漫画「仰せのままに」KWON 感想(9)

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侯爵家のお嬢様セレニーを慕う侍女のディアンが、セレニーの政略結婚を阻止し、身分違いの恋を成就させるための逃亡を助けるために、お嬢様のふりをしてエフェンハルト辺境伯の家に滞在しようとするお話。
エフェンハルト辺境伯がむっちゃカッコいいです。

ピッコマにて。木曜更新で連載中。
以下、ネタバレありなので、ご承知の上。

 

「仰せのままに」感想(1)
「仰せのままに」感想(2)
「仰せのままに」感想(3)
「仰せのままに」感想(4)
「仰せのままに」感想(5)
「仰せのままに」感想(6)
「仰せのままに」感想(7)
「仰せのままに」感想(8)
「仰せのままに」感想(9)

 

 

69話

ここから、数話に渡って、エフェンハルトの子供時代からの回想です。

 

少年の父は森の番人で、母の記憶はなかった。
家は村から遠く離れた森の真ん中にある小さな湖の側に建つ小屋。

父の名はバゼル。
父の髪色は黒だったが、他はエフェンハルトにそっくりな容姿だった。

父は夜に知らない女性をよく連れ込み、その間、少年は家を出て湖をじっとみつめながら過ごした。

父と少年はほとんど会話を交わさず、目も合わせず、父から名前で呼ばれた事がなかったので、自分の名前を知らなかった。

湖に映ったきれいな月を見つめながら、お母さんに会いたいと願うと、1人の女が湖に映った月の中から現れた。
月のように輝く髪を持ったきれいな女だった。

女は気さくに少年に話しかけ、湖から上がって少年の隣りに座った。
女は水の中にいたのに全然濡れていなかったが、裸だったので上着を貸した。

 

 

70話

湖の向こうに城があり、ここの村を所有する領主が住んでいた。
そこの領主の紋章の指輪を付けた女を、父は一時期頻繁に家に連れてきた。

その女の髪色は暗い赤で今までの女の中で一番少年の髪色に似ていた。
他の女は夜来たが、この女はいつも昼に来て、勝手に少年に触れたりしなかったので、少年は彼女と父の関係が長引いてほしいと思っていた。

森の番人の息子である少年は、父から弓や槍、短剣の使い方、狩りの仕方を教わった。
剣の使い方は、今からやると悪い癖がつくので体がもっと大きくなったら教えてやると言われていた。

狩りの時には父が少年にいろいろな話をしてくれたので、少年は狩りが好きだった。

狩りの獲物は金になり、少年は湖の女のために、令嬢が処分に出した服を店で買っていた。

 

 

女が現れるのはいつも夜で、女の体はいつも冷え切っていた。
女に膝枕してもらったままうたた寝をした時、少年は風邪を引いて何日も寝込んでしまい、女は少年が治るまで泣き続けた。

それ以来、女は少年の体に長く触れない。

貴族のお嬢様の服は女にとてもよく似合い、とてもキレイだった。
嬉しくて女の腕に抱きつくと、「触っちゃダメだ、言うことを聞かないと水の中に戻る」と言われたが、「行くのも離れるのも嫌だ、言うこと聞かなくてもずっと一緒にいて」と言って離れなかった。

どうすればずっと一緒にいられるのだろう。

 

 

71話

熊のような危険な獣が出ると猟師が集まって力を合わせて狩りをし、そういう時は父は数週間家を空けた。
父はその時だけ銃を使った。

少年は読み書きができなかった。
いつも獲物を買い取ってもらい必要な物を買う雑貨店で、本がある事に気付き、絵がついている本を買ってみた。

読めなかったが、絵があるのでだいたいのストーリーはわかった。
騎士が魔王から姫を救って結婚する話だった。
ちゃんと読みたいと思い、読み書きを習うための初心者向けの本を買った。

少年は毎晩、湖に行って女に会っていた。


俺はもっと背が高くなって、読み書きの勉強もするし、今よりずっと強くなる。
それで誰よりも強い騎士になって、お前をここから連れ出すんだ。
だから、その時まで待っててな。

 

 

72話

父は、元々酒に溺れていたが、日毎に飲む量が増えていった。
もう誰かを教えるのは無理だろうと思い、父から剣術を教わるのを半ば諦めた。

父は少年が知る限り最も実力が優れた猟師だったが、今は自分の方が強いかもしれないと思った。

雑貨店の店員の女に読み書きの勉強を見てやると言われて、女の家に連れ込まれそうになって以降、その女が話しかけてきても、少年は全く会話を交わさなかった。

少年は店で本を買い続けていた。

服を処分していた令嬢が遠くに嫁いでから、女の新しい服は買えずにいた。
処分品だったから買えたのであって、本来の値段は少年の収入じゃ手の届かない高級品だと言われた。

目が肥えてしまった少年は普通の服では満足できなかった。

 

 

少年は成長し、湖の女への気持ちを抑えきれずに襲いかかってしまったことがあった。
これでまたあなたが風邪を引いたら嫌だと泣かれて、ハッとして理性を取り戻した。

それ以来、自分を抑えるために、女に会う時には本を持参して、本を両手で持つ事にした。

少年は騎士になる方法を知るために、騎士が登場する冒険小説を一生懸命読んでいたのだが、小説の主人公はみんな最初から騎士だった。
たくさん読んでいるうちに少年の部屋は本でいっぱいになっていた。

そして少年は、家を好きにするために金を貯めて独り立ちしようと考えた。
それからこの子を湖から連れ出して二人で暮らしながら毎日毎晩・・と考えてニヤけた。

女は湖から離れられなかった。
湖のすぐ側の岩の上までが限界だった。

湖に宿った精霊とやらなのだろうと思ったが、女に聞いてみても、人間の考えに合わせて自分の存在を説明できないらしかった。

女が見たいと言った本の絵を見せて、この怪物が人間が持つお前のイメージだと説明し、女が泣くと、抱きしめた。


なぜだろう こんなに大切なのに
ぐちゃぐちゃに泣かせたくなる
俺だけを見ればいい
俺だけを思えばいい
お前はいつも 俺だけでいっぱいになればいい

 

 

73〜75話

いつも一緒にいても倒れたりしないよう
誰より強い騎士になるよ

と、そう思っていた少年の夢を、数日後に諦めることになった。

少年の父と妻の不貞に気付いた領主が、騎士達と小屋に乗り込み
父と少年は引きずり出され、目の前には領主の妻の首が転がった。

領主の妻は8年前から小屋に出入りしていたと聞いたが
お前は何歳だと領主に聞かれても、少年は自分の年を知らず答えられなかった。

どう見ても8歳以下には見えない少年だが、父の体が大きいから体の大きさだけでは、その証拠にならないと領主は言った。けれどそれは領主が弄んでいるだけだと少年は気付いていた。

父を殺せばお前は生かしてやろうと剣を持たされたが少年は父を切れなかった。

それでも切らせようとしてくる領主に騎士の1人が、親子二人を同時に殺すと森の番をする者がいなくなり、領地に被害が及ぶと提言し、領主は「誰でもいいからあいつの首を切れ」と言って去った。

残された少年は夢から覚めた。
俺は騎士になれない。

 

 


湖の女は何も変わらない。
相変わらず体は冷たく、好奇心旺盛で、ひどく愛らしい。

おとなになるのは現実を知る過程だ
相変わらず昔の夢を語るお前の側に
俺はいつまでいられるだろう


月に一度 女は湖から出られない。
新月は月が出ないからだ。

父の死後、バゼルは少年の名前になった。


女は、少年がバゼルと呼ばれている事を知り
自分もそう呼んでいいか聞いた後、
自分にも名前をつけてほしいと言った。

月の女神の名前、ディアナはどうだと言ったが
バゼルみたいにもっとかっこいい名前がいいと言われ
ディアンはどうだと言いうと、女は気に入り
彼女の名前はディアンになった。

 

 


少年はたくさんの冒険小説を読んだが、好みにドンピシャな本がなかったので、自分で冒険物語を書いてみようと考えた。

主人公の騎士は金髪に青い目か、黒髪に黒い目ばかり。
赤髪に青い目の主人公はいなかった。

小説を書くための背景知識をつけようと古代の神々の本を買ったが、難しすぎて内容が全く理解できなかった。だが女の正体を知りたくて、月の女神に関する部分は熱心に読んだので、月の女神の名前がディアナだと、その本で知った。


最近は少年は本を読むこともなくなった。

ディアンが出られない日は、領主に会う日だった。

 

 

父を殺してから、少年に母がいない事を知った領主は、神の意に従う子に育てるために直接指導してやると言って、月に一度、城に来るように言った。

あいつがイカれたサイコパスで変態野郎だってことは、はねられた妻の首が笑ってるのを見た時から気付いていた。

領主の妻は彼から逃れられることが嬉しかったのだろう。
領主の妻が、その状況から逃げ出すのにはあの手しかなかったのだろう。
そんなクソみたいな世の中が憎い。

教会のような場所で領主が待っていて、挨拶をした後、
「早く脱ぎなさい」と言う領主。

 

 

69〜75話 感想

エフェンハルトの過去の話は、ずっと仄暗いトーンです。

エフェンハルトが、本を読んで喜んでいるところや、妖精女王の服を買って着せて喜んでいるところは唯一明るい部分。

この頃から、ディアンにキレイな服を着せて喜んでたんですね。

エフェンハルトの父は髪色が違うだけで、他はほとんどエフェンハルトと同じ見た目なので、その父が、ダメ人間になっちゃってるのが、とても残念な気がしました。

父は元は騎士か何かで、何か事情があって落ちぶれて森の番人になったんじゃないかなぁという気がするんですが、父はほとんど何も語らないまま殺されてしまいました。

たぶんエフェンハルトの母を愛していて、母に似た赤毛の女性ばかり連れ込んでたんじゃないかな。
何らかの事情でエフェンハルトの母を亡くして、クサってしまった人って感じがしました。

 

 

それにしても、名前さえもつけてなかったのかとか、年さえも教えてなかったのかとか、だいぶエフェンハルトが、かわいそうな状況でした。

父の名前がそのまま自分の名前になっただけ、だなんて。

父の事情については、いつか出てくるのかな?出てきてほしいな。

妖精女王とは小さい頃からずっと毎晩会って、恋焦がれていた相手だったんですね。
最初の頃は、母もいないし、父も構ってくれないし、幼かったから、人のぬくもりを求めてって感じだったかもしれませんが、成長と供に自然と恋愛対象になっていったんでしょうね。

ディアンという名前もエフェンハルトが名付けた名前だっただなんて。

これだけ長い間、何年も一緒にいて、ずっと恋していて、どうやったらずっと一緒にいられるだろうかと考えたいたような相手と、一緒にいられない結末を迎えたなんて、そりゃあ、再会したら一緒にいてはいけない事情があっても、ついつい一緒にいたいと思ってしまうよね。

 

 

まだ一緒にいられない結末は描かれてませんが、建国神話からすると、そういう事なんだろうし。

そして、この時点での領主がゲスくて、更にこの昔話を暗くしてます。
エフェンハルトも言うように、おかしい人なんだろうなと思います。
妻の首を切って、持ってくるような神経してるんだから。

75話の最後の言葉から、この後のゲスい展開が予想されてものすごく嫌です。
予想される最悪なヤツでありませんように。
ものっすごい嫌なところで、また来週になってしまいました・・・・・。

この後、このまま続けて、建国神話の話のところも全部描かれるのかな。

 

 

雰囲気は暗いけど、昔話に入ってから、内容は面白くなりました。
やっと謎が明かされるのも期待してるし。

ディアンと妖精女王の雰囲気は同じような感じだけど、ディアンのあの大量のセリフと心の声が、やっぱり多すぎだったよなーと思います。

あーでもないこーでもないって考えるのが、多すぎた。
それが大して面白い内容じゃなかったから。

昔話に入るまでの回はもっとまとめて短くてよかったよなぁと思います。