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透析ケア 2018年 夏季増刊 111山口県済生会下関総合病院6階東病棟副看護部長/透析看護認定看護師 谷たに口ぐち裕ゆう子こ身体症状②慢性的な症状2不均衡症候群症 状 不均衡症候群(図1)は透析導入期に起こりやすい合併症であり、嘔痛、嘔気・嘔吐、視力障害、不安感、焦燥感などの中枢神経症状がみられます。これらの症状は、透析後半から透析終了後の数時間以内に出現し、大部分は24時間以内に消失する一過性のものです。重篤になると、興奮や錯乱、四肢振戦、痙攣、意識障害、昏睡を呈する場合がありますが、このような症状がみられることはまれで、透析に慣れて状態の安定した維持透析患者や、腹膜透析患者に発症することはほとんどありません。原 因 おもな原因は、脳の細胞内外の浸透圧の不均衡で生じる脳浮腫がひき起こす、頭蓋内圧亢進と考えられています。透析導入期には体内に尿毒素が多量に蓄積しており、尿毒素は浸透圧をもつため、細胞内外に均等に分布しています。血液透析ではダイアライザを介して体内の尿毒素を除去しますが、この方法では血管内(血液)からしか除去できません。したがって、尿毒素は血管内、細胞外液、細胞内液という順番で時間差で取り除かれます。 また、脳には、血管と脳脊髄液のあいだに入った尿毒素などを、簡単に脳内に入り込ませないための防御機構である血液脳関門があるため、ここでさらに尿毒素の移動速度が制限されます。その結果、血管内の尿毒素は効率よく除去されますが、脳脊髄液側には尿毒素が溜まっているという状態が起こります。すると、脳脊髄液側の浸透圧が高くなって血管内の浸透圧が低くなり、不均衡が生じます。その結果、浸透圧にひかれて血管側から脳脊髄液側(細胞外、細胞内ともに)へと水が移動し、脳浮腫を起こします。こうして頭蓋内圧が上昇し、不均衡症候群をひき起こします。対処法 不均衡症候群は、尿毒素の濃度が高い状態である初回透析時にもっとも起こりやすいため、図1 不均衡症候群

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