——新作の2枚のアルバムを聴きました。どんな心境でもスーッと胸に入っていく音楽だと思いました。
ありがとうございます。俺もそう思います(笑)。ドラムレスのバンドというと、結構エグい音をイメージしませんでしたか。インプロビゼーション(即興演奏)が中心で難解なやつ。でも、ところがどっこいっていう感じだったでしょう? ジャズを主軸にしていますけど、日常に溶け込むようなサウンドになったと思います。
——2021年から佐瀬悠輔さん(トランペット、フルート)と岩見継吾さん(ウッドベース)と一緒に「賽」という形で活動しています。新しいバンド結成の経緯を教えてください。
Suchmosだけだと表現できないことって結構あったんですよ。それがいっぱいたまってきた。俺も鍵盤奏者としてスキルアップしたい。だからツアーに行っても、ピアノがあるバーでこっそり演奏していました。Suchmosとは一切名乗りませんし、経歴も言いません。「実はちょっと旅してるピアニストなんですけど」ってマスターと交渉して(笑)。お客さん8人くらいの前で弾かせてもらうんです。
ありがたいことに、Suchmosとしてファンの前に立てば、何をやってもドッカーンと沸く。どうしたって認められてしまう。そうじゃなくて、もっとヒリヒリしたかった。俺のピアノが俺に関心もない人を感動させられるのか。それを試したかった。
活動休止して、それぞれが修業しようと決まった後、バーのマスターに「うちでライブやってみれば」って誘われたんです。そこで、前からやってみたかった岩見さんと佐瀬さんに声をかけました。
——3人でやった感触はどうでしたか。
「できた!」って感じです。ただ2人ともガチのジャズマン。俺はロックバンド出身。ジャズをやっても俺だけボロボロでした(笑)。でも、そこからどんどん面白い曲ができましたし、まず人間としての相性がすごく良かった。一緒に曲を作り始めたら楽しくて仕方ない。賽を始めてから人生で一番練習していますよ。2歳でエレクトーンを始めて以降、こんなに練習したことはない(笑)。今年は音源制作に振り切ったので、来年はそれを名刺代わりにいろんなところでライブしたいです。着の身着のまま自由にね。
——インストのバンドということで意識したことはありますか。