すぐわかる解説つき 標準報酬月額とは?

社会保険料の計算などで目にする「標準報酬月額」ですが、実際のところ何なのかよくわからない人も多いのではないでしょうか?

ここでは標準報酬月額についてわかりやすく解説するとともに、決定・変更する時期や調べ方についても説明します。

標準報酬月額とは? わかりやすく説明

標準報酬月額とは社会保険料を決めるための基準

標準報酬月額とは、毎月の保険料(健康保険や介護保険、厚生年金保険)を計算するための基準となる金額です。

原則として4~6月の3カ月間の給与の平均額をもとに決定し、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

給与の平均額に応じて、厚生年金保険の場合は32段階健康保険の場合は50段階の等級に分けられ、その等級ごとに標準報酬月額が定められています

標準報酬月額と手取りの関係

標準報酬月額は「○円以上□円未満」と4~6月の3カ月間の給与の平均額の範囲によって等級が分けられていることから、実際の支給額と標準報酬月額に差が出て、給料が増えたのに手取りが減る場合もあります。

令和2年9月分からの厚生年金保険料額表をもとにした手取りの例は以下の通りです。

〈給料が増えて手取りが減る例〉

例えば、一般企業に勤め協会けんぽに加入している東京都在住のAさん(扶養なし・介護保険2号に非該当)がいたとします。

Aさんの標準報酬月額は以下の通り。

  • 給料が23万円以上25万円未満の場合:標準報酬月額は16等級で24万円
  • 給料が25万円以上27万円未満の場合:標準報酬月額は17等級で26万円

給料と手取り比較表

給料 249,500円 250,000円
雇用保険料 1,497円 1,500円
健康保険料 12,000円 13,000円
厚生年金保険料 21,960円 23,790円
社会保険料合計 35,457円 38,290円
課税所得 214,043円 211,710円
所得税 5,270円 5,200円
手取り 208,773円 206,510円

給料25万の場合、給料24万9,500円の手取りと比べて、手取りが2,263円少なくなります

※実際にはここからさらに住民税などが引かれます。

※参考:
日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険」(公表:2023年4月1日、参照:2023年8月25日)

総支給額には通勤手当などの各種手当を含む

標準報酬月額の等級を調べるための総支給額の対象となるのは、基本給・残業手当・通勤手当・役付手当・勤務地手当・家族手当・住宅手当などです。

ボーナスについては、年4回以上支給されなければ対象になりません。

標準報酬月額の等級の算定対象となるものを下記の表「報酬扱い」の欄にまとめているので参考にしてください。

報酬扱いとなるもの

金銭(通貨)で支給

  • 基本給(月給・週給・日給など)
  • 能率給
  • 奨励給
  • 役付手当
  • 職階手当
  • 特別勤務手当
  • 勤務地手当
  • 物価手当
  • 日直手当
  • 宿直手当
  • 家族手当
  • 扶養手当
  • 休職手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 別居手当
  • 早出残業手当
  • 継続支給する見舞金
  • 年4回以上の賞与

現物で支給

  • 通勤定期券
  • 回数券
  • 食事・食券
  • 社宅
  • 被服(勤務服でないもの)
  • 自社製品

報酬とならないもの

金銭(通貨)で支給

  • 大入袋
  • 見舞金
  • 解雇予告手当
  • 退職手当
  • 出張旅費
  • 交際費
  • 慶弔費
  • 傷病手当金
  • 労災保険の休業補償給付
  • 年3回以下の賞与(※標準賞与額の対象)

現物で支給

  • 制服
  • 作業着(業務に要するもの)
  • 見舞い品
  • 食事(※本人の負担額が、厚生労働省が定める価格により算定した額の2/3以上の場合)

※参考:
日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和5年度)」(参照:2023年8月25日)

年3回以下の賞与は「標準賞与額」

年3回以下のボーナス(賞与)は、「標準報酬月額」の対象ではなく、「標準賞与額」の対象となります。

この場合、ボーナスの支給月に税金を引く前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた額となる「標準賞与額」が決定し、標準報酬月額と合わせて社会保険料が算出されます。

標準賞与額には上限があり、健康保険の場合は年間573万円(4月1日~翌年3月31日の累計額)、厚生年金保険の場合は1カ月150万円となっています。

コラム:高額療養費制度を利用する際も役立つ

一定以上の医療費を支払った場合に払い戻される高額療養費制度を利用するための「限度額適用認定証」の交付を受ける際には、交付を受ける人の年齢や標準報酬月額によって所得区分が分類され、自己負担限度額が決定されます。

自身の標準報酬月額を把握しておくと、手術や入院時の自己負担額の目安がわかりやすくなります。

標準報酬月額が決定・変更される時期

標準報酬月額が決まる・変わる3つのタイミング

標準報酬月額は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合、事業主の申請に基づき日本年金機構(年金事務所)により決定されます。

そのタイミングは大きく分けて3つあります。

入社時

入社時に就業規則や労働契約などに基づいた報酬月額をもとに決定します。

このことを「資格取得時の決定」といい、1月1日~5月31日に決定した人はその年の8月まで、6月1日~12月31日に決定した人は翌年の8月まで、その標準報酬月額を使用します。

毎年7月

毎年7月に4~6月の給料の平均金額で標準報酬月額を決めます。

これを「定時決定」または「算定」といい、その年の9月~翌年の8月まで使用します。

ちなみに、支払いの基礎となる日数が17日より少ない月を除いて計算する必要があります。例えば、4~6月のうち6月に休職した場合は4月と5月の給料の平均金額をもとに計算します。

月給が大きく変わったとき

昇給や降給によって固定給が変動した場合、標準報酬月額が変更されます。

これを「随時改定」または「月変」といい、その年の8月まで使用します。ただし、その年の7月以降に改定されたときは、次の定時決定が適用されるまで使用することができます。

毎年4月~6月だけ残業が多く発生する場合は?

慣習的に4月~6月に残業が多く、「当年の4〜6月から算出した標準報酬月額」と「前年7月〜当年の6月から算出した標準報酬月額」の間に2等級以上の差が出る場合、事業主が算定基礎届に修正平均額を記入し、加入している保険者へ提出(※)します。

※申し立てる場合、「事業主の申立書」と「被保険者の同意」の提出が必要になります。

保険者算定を届出ることで、前年7月から当年6月までの給料の平均金額で標準報酬月額が決まるようになります。

標準報酬月額の調べ方

標準報酬月額表で確認

標準報酬月額は、日本年金機構や全国健康保険協会のホームページにある標準報酬月額表で調べることができます。

表の「報酬月額」の項目から自分の1カ月の総支給額にあたる範囲を探して、それに該当する等級や月額を確認しましょう。

▼例:月収25万円の場合、標準報酬月額は26万円、健康保険の等級は20等級

令和3年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生位年金保険の保険料額表の画像。例:月収25万円の場合、標準報酬月額は26万円、健康保険の等級は20等級

※出典:

全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(参照:2023年8月25日)

ねんきん定期便で確認

国民年金・厚生年金保険の保険料納付実績や将来受給できる年金額の見込みなどが書かれた通知書「ねんきん定期便」でも、自分の標準報酬月額を確認することができます(直近13ヶ月分のみ)。

ねんきん定期便は毎年誕生月に届くので、手元に届いたら確認してみましょう。

「ねんきん定期便」での標準報酬月額の記載イメージ

まとめ

標準報酬月額とは、毎月の保険料を計算するための基準となる金額です。

入社時・毎年7月・月給が大きく変わったときのタイミングで、決定・変更します。手取りや保険料を把握するために必要な金額なので、ねんきん特別便などで確認しましょう。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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