北川ケイさん著「江藤春代の編物普及活動」を読んで 〈後編〉

林ことみのハンドメイドNavi

日本の編み物の歴史に思いをめぐらせて

文/林ことみ

海と島

人気映画に登場した謎を解く編み図

前号の後半、江藤春代の考案した「合理的符号」に触れましたが、私が編み物を始めたときにはもう記号図は普及していました。

その記号図で思い出した映画があって、検索してみました。それは横溝正史の金田一耕助シリーズ、石坂浩二主演の「女王蜂」。家庭教師の女性(岸恵子)はいつも編み物をしていました。

彼女が亡くなった後、金田一が9枚の編み図を見ながら編み物をするのですが、うまく編めません。そこから彼はひらめきます。編み図が違うから編めないのだ→違っているところをつないでみよう。すると「アカイケイトノタマ」という文字が浮かび上がりました。そこで赤い毛糸をほどくと、中に遺書が入っていたのです。

映画の背景は昭和27年。その編み図を見てみると、見たことのある記号ではありますが、不思議な編み図で、実際編めるかどうか試してみたくなります。

ちなみに作者の横溝さんは気分転換に編み物をされていたそうで、そんなところからこのアイデアを思いついたのかもしれません。映画の美術さんがどのようにこの編み図を作ったかも知りたいところです。