就職・転職の切り札 【縁故採用】活用方法と最新事情

一般的に悪いイメージを持たれている「縁故採用」。実は縁故採用を積極的に行おうとする企業が増えてきているのをご存知でしょうか?

この記事では、縁故採用とは何か、現状ではどのように使われているのか、人とのつながりを活かして就職・転職するためのベストな方法をご紹介します。

縁故採用とは

そもそも縁故採用という言葉はどういう意味なのでしょうか?

縁故採用ってどういう意味?

縁故採用は、企業の社員などとの縁故(つながり)があるかどうかを基準にした採用のことです。

従来は、いわゆる「コネクション採用(コネ採用)」を意味する言葉として使われてきましたが、現在では、新たに「リファラル採用(社員紹介)」を含める場合もあるようです。

リファラル採用とは、求職者を社員紹介によって集める採用手法です。欧米では一般的で、日本でも近年、普及が進んでいます。

コネ採用とリファラル採用の違いは?

コネ採用とリファラル採用には、能力や人柄を重視するかしないか、という違いがあります。

コネ採用は、政治家などの有力者や社内の役職者、取引先の子供など、利害関係にある人物を能力に関係なく採用する方式です。

能力が低い人でも、採用することで顧客との取引がスムーズになるなどのメリットがあれば採用されますが、実際の職場では能力や人間関係の面で問題が起きやすくなります。

リファラル採用は、企業に在籍する社員やOB・OGなどの関係者の紹介で、能力がマッチした人を採用する方式です。

リファラル採用で転職する場合は、志望する企業内にいる友人・知人に、「〇〇の能力があり、活躍できる人物だ」と自分を紹介してもらうのが一般的です。ちなみに「リファラル」とは、英語で求職者の紹介、推薦を意味する言葉です。

採用される側から見たメリット・デメリットの比較

コネ採用の場合は、能力が低い人でも苦労せずに就職・転職できるメリットがあります。

その反面、自分の能力に合わない職場で採用されてしまうと、仕事上で苦労する可能性があります。

また、役職者に紹介者された場合は、その人が会社を去ってしまうと居場所がなくなるリスクがあります。

リファラル採用の場合は、紹介者が社内の採用担当者などに自分のスキルや経験を伝えてくれるものの、あくまで紹介にすぎません。採用時には、企業側の選考を受ける必要があり、能力、人柄とのマッチングがしっかり行われるため、採用後は自分に合った仕事ができる可能性が高くなります。

一方、紹介者が親しい友人である場合など、内定を獲得した後に辞退しづらいケースがあるので注意が必要です。

縁故採用(コネ採用)が禁止されているケース

コネ採用はネガティブな印象が強いですが、禁止している事例はあるのでしょうか?

公務員の縁故採用(コネ採用)の禁止規定

国や地方自治体がコネ採用をすることは法律で禁止されています。

公平な基準によって能力を評価することが重視されているからです。

国家公務員法や地方公務員法には「職員の任用は法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない」という規定があります。

縁故採用(コネ採用)を禁止している企業の実例

民間企業の中には、コネ採用が行われないように、社員の家族や親族の応募を全面的に禁止しているところもあります。募集要項にそのような記載があるかどうかは、フェアな採用を行っているかどうかを見分けるひとつのポイントになるでしょう。

<実例>

キーエンス

募集要項に、役員・社員と三親等以内(子女、兄弟姉妹、甥姪など)の者は応募不可との記載があります。

三井住友海上

募集要項に、社員の二親等以内の者は応募不可との記載があります。

縁故採用(コネ採用)で就職・転職できる可能性は?

実際の職場で「コネ採用はある」と感じるかどうか、話を聞いてみました。

公務員が現場で感じたこと

元市役所職員のAさん

私の職場では1000人くらいの職員が働いていましたが、「家族も同じ職場で働いている」という人は知っている範囲で4人いました。

しかし、いずれも能力の高い人で、コネ採用だったかは同僚から見てもわからなかったです。

元公立小学校教職員のBさん

筆記試験は自力でパスするしかないと思いますが、面接の段階ではコネが働いたと感じたことはありました。

また、配属を決める段階でも、決定権のある教育委員会や、要望を出せる学校長へのコネがある人ほど、希望が通っていたように感じました。

宴会や職場の雑談でコネの力を吹聴する人もいます。

選考プロセスにおいて縁故(コネ)のある人が有利になる仕組み

縁故(コネ)のある人が有利になるのは、面接の段階が多いようです。

民間企業では、実際に「コネ採用の対象者リスト」を作成している企業もあり、面接の評価に関係なく採用される人もいます。企業の人事担当役員に話を聞いてみました。

企業の人事担当役員のCさん

私は部下が面接で出した不合格の判断を覆させ、合格にしたことがあります。

その人を採用することでうちの会社の取引がスムーズになることを知っていたからです。現場で使える人材かどうかは重視しませんでした。

今後コネ採用に対する風当たりは強まる?

実態として存在するコネ採用ですが、仕事ができないコネ採用の人を抱えることは企業にとってはコストでしかなく、業績に悪影響を与えてしまうと判断されはじめています。

今後は、能力をともなわない「コネ採用」は減っていくでしょう。その代わりに、身元や能力がしっかりしている人を採用できる「リファラル採用」が増えると考えられています。

職場で戦力になれないコネ採用の人は、リファラル採用の人と実力を比較されて、辛い思いをすることが多くなるかもしれません。

リファラル採用を目指す道も

特別な縁故がなくても、リファラル採用を目指すことはできるのでしょうか?

リファラル採用が広がる背景

リファラル採用は企業にとってメリットが大きい

人手不足が叫ばれる現在では、優秀な人材の効率的な確保は企業にとって至上命題。リファラル採用では、人事担当者だけでなく、社員全員がリクルーターとなるため、企業から注目されています。

即戦力人材が採用できることが多く、採用プロセスを短くできるメリットがあることも、リファラル採用が普及する要因といえるでしょう。

国内ではベンチャー企業で導入が増え、支援企業も登場

ベンチャー企業の急成長を支える採用方式として「リファラル採用」を導入する企業が増えており、支援サービスも多数登場しています。

HR総研が2019年に実施したアンケート調査では、回答した155社(上場及び非上場企業のキャリア採用担当者)のうち、リファラル採用を実施したことのある企業は41%と半数以下。

しかし、「利用している手段やサービスの中で、成果が認められるもの」としてリファラル採用を選んだ企業は81%にのぼります。

さらに、「今後、利用がより高まると思われるキャリア採用の手段・サービス」を問う質問では、リファラル採用が53%でトップとなっており、今後もこの傾向は続くと考えられます。

※出典→HR総研「キャリア採用に関する調査」結果報告|HRpro

リファラル採用による転職成功者の体験談

リファラル採用のお勧めのポイント

リファラル採用では、企業の実情を詳しく聞いた上で応募できるため、仕事内容が希望に沿ったものになる可能性が高くなります。

友人から紹介を受ける場合、企業の面接ではなかなか得られない「残業時間」や「昇給」に関する生の声を聞くことができます。

そのうえで、自分に合った企業か、仕事内容が自分に適しているかを見極めることができるため、マッチングの精度が高くなるのです。 

リファラル採用によって転職が実現した二人の体験談をご紹介します。

経験とマッチしたライティングの仕事に就けたDさんの体験談

私は前職の元同僚の紹介により、前職と同じライターの職種で、希望する業務内容により近い仕事ができる企業に転職することができました。

先にその企業に転職していた元同僚と飲み会で久々に再会し、仕事の悩みについて相談したところ、元同僚からリファラル採用の候補者として私を人事に紹介したい、という提案を受けました。

その後、元同僚が私の経験やスキルを的確に企業に伝えてくれていたようでトントン拍子に話が進みました。

面接の段階で転職後の具体的な職務内容などについてすり合わせをすることができ、前職と同じライターの職種で採用されることが決まりました。

転職後は自分の経験を活かせる仕事を任せてもらうことができ、今の環境にはとても満足しています。

客室乗務員から人事の仕事に転職したEさんの体験談

私は大学時代からの友人の紹介により、航空会社の客室乗務員から未経験の人事職に就くことができました。

そもそも転職のきっかけは、客室乗務員になった後に、飛行機酔いしてしまう体質だと気付いたから。そのため、長所である行動力を活かすことができ、人と接することも多い仕事への転職を希望していました。まずは転職エージェント経由でX社の人事と営業のポジションに応募しましたが、残念ながら結果は不採用。

でも、実はX社では友人が働いていて、リファラル採用を行っていると聞いていました。どうしてもX社で働きたいと思っていた私は、友人に紹介してもらいリファラル採用で再チャレンジ

その結果、企業側から適性検査も参考にして私に向いているポジションを紹介してもらうことができました。そして選考を経て、希望していた人事部での採用が決まりました。

現在は自分の適性に合った仕事ができていて、大満足の日々を過ごしています。

リファラル採用の注意点

リファラル採用では社内で報奨金制度などのインセンティブがあることが多いようです。

そのため、紹介してくれる友人・知人はリファラル採用を成功させようとして企業の良い情報だけを候補者に伝えている可能性もあります。

リファラル採用を利用する場合には企業の業績やその企業から転職した人の口コミなど、自分で調べられる情報に関してはできる限り情報収集を行いましょう。応募するかどうかは最終的に自分で判断する必要があります。

コラム:広がるリファラル採用の可能性

「リファラル採用(社員紹介)を導入する企業が増える流れは、間違いなく加速し、将来的に採用方式の主流になる可能性もある」と語る経営者もいます。

現在のような人手不足の環境下では、通常のルートでの人材採用が困難です。リファラル採用は、社員全員をリクルーターとして採用活動ができるため、企業側も中途採用の担当者だけで候補者を探さなくていいというメリットがあります。

例えば、アメリカでは多くの企業でリファラル採用が導入されています。2016年にアメリカの採用コンサルティング会社CareerXroadsが実施した調査では、対象企業204社が採用した従業員について、採用経路の第1位が「リファラル採用(27.5%)」だったという分析結果が出ています。

※出典→CareerXroads,” 2016 Employee Referrals Review

リファラル採用が今後ますます拡大していくと考えると、自分の交友関係を広げ、就職・転職活動をしていることを周りの人に伝えることは自分の可能性を広げることとイコールです。友人・知人と仕事に関するフランクな情報交換をすることもさらに重要になっていくでしょう。

一種の縁故採用であるリファラル採用は、希望する仕事に就くことができる方法の一つとして考えてもいいのかもしれません。

まとめ

縁故採用という言葉は、現在「コネ採用」と「リファラル採用」の両方を指す言葉として使われています。

コネ採用は、社内の役職者とのつながりなどを理由に、実力とは関係なく採用される方式です。それに対してリファラル採用は、候補者の能力を証明してくれる、信頼できる個人からの紹介が必要な方式です。

今後は「リファラル採用」を導入する企業が増え、採用方式の主流になる可能性があります。就職・転職の可能性を広げるためには、自分の交友関係を維持・発展させていくことが今まで以上に重要になるでしょう。

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