合、赤字を3年間繰り越せることなど、特別控除以外にもメリットがあります。

白色申告
控除なし。事前の申請は不要。簡易(単式)簿記で記帳を行う。

青色申告(控除10万円)
控除10万円。事前の申請が必要。簡易(単式)簿記で記帳を行う。
不動産所得を申請する場合マンション1室から認められる。

青色申告(控除55万円(電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行う場合は65万円))
控除55万円(電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行う場合は65万円)。事前の申請が必要。複式簿記で記帳を行う。
不動産所得を申請する場合アパートは10室以上、貸家は5棟以上で認められる。

分譲マンションを賃貸に出したいと思ったら、まずは地域の不動産会社を訪問します。そもそも賃貸に出すのが良いか売るのが良いか、家賃はどのくらいになるか、リフォームが必要そうかなどは、地域のニーズや相場に詳しい不動産会社に相談して決めましょう。

まとめ

分譲マンションを賃貸に出すなら、まずは地域の不動産会社に相談

分譲マンションを期限付きで賃貸に出す場合、単身者向けの広さの方がニーズは高い

賃貸に出せば所有権をもったまま家賃収入を得られるが、空き家になるリスクもあるほか、設備などの管理、ローン切り替え、確定申告などの手間も発生する

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