上坂すみれ（声優／アーティスト）インタビュー「考え過ぎて不安になるより“とにかくやってみよう”と挑戦していくことが大切」

声優だけでなく、アーティストとしても今年で活動10周年を迎えるなど多方面で活躍する上坂すみれさん。2月8日には、自身がヒロインのキャラクターボイスを務めるTVアニメ『イジらないで、長瀞さん 2nd Attack』のオープニングテーマ「LOVE CRAZY」をリリース。制作エピソードや、仕事との向き合い方について話を伺いました。

一筋縄ではいかないけれど魅力的、アニメのヒロイン・長瀞さんの世界観を詰め込んだ「LOVE CRAZY」

――13th Single「LOVE CRAZY」が2月8日にリリースされますね。

TVアニメ『イジらないで、長瀞さん2nd Attack』のオープニング曲なのですが、一期の放送でもヒロインの長瀞さんのキャラクターボイスと主題歌を担当させていただきました。一期の「EASY LOVE」に続いて、彼女の世界観にぴったりな楽曲で、曲調も跳ねるような明るいタイプなので歌っていても楽しかったです。疾走感のあるバンドサウンドもカッコいいのでライヴで披露するのが楽しみです。

――歌詞のツンデレ感と可愛らしさが入り混じっているところも印象的でした。

言葉数が詰まっていたり難解な言い回しのAメロBメロから、サビで急に《こっち向いてよ》とストレートな言葉が出てくるので、歌っていてもキュンとしますね（笑）。長瀞さんのキャラクターを現しているような、小悪魔のようで繊細、気まぐれなようで純真とか、一筋縄ではいかないけれど魅力が詰まった歌詞になっています！

――カップリングの「リベリオン」はどのような曲ですか？

「リベリオン」の作詞作曲をされているR・O・Nさんは、私のデビュー当時からアルバムのインストゥルメンタル曲を書いてくださった方で、この曲では作詞作曲をお願いしています。ゲーム『マジデス壊　魔法少女マジカルデストロイヤーズ』の主題歌として、作品のハードボイルドな感じに沿って、革命を呼びかけるような強い曲を作ってくださったので最初に聞いた時から引き込まれました。

どちらも女の子が主人公の曲ですが、ラブコメと、運命に立ち向かう強い女性と、全く毛色が違うので、作品や楽曲の世界に合わせた表現が出来るように意識して歌いました。

否定的な意見を持たずにやってみることが、面白い・楽しい作品作りに繋がる

――3曲目「道がわからないのうた」は上坂さんの作詞ですね。

「LOVE CRAZY」「リベリオン」はしっかりと作品に寄り添った作品だったので、「道がわからないのうた」は自由に書かせていただきました（笑）。エレクトロでカッコいい曲調だからこそ、あえてゆるい詞を書いてみようと思ったんです。

――かなりの迷子っぷりが描かれていますが（笑）。

そうなんです。私がかなりの方向音痴なので。具体的に地名も出していて、池袋とかは最初に行った時にすごく迷ったのでよく覚えています。気づいたら全く違う建物に到着していたり、戻ろうにも元来た道が分からなかったり（笑）。歌詞の中では、カッコいい感じのワードや言い回しもありますが、よく迷子になる人が待たせてしまう相手に「大丈夫だよ」と言ってもらって「ありがとう〜、見捨てないでね」と言ってる、それだけの歌なんです。

――遊び心を持って取り組めるのは素敵ですね。今回の「LOVE CRAZE」のMVも、様々な衣裳やシチュエーションがあって見ごたえがありました！

コンセプトに合わせてスタッフさんが色々な提案をくれるので毎回すごく楽しみです。私は「◯◯は出来ない」とか「これじゃなきゃダメ」とは事前には言わないようにしていて。新しいことや、面白そうなことには挑戦しつつ楽しんで作品づくりが出来たらと思っています。

子役から声優へーーイチからのスタートで最初は仕事が全く分からなかった

――では、ここからはお仕事との向き合い方について伺いたいと思います。この仕事を目指したきっかけを教えて下さい。

子役として事務所に所属していましたが声優への憧れがあったので、18才の時に「声優になりたいです」と言葉にして伝えました。でも、養成所に通ったわけではないので、最初はお芝居や声優の仕事が全く分からなくて、本当にイチからのスタートでした。

――それはどのように乗り越えたのでしょうか？

周りの先輩たちにすごくお世話になりました。現場での台本の見方や、マイクの使い方といった基本的なことから、喉の調子が悪い時には「無理に声を出そうとすると治りが遅くなるよ」など、体験談を踏まえたうえでのアドバイスがいただけて、とても感謝しています。

――では、憧れが仕事になったと実感したターニングポイントはありますか？

大学を卒業して声優の仕事1本になったタイミングですね。それまでは学生が本業で、好きな仕事もさせてもらえているという感覚だったので…。それと、学生時代はあまり意識していなかったお金の管理についても、当時のマネージャーさんが「お金の管理は自分でちゃんとしたほうが責任感を持てるよ」とアドバイスをくれて、それも大きな変化の1つだったと思います。

事前準備をしっかりすれば、たとえ失敗しても納得ができる

――新しい環境で不安になることはなかったですか？

それはなかったです。大学の単位が危なくて両立するのに必死だったので、これからは“仕事に専念出来る！”とホッとしました（笑）。当時は声優の仕事以外に、音楽活動やイベント出演など色々と経験させてもらって、世界が広がっていた時期だったので楽しみのほうが大きかったです。

それと、私はあまり事前に“これはきっとこうなるだろう”とか“こうなのかな？”みたいな想像とかシミュレーションをあえてしないようにしていて。もちろん初めての作品のアフレコ現場とか、ライブ前は緊張しますが、声優の仕事は次々に現場も変わっていきますし、考え過ぎて不安になるより“とにかくやってみよう”とか、“その場を楽しもう”と思うようにしています。

――それは昔からですか？

はい。基本的には楽観的なんだと思います。ただ、アフレコで何度も失敗をしてリテイクを重ねないよう納得が出来るまで台本を読み込んだり、事前の準備はしっかりします。準備をしていくことで心に余裕が生まれたり、失敗したとしても“出来ることはやった”と納得できますから。

仕事へのメリハリをつけるために、適度な休憩や一人の時間を過ごすことを大切にしています

――仕事が忙しい時期のリラックス方法はありますか？

旅行やマッサージに行ったり、散歩をしたりと一人の時間を過ごすようにしています。あとは「もう嫌だ！」と投げ出してしまう前に、極端にいえば10分寝てみるとか、30分散歩するだけでも気持ちはリフレッシュするので、視野が狭くなりそうな時は一度切り替えるようにしています。

――自分に合った切り替え方法を身につけたのは最近ですか？

アーティスト活動を始めた頃に、声優の仕事と両立するのが難しくて体調を崩しやすくなった時期がありました。周囲の方にも迷惑をかけますし、自分自身も思うように動けないことが辛くて、体調管理はすごく大事なことだと思ったんです。それを経験したことで、自分の体調もそうですし、気持ちの面でも自分自身のご機嫌をとってあげたりとメリハリをつけることを大事にするようになりました。

――映画、ファッションなど、多趣味な上坂さんですが趣味は見つけようと意識している感じなのでしょうか？

“楽しいことが見つけられたらいいな”とは思っていますが“趣味を見つけよう！”というより、何か気になったことがあったら、まずは調べます。“面白そう”と思って気になったことも、別のことをすると忘れてしまうことが多いので、その場で調べて記憶に残すほうが新しい趣味に繋がりやすいのかなと思います。

――では、今年でアーティスト活動10周年になる上坂さんから、夢に向かって頑張る読者にメッセージをいただけますか？

ファンの方やスタッフさんのおかげで、2021年に声優10周年、そして今年アーティスト活動10周年を迎えることが出来ました。10年間、何かを続けられたことで“次の10年も出来るんじゃないかな”と思える自信がついたのは、みなさんのおかげだと思っています。ただ、その10年の間には大学を卒業したり、コロナ禍でイベントやライブが出来ない時期があるなど大変なこともたくさんありました。

きっと夢を目指すなかで、大変なことや、遠まわりをしているように感じることもあるかもしれませんが、諦めない限り前には進んでいると思います。本当は「頑張れ」と言いたいんですけど…頑張れない日があってもいいと思うし、「今日は頑張る」「今日は休む」など、上手に自分の体調やご機嫌と付き合いながら、やりたいことや夢を目指してもらえたらと思います！

 

企画・編集：ぽっくんワールド企画　撮影・河井彩美　取材・文：原 千夏