Suchmosの鍵盤奏者TAIHEIさんが、新たにドラムレスの3人編成バンド「賽」を結成した。テーマが異なるコンセプトミニアルバム「Family」「The Bottle」を2作同時リリース。11、12月には「ATAWARI」と銘打ち、地元・富山の魅力を発信する新たな音楽イベントを企画し、成功させた。新たな挑戦を続けるTAIHEIさんに展望を聞いた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・竹田泰子)
 

——新作の2枚のアルバムを聴きました。どんな心境でもスーッと胸に入っていく音楽だと思いました。

 ありがとうございます。俺もそう思います(笑)。ドラムレスのバンドというと、結構エグい音をイメージしませんでしたか。インプロビゼーション(即興演奏)が中心で難解なやつ。でも、ところがどっこいっていう感じだったでしょう? ジャズを主軸にしていますけど、日常に溶け込むようなサウンドになったと思います。

——2021年から佐瀬悠輔さん(トランペット、フルート)と岩見継吾さん(ウッドベース)と一緒に「賽」という形で活動しています。新しいバンド結成の経緯を教えてください。

 Suchmosだけだと表現できないことって結構あったんですよ。それがいっぱいたまってきた。俺も鍵盤奏者としてスキルアップしたい。だからツアーに行っても、ピアノがあるバーでこっそり演奏していました。Suchmosとは一切名乗りませんし、経歴も言いません。「実はちょっと旅してるピアニストなんですけど」ってマスターと交渉して(笑)。お客さん8人くらいの前で弾かせてもらうんです。

 ありがたいことに、Suchmosとしてファンの前に立てば、何をやってもドッカーンと沸く。どうしたって認められてしまう。そうじゃなくて、もっとヒリヒリしたかった。俺のピアノが俺に関心もない人を感動させられるのか。それを試したかった。

 活動休止して、それぞれが修業しようと決まった後、バーのマスターに「うちでライブやってみれば」って誘われたんです。そこで、前からやってみたかった岩見さんと佐瀬さんに声をかけました。

 

——3人でやった感触はどうでしたか。

 「できた!」って感じです。ただ2人ともガチのジャズマン。俺はロックバンド出身。ジャズをやっても俺だけボロボロでした(笑)。でも、そこからどんどん面白い曲ができましたし、まず人間としての相性がすごく良かった。一緒に曲を作り始めたら楽しくて仕方ない。賽を始めてから人生で一番練習していますよ。2歳でエレクトーンを始めて以降、こんなに練習したことはない(笑)。今年は音源制作に振り切ったので、来年はそれを名刺代わりにいろんなところでライブしたいです。着の身着のまま自由にね。

——インストのバンドということで意識したことはありますか。

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