津波と津波堆積物

地震の発生

津波は、地震などに伴って海水が持ち上げられた(あるいは、下げられた)時に発生します。

例えば、陸側プレートと海側プレートの境界で大きな地震(プレート境界の「すべり」)が起きたとき、その「すべり」により海底が隆起もしくは沈降します。この隆起・沈降によって大量の海水が持ち上げられ(あるいは、下げられ)、大きな波になって四方に伝わり津波を起こします。

海水を持ち上げるのは、地震による隆起・沈降だけではありません。海底地すべりによって沖合の地形が変化したり、海のそばにある大きな山が崩壊し、土砂が海に流れ込んだ場合にも起きることがあります。

津波が発生する様子
津波が発生する様子を表したプレートの断面図

津波シミュレーションによって再現された869 年貞観津波が伝播する様子

地震発生時の様子 地震発生20分後の様子 地震発生40分後の様子 地震発生60分後の様子
津波シミュレーションのスナップショット 地震発生時から20分後、40分後、60分後の様子 活断層・古地震研究報告(no.10)の表紙より
津波の伝搬の様子を表す図

気象庁

を参考にして作成

津波は、深いほど速く伝わる性質があります。例えば、水深5000 mくらいの沖合ではジェット機並みの速さで伝わります。しかし、浅くなると速度が遅くなるため、後から来た波が、前の波に追いつく形になり、波高が高くなります。津波が海岸や内湾で非常に高くなるのは、水深が陸地に近いほど浅くなるためです。

この一方で、水深の深い沖合で船に乗っていると、津波が起きたことにさえ気がつきにくいと言われています。このような現象は経験的に昔から知られており、「津波」の語源になったとも言われています。「津」という言葉は「船着場」や「港」を意味しました。その「津」に来る異常な波という意味が「津波」なのです。

津波堆積物の調査

津波堆積物とは

巨大な津波は、海底や海岸にたまった土砂を削り取って運びます。運ばれた土砂は「津波堆積物」として陸上に残されます。

津波堆積物は、津波による浸水や土砂堆積の直接的な証拠であるため、その年代を調べることにより、津波の発生時期を知ることができます。

産業技術総合研究所による調査

産総研では、過去の津波が残した「津波堆積物」を見つけるために日本の各地で調査を行ってきました。採取した試料の一部は研究所に持ち帰り、様々な分析を行って、過去にどのような津波が発生したのかを考えます。

津波堆積物のイメージ図
産業技術総合研究所による津波堆積物の調査地点を表した図