働く人のための完全ガイド 【わかりやすく解説】就業規則とは?

会社の就業規則を確認したことはありますか?就業規則には何が書かれていて、働く人は何を確認すべきなのでしょうか?

この記事では、「就業規則の内容」から「就業規則がない・見れない場合の対処法」まで解説します。

そもそも就業規則とは?どこで見れるの?

まずは就業規則とはどんなもので、どこで閲覧できるのか確認しましょう。

就業規則とは会社のルールブック

就業規則とは会社のルールブックのようなものです。勤務時間や給料、休日など、その会社で働く上でのルールが書かれています。

就業規則は、会社(事業場単位)に労働者が常時10名以上いる場合に、作成と届出が義務付けられています(労働基準法89条、90条)。この労働者数には社員以外に、パート・アルバイトも含まれます。

労働者が10人未満の場合は、就業規則を作らなくても法的には問題ありませんが、実際は社員が安心して働けるよう、中小企業であっても80%以上の企業が就業規則を作っているようです。

※参照:中小企業の雇用状況に関する調査・集計結果(中小企業庁)

就業規則は冊子やPCで見られる

就業規則は、見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならないとされています。(労働基準法第106条)。

具体的には、以下のように簡単に確認できる場所に保管されています。

▼就業規則の保管・共有の例

  • 入社時に冊子として配られる
  • 社内の見やすい場所に掲示・保管される
  • パソコンの共有フォルダに入っている
  • 社内ポータルサイトにアップされている

もしも、会社の就業規則が見つからない場合は、総務や人事に確認、または先輩や上司にどこにあるのか聞いてみましょう。

※会社に就業規則がない・見られないなどのトラブルについて詳しくは→「【Q&A】就業規則のよくあるトラブル

就業規則には何が書かれているの?

就業規則には、「必ず書かれている項目」と「ルールがある場合のみ書かれている項目」があります。

順番に内容を確認していきましょう。

必ず書かれていること【労働時間・賃金・退職】

就業規則には、「労働時間」「賃金」「退職」の3項目が必ず書かれています

これらは「絶対的必要記載事項」と言い、以下のような内容になります。

▼絶対的必要記載事項

  1. 労働時間に関する内容…始業・終業・休憩などの就業時間や休日・休暇など
  2. 賃金に関する内容…給料の額や計算方法、支払い、昇給についてなど
  3. 退職に関する内容…退職や定年、解雇について

ルールがある場合のみ書かれていること【その他】

労働時間・賃金・退職以外の内容は、会社と労働者の間に何かしらのルールがある場合のみ、就業規則に書かれます。

これらは「相対的記載事項」と言い、以下のような項目が当てはまります。

▼相対的記載事項

  1. 退職手当に関する内容…条件や支払い方法、支払い時期について
  2. 臨時の賃金や賞与、最低賃金に関する内容
  3. 食費や備品など、費用負担に関する内容
  4. 安全衛生に関する内容
  5. 職業訓練に関する内容
  6. 災害補償や業務外のケガや病気の扶助に関する内容
  7. 表彰や制裁に関する内容
  8. その他…その会社の全労働者に適用されるルールについて

コラム:就業規則と雇用契約書はどう違う?

働く際のルールを確認できる書類として、就業規則とよく混同されるものに雇用契約書がありますが、どう違うのでしょうか?

就業規則と雇用契約書の違い

就業規則とは、全社員共通で守るべきルールを定めたものです。

その一方、雇用契約書とは個別の労働契約の条件(賃金や休日などについて)を定めるものです。そのため、社員によって内容が異なることもあります。

しかしながら、雇用契約書の契約内容は、就業規則を守らないようなものはNG。

もしも、就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合は、労働者にとって有利な方が優先されます。

就業規則でチェックすべき5つの項目

会社で働く上で、就業規則はどの項目をチェックすべきなのでしょうか?
確認すべき項目を5つピックアップしたので、それぞれ解説していきます。

【1】労働時間と休日

労働時間と休日の項目では、以下のポイントを確認しましょう。

  • 始業、終業、休憩時間
  • 労働時間(就業時間、フレックスタイム制、裁量労働制など)
  • 休日数
  • 法定休暇(年次有給休暇、産休、育児・介護休暇、子の看護休暇、生理休暇)
  • 特別休暇(慶弔休暇、病気休暇、裁判員休暇など)
  • 振替休日の取得方法

労働時間

労働時間が、法定労働時間(1日8時間・週40時間)に収まっているか確認しましょう。

残業をすることがある場合は、時間外労働についての協定(36協定)を定めた項目が別にあるはずなので、そちらも確認しましょう。

もし、みなし労働時間制や裁量労働制がとられている場合には、就業規則や労働基準法に照らして、自分の職種や業務内容に対して違法に適用されていないかを確認しましょう。

※みなし労働時間制ついて詳しくは→みなし労働時間制とは?
※裁量労働制について詳しくは→裁量労働制とはこういう制度!

休日数(法定休日)・年次有給休暇などの法定休暇

休日が法定休日(週1日もしくは4週間を通じて4日以上)の日数以上になっているか確かめましょう。

年次有給休暇などの法定休暇もそれぞれ、会社が付与すべき最低日数が法律で決められているので、それを下回っていないか確認しましょう。また、日数とあわせて給料の有無も確かめておくと安心です。

給与の有無については、特別休暇(法定外休暇)の場合も確認しておくと良いでしょう。

※参考:法定労働時間と割増賃金について教えてください。(厚生労働省)

【2】賃金

賃金についての項目では、以下のポイントを確認しましょう。

  • 給与計算(遅刻・欠勤・早退時など)
  • 会社都合で休業した場合の賃金
  • 割増賃金(残業や深夜、休日勤務など)
  • 諸手当(手当の種類、ボーナスや退職金)

給与計算

賃金に関しては、遅刻、欠勤、早退などをした際に給与が差し引かれるのかをまずチェックしましょう。差し引かれる場合は、どのように計算されるのかも確認してください。

また、機械の故障や営業停止など、会社都合による休業があった場合の賃金についても、一緒に押さえておくと安心です。

割増賃金

割増賃金率が法律の基準を下回っていないかを確認しましょう。

労働基準法では、通常の残業または深夜労働で25%以上、法定休日労働で35%以上と規定されています。

※大企業の場合は、月間60時間以上の残業はさらに25%以上の割増賃金が必要

諸手当

通勤手当、家族手当など会社が任意で用意している手当や、ボーナス・退職金の規定についてもしっかり目を通しておきましょう。

ちなみに、ボーナスや退職金も法的な支払い義務はないため、会社によってはない場合もあります。

※残業代の計算について詳しくは→労働基準法で残業は何時間まで?
※参考:法定労働時間と割増賃金について教えてください。(厚生労働省)

【3】退職時のルール

退職関連のルールについては以下を確認しましょう。

  • 退職方法
  • 定年制度
  • 懲戒・解雇の規則
  • 競合先への転職に関する規定

退職方法

退職方法の規定は会社によって異なるため、「希望の退職日のどのくらい前に申し出る必要があるのか」など、よく確認しておきましょう。

民法では退職の申し出をしてから2週間で退職可能とされていますが、多くの会社では引継ぎなどを考慮し、「退職希望日の1ヶ月前には退職を申し出ること」としているようです。

※退職について詳しくは→退職時・退職後の手続きガイド【完全版】

定年

正社員の場合は、定年制度についても調べておきましょう。

高年齢者雇用安定法により、60歳未満を定年とすることはできません。

また、2013年の法改正によって、希望すれば65歳までは原則働き続けられるようになっています。

懲戒・解雇

会社がどのような懲戒・解雇の規則を定めているのか確認しましょう。

会社は「懲戒や解雇、解雇事由」の記載なしに懲戒や解雇はできないため、就業規則には、必ず「懲戒や解雇、解雇事由」についてのルールが書かれています。

解雇は「客観的に合理的な理由」がない限り、法的に無効になります。万が一、不当だと思われる解雇があった場合は、労働基準監督署などに相談しましょう。

競合先への転職

会社によっては「退職後○年間、競合する企業への就職や事業の経営を禁止する」といった形で競合他社への転職を禁止している場合があるので、確認しておきましょう。

実際には、競合他社への転職の禁止は、特定の場合を除いて法的には認められない場合が多いのですが、同業種へ転職を予定している場合は気をつけましょう。

※同業種への転職について詳しくは→競合他社への転職は裏切り?

【4】健康診断やストレスチェック

1年に1回以上、健康診断やストレスチェックが実施されるか確認しましょう。

会社には、「正社員などフルタイムの労働者」や「1年以上勤務していてフルタイムの勤務時間の4分の3以上勤務しているパートタイム労働者、」に対して、健康診断やストレスチェックを受けさせる義務があります。

また、その結果によっては、会社は何らかの対応措置をとる必要があります。

【5】業務上必要な経費の個人負担

会社で使う備品の購入など、業務上必要な経費を会社が「個人負担として定めているか」確かめましょう。

多くの会社では、経費は会社に負担してもらえますが、中には就業規則に定めることで個人負担としている企業もあります。

もしも、就業規則で定められていないのに、経費を個人負担させられている場合は、労働基準法に違反する疑いがあります。

また、経費の個人負担額があまりに大きい場合は、就業規則に規定があっても無効になります。

【Q&A】就業規則のよくあるトラブル

ここでは「就業規則がない」「見れない」など、よくある3つのトラブルについて、対処法をご紹介します。

Q1:就業規則がない場合はどうすればいい?

就業規則を見たことがなく、うちの会社にはないような気がするのですが、これって法律違反なのでは…?

もし、会社に従業員が常時10人以上いるのにもかかわらず、就業規則がない場合は違法になります。

まずは本当にないのかどうかを確認すべく、総務・人事、先輩や上司に聞いてみましょう。

就業規則には周知義務といって、「各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならない」という決まりがあるので、就業規則がちゃんと存在している場合は、すぐに場所を教えてもらえるでしょう。

万が一、就業規則が本当に存在していない場合は、上司や総務・人事に相談してください。

Q2:就業規則が見れない…どうやって閲覧する?

会社の共有フォルダにある就業規則を見ようとしたら、「アクセス権がない」と出てきてしまいました。どうやったら見れるのでしょうか?

一般社員は見れないものなんですか…?

まずは、上司や総務・労務部に見せてほしいと申請しましょう

Q1でもお伝えしたように、就業規則には周知義務があるため、「就業規則を見たい」と申請すれば、通常はすぐに見せてもらえるはずです。

口頭で申請しても見せてもらえない場合は、証拠の残る書面で再度申請してみましょう。それでも対応してもらえなければ、労働基準監督署に状況を相談しましょう。

Q3:就業規則に問題がある場合は?

休日数が法定休日より少ないのですが、これって問題ですよね…?どうしたら良いでしょうか?

まずは上司に相談し、問題解決を取り計らってもらいましょう。上司が取り合ってくれない場合は、より上の立場の上司や総務・人事に相談します。

会社と相談しても解決できないときは、やはり労働基準監督署に相談しましょう

労基署に相談するのが難しい場合は、県の総合労働相談コーナーや、弁護士などを頼ってみましょう。

<総合労働相談コーナー>

各都道府県労働局などに設置。無料・予約不要で、面談でも電話でも相談の対応が可能です。電話番号は、都道府県によって異なります。

【相談用電話番号(東京都)】
0570-00-6110

※参照:総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
※労働組合について詳しくは→労働組合とは?

まとめ

就業規則は「難しい何か」と思ってしまわず、自分でしっかり内容を押さえておくと、より安心して働くことができます。

まだ就業規則に目を通していないという方は、ぜひ一読してみてください。賃金や休日、退職などについての疑問をスッキリさせ、納得して働けると良いですね。

この記事の監修者

特定社会保険労務士

成澤 紀美

社会保険労務士法人スマイング

社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。

社会保険労務士法人スマイング 公式サイト

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