ライフスタイルの変化に伴い、使わなくなったり、使い勝手が悪いと感じている和室はありませんか。赤ちゃんのお世話スペースや安全な遊び場として重宝した畳も、子どもの学習机を置いたり、ベッドを置いたりといったライフスタイルでは、使いづらい空間になりがちです。限られた空間を使わず放置するのはもったいない!思い切って洋室にリフォームしてみませんか。和室リフォームのポイントや費用について、「スタイル工房」のチーフプランナー、渡辺さんに話を伺いました。
和室は、洋室に比べて床の断熱性や防音性が高く、直接床に座ったり寝転んだりできる空間です。子どもが小さいうちは床を広く使って遊ぶことが多く、簡易な家具を必要に応じて出したり仕舞ったりしながら空間をフレキシブルに使える和室は重宝します。
一方、洋室は、重量による凹みを気にせず床に家具が置けます。子どもが成長し、学習机やベッドといった家具を固定した生活スタイルが必要になると、床がフローリングの洋室のほうが畳の和室よりも使い勝手が良いでしょう。洋室は模様替えがラクなので、使わなくなった子ども部屋を書斎や寝室にするなど、ライフステージの変化に合わせた用途変更にも対応しやすくなります。
そのため、役割のなくなった和室をそのままにするよりも、洋室にリフォームしたほうが、活きた空間になります。
ほかにも、洋室には「掃除が簡単でダニやカビの発生を抑えやすい」「畳や障子などがないため定期的なメンテナンスが必要ない」といった扱いやすさのメリットもあります。掃除やメンテナンスがラクな分、忙しい人に向いているとも言えます。
「和室、洋室それぞれに良いところはありますが、特に若い方からのご相談では、『あまり和室になじみがないので、どんなふうに使っていいかわからない』といった声が多くあります。和室を洋室にするリフォームはとても一般的ですから、ライフスタイルに合わせて、早めに使い勝手のいい空間づくりをしたいところです」(渡辺さん、以下同)
まずは和室と洋室のつくりの違いを知り、どんな工事が必要なのか把握しましょう。工事の範囲や選ぶ素材により費用は違いますが、目安を知っておくと検討しやすいと思います。
和室から洋室にリフォームする際、大きく分けて4つのパートがあります。
(1) 床
(2) 壁・天井
(3) 収納
(4) 建具
ほかに、照明、障子やカーテンレールなどの窓まわりの処理が発生します。予算に合わせ、一部または全部をリフォームして洋室にします。
では、(1)~(4)の部位別に、どのような工事をするのか紹介していきましょう。
※出典/ホームプロ
床は一番大がかりな工事となる部位です。一戸建てとマンションでは工事の内容が大きく異なります。
在来木造の一戸建ての場合は、下地からやり直す必要がある場合が多く、単に畳とフローリング材を張り替えるだけとはいきません。「畳の下には根太(ねだ)という支えがあるのですが、その根太の間隔が畳とフローリングの床では異なります。畳の場合の間隔は455mm、フローリング材の場合は303mm。素材に厚みのある畳のほうが強度が確保できるため、根太のピッチが広くなります」
また、厚みが4~6cmある畳に対し、フローリング材の厚みは1.2cm程度なので、張り替える場合は周りの部屋や建具との高さ調整が必要となります。築年数が古い建物の和室は、周りの部屋より床が4~5cm高かったり、敷居に高さがあったりしてバリアフリーになっていないことが多いため、併せて段差も解消していきます。なお、マンションでも床下地組がある場合などは、一戸建てと同様の工事が必要となります。
マンションはコンクリートの構造に直接畳が乗っている場合も多く、一戸建てほどの大がかりな工事にならないこともあります。ただし、畳よりフローリング材のほうが音を下に伝えやすいため、その対策が必要となります。マンションの場合は使用するフローリング材の遮音等級が指定されていることが多く、管理規約を確認して遮音性の高いフローリング材を選んだり、防音下地を入れたりする必要があります。なお、費用については、必要な工事によるため一戸建ての床工事と同程度と考えておくのが良いでしょう。
工期や費用の目安について紹介すると、
なお、床の張り替えのついでに、断熱材を入れて寒さ対策をしたいと考える人もいるでしょう。
床に断熱材を入れて効果が出るのは、主に3つの場合。
一戸建てで2階以上にある部屋やマンションの場合は、断熱についてはあまり考えなくても大丈夫です。
気密・断熱性は、家全体で考えないと意味がないため、床の工事とセットで考えるというよりは、プロに「寒い」という不満を伝えて対策を提案してもらうのがオススメです。
和室は、柱や鴨居、長押が見える真壁(しんかべ)が一般的。洋室は、柱などが見えない大壁(おおかべ)が一般的です。
和室であってもクロス張りの大壁のことが多く、そのまま、もしくは簡単な張り替えで洋室として使えることがほとんど。和室らしい鴨居風の装飾などは、簡単に外せます。大壁の単純な張り替えの場合は数万円程度からリフォームが可能です。
ガラリと部屋の雰囲気を変えるなら大壁に。もとが聚楽壁(じゅらくかべ)など左官仕上げの壁も、クロス張りにリフォームすることは可能です。もしリフォーム費用を抑えるなら、真壁のまま洋風に仕上げていくのもひとつの方法。レトロモダンな雰囲気を楽しめます。なお、真壁を大壁にする場合、柱が隠れるようボード※を張って調整するので、少し部屋が狭くなります。大壁にする際には、ついでに電気工事を入れて、コンセントやスイッチなどを増やしたり移動したりして部屋の使い勝手をあげておくと良いでしょう。固定した家具をあまり置かない和室よりも、洋室のほうが電気を使うライフスタイルになることが多いのでオススメです。
※石膏やドロマイトなどを材料とする「プラスター材」を芯材にした「プラスターボード」。丈夫で断熱、遮音性に優れている建材で、フローリングや天井の下地材のほか、内壁材としてよく使われる
和室の天井は、板張りのことが多いです。木目が和の雰囲気を強調しますので、洋室っぽいインテリアを重視するなら、壁と同じようにクロスを張って仕上げるのが良いでしょう。その場合、下地としてべニア板を張る必要があります。費用を抑えて和室から洋室にリフォームする場合は、床と天井だけ工事するという方法もあります。
単に収納だけを考える場合は、元のサイズを活かすかどうかで費用は大きく異なります。元のレイアウトと違う収納をつくる場合は、解体費や天井や壁のやり直しなどで費用がかさみますが、既存の状態のまま、例えばふすまの表面を洋風のデザインに張り替えるだけなら費用はかなり抑えられます。
押入れをクローゼットにする場合、中段を外したりポールを設置したりすることは比較的簡単です。ふすまも折れ戸に替えておくと使いやすくなるでしょう。ただし、押入れは一般的な洋室のクローゼットよりも奥行きが30cmほど深いので、せっかくリフォームするなら中の使い勝手を上げる工夫をオススメしたいところ。例えば、奥を棚にして、頻繁に出し入れしないようなバッグや帽子を収めるスペースをつくり、手前にはポールを設けて服を掛けられるようにする、などです。何をしまいたいのかをリフォームのプランナーにしっかり伝えて相談しましょう。なお、もしもウォークインクローゼットにする場合は、押入れの床は人が乗る想定がされていないケースがありますので、強度不足にならないよう床補強が必要となります。
なお、収納は、一戸建てでもマンションの場合でも費用の差はあまりありません。
建具とは、ドア、窓、障子、ふすまなどを指します。建具は、一戸建てとマンションでリフォーム費用に差があるというより、元の状態をどれだけ活かすかや、選ぶものにより金額が大きく異なります。例えば、入口の形状をそのまま活かして、表面をきれいに整える程度なら費用はグッと抑えられるし、隣接する部屋との間仕切りをそっくり入れ替えるとなれば数十万円かかることもあり、高額になります。ふすまを洋風の引き戸に入れ替える場合、同じ引き戸タイプなので費用は建具の商品代程度をイメージしがちですが、敷居やレールは別モノ。共用できないため工事が必要となり、意外と費用がかさみます。予算や機能、インテリアを踏まえ、プランナーとよく相談して選びましょう。
本格的な和室の場合、窓辺には障子を使うことが多く、カーテンレールをつけていないのが一般的です。障子をやめてカーテンレールを設置するには、壁に下地を入れる工事が必要となります。ただ、障子は断熱性に優れているので冷暖房効率が上がる、直射日光を遮りつつ部屋に柔らかい光を届けてくれる、など、メリットも多い建具です。洋室にリフォームしても、障子はそのまま使うという人も多く、リフォーム費用を抑えつつ、レトロモダンな雰囲気が楽しめるのでオススメです。
(1)~(4)の部位でいくつか目安額をお伝えしましたが、費用を抑えるには、機能とインテリアを分けて考え、必要な工事を取捨選択することです。部位の優先順位で言えば、床→天井が1番2番に考えるべきところで、壁・収納・建具は、予算に合わせて表面の修繕で済ませるのか、それ以上を求めるのかを決めればよいでしょう。
なお、和室全体を一気に洋室にリフォームしたほうが、バラバラにリフォームするよりも大工工事費などがまとまるため割安です。費用は元の部屋の状態や選ぶ仕様により大きく変わりますが、和室を洋室化するのにかかる価格の中心は、40万円~60万円※くらいが目安です
※出典/ホームプロ
リフォームする家が、一戸建てなのかマンションなのか、また築年数や工法によりリフォームの内容が異なり、費用にも大きく影響します。また、マンションの場合は、管理規約によっても違います。どのような工事ができるか、費用はどれくらいかかるかは、プロに現場を見てもらい、確認したほうが良いでしょう。
畳をフローリングにリフォーム | 13万円~25万円 |
---|---|
マンションの大壁の単純な張り替え | 数万円程度 |
隣接する部屋との間仕切りをそっくり入れ替える | 数十万円 |
和室を洋室化するのにかかる、中心価格 | 40万円~60万円 |
せっかくリフォームするなら、今の暮らしにフィットする洋室にしたいもの。「和室から洋室へのリフォームで一番多い要望は、LDKに隣接した和室を洋室に変えて一体で使えるようにするプランです」(渡辺さん)
一口に洋室へのリフォームといっても、部位や要望はさまざま。施工事例のリフォームプランアイデアを参考にして、予算とライフスタイルに合わせて相談してみましょう。
※リフォーム費用は施工当時の費用から和室部分を算出、解体撤去、消費税を含む
年を取ってからの寝起きは、布団よりもベッドのほうがラク。寝室が畳なら、老後に備えてベッドを置きやすい洋室にリフォームするのも手。事例はリビング横の和室を寝室にリフォームした例。元の和室は15cmほど床が高い位置だったが、リフォームを機にバリアフリーに。
【DATA】
リフォーム費用 約120万円
子どもが成長し、自分の机やベッドといった家具、収納が必要になってきたら、和室を子ども部屋にリフォームして個室を確保するのも手。事例のように、リビング横の和室を子ども部屋にすると、家族の気配を身近に感じつつプライベート空間を持てる。6畳+押入れ部分を上手く組み合わせ、2人分の個室が誕生した。
【DATA】
リフォーム費用 約106万円
さまざまな働き方が選びやすい今、家にワークスペースを求める人は多い。リビング横の和室は、家族の誰もが使いやすいワークスペースとしてちょうどいい位置だ。リフォームの際、事例のように引き戸を設けておくと、普段は広々としたLDKの一部として使え、集中したいときや来客時にはサッと空間を仕切れて便利。
【DATA】
リフォーム費用(間取図の該当部分)約450万円 ※キッチン設備、配管工事費を含む
和室に関するリフォームで一番多いのが、広いLDKをかなえるプラン。個室という枠組みをはなれ、和室をLDKに組み込んで一体の空間につくり変える、大がかりなリフォームだ。ダイニングセットとソファセット両方を置くライフスタイルでは、LDKの広さを重視する傾向に。
【DATA】
リフォーム費用(間取図の該当部分)約500万円 ※キッチン設備、配管工事費を含む
有効利用されていない和室は、洋室にリフォームすることで、空間を活かすことができる
生活スタイルによっては、洋室のほうが模様替えやメンテナンスがラクで、その後のライフサイクルの変化に対応させやすい
6畳の和室を洋室化するなら、60万円くらいから検討できる
LDKの間取り変更も一緒に大規模リフォームするなら、プランや使用する素材によって金額は異なるため施工会社に見積もりを依頼しよう