今年の年末年始は最大11連休! 円安、物価高はツラいけど......海外旅行を諦めたくない!今年の年末年始は最大11連休! 円安、物価高はツラいけど......海外旅行を諦めたくない!

コロナ禍が明けて初の年末年始。「この休みには久しぶりに海外に行きたい! けど、旅行代も高いんでしょ......」と思う人も多いだろう。

そこで、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏に、円安・物価高でも今から準備しておけば、リーズナブルに旅行を楽しめる国を聞いてみた!

■今年の年末年始は最大11連休!

2023年も残すところ2ヵ月足らず。コロナ禍が明け、初めての年末年始の休みまで、もう間もなくだ。

「この年末年始は、カレンダー的にはベストといえるでしょう。多くの会社で仕事始めの1月5日は金曜日で、6日~8日は成人の日絡みの3連休です。つまり1月5日に有給休暇を取るなどすれば、12月29日から1月8日まで、実に11連休になるのです」

こう話すのは、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏だ。

「これだけの長い休みになると、海外旅行の混雑は分散型になります。年末年始は自宅でゆっくり過ごし、1月4日や5日から出かけるというのも十分アリでしょう」

しかし年末年始は海外旅行のピークシーズン、旅行費用も高いのでは......!?

「円安での円の価値の目減り、原油高による燃油サーチャージの高騰などから、海外旅行のハードルはコロナ禍前よりも高くなりました。とりわけヨーロッパやアメリカ本土への航空券の多くは、現実的ではない高値になっています。しかし目的地や日程、チケットの手配などを工夫すれば、予算を節約しつつも海外旅行を楽しむことは可能です」

航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗氏航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗氏

これはなんともうれしい話だ! おトクに海外旅行へ行くには今から準備する必要があるそうだが、その秘訣(ひけつ)とは!?

「ポイントは3つあります。まず『飛行機の便数が多く、特にLCC(格安航空会社)が就航している目的地を選ぶこと』です。航空会社が複数就航している目的地は、価格競争が発生します。

加えて便数が多いと、空席を埋めるためにしばしば安い運賃が出てきます。さらにLCCが飛んでいると"予算ありき"の旅行客がLCCに流れるため、ANAやJALをはじめとするFSC(フルサービスキャリア)も対応を迫られることになります。

LCCは『上限7㎏』など機内持ち込み手荷物に厳しい重量制限があり、預け入れ手荷物や機内食にも別途料金がかかるなど、FSCとはサービスに大きな違いがあります。

それでもLCCを選ぶ利用者がいるから、FSCも無視できません。こうしたことから『日本からの距離が遠いにもかかわらず、運賃が割安な目的地』になりやすいのです。

次に『インターネットを活用し、自分のスケジュールに合わせて運賃を徹底的に比較すること』です。現在の航空券は『ダイナミックプライシング』、つまり需要の多い時期には高く、需要の少ない時期には安くなるという仕組みが取り入れられています。

その値づけは、各航空会社が『現在の航空券の販売状況』『将来の見込み』を基に、コンピューターでの独自のアルゴリズムなどを用いて決めています。そのため1日違いで運賃が大きく異なったり、同じ日程の運賃が数時間のうちに上下することも珍しくありません。

こうした運賃の比較には『スカイスキャナー』『Googleフライト』などのウェブサイトを使うと便利です。また、いったん検索して『高いなぁ』と思っても、諦めずに検索を続けたほうがいいと思います。今年は冒頭に述べたとおり分散型の休暇となるため、タイミングによっては思わぬ安値で航空券を購入できるかもしれませんから。

最後は、『12月のサーチャージ値上がり前に航空券を購入すること』です。原油高騰による燃油サーチャージの高止まりは頭の痛い問題です。しかも12月からは複数のFSCが値上げ方向での改定を予定しています。

燃油サーチャージの見直しでFSCが実質的な値上げになれば、サーチャージを徴収しないLCCにも運賃値上げという形で影響するでしょう。FSCの航空券を購入するなら11月中、LCCであってもなるべく早めがオススメになりそうです」

なるほど! ところで、安く海外に行くなら旅行会社のツアー商品が有利にも思えるが、そのあたりはどうなのだろう?

「かつては日本の旅行会社がホテルの客室と航空便の座席を一定数仕入れ、ツアー商品として販売するのが一般的でした。そのため出発ギリギリになると、空室、空席を埋めるためディスカウントが行なわれることもしばしばでした。

しかし現在はそうした販売手法は主流ではなくなっています。航空券もホテルも、インターネットで手軽に予約できるようになった現在では、ツアーではなく、自分で個別に手配するほうがコスト的には有利です」

では、こうしたポイントを踏まえて、鳥海氏が選んだ「年末年始の優良渡航先ベスト5」を発表しよう!

「台 湾」

【コスト感 ¥¥】

「イチ押しは台湾です。ANA、JAL、チャイナエアライン、エバー航空、スターラックス航空、キャセイパシフィック航空などのFSCに加え、ピーチ、ジェットスター・ジャパン、スクート、タイガーエア台湾などLCCも数多く就航していて、乱戦状態です。

成田からの飛行時間も4時間半ほど、2泊3日の旅程でも十分楽しめるので、安い航空券が見つかったらすぐに予約を入れましょう。

年末年始の台湾は過ごしやすい気候で、観光にも最適。ホテルもリーズナブルで、ローカルフードの食べ歩きなどを満喫できます。また、日本の地方都市からも直行便があるので、成田や羽田、関空までの移動にかかる費用を節約できます」

ローカルフードを楽しめる台湾・台北の夜市ローカルフードを楽しめる台湾・台北の夜市

【航空券目安(往復)】

◎成田⇔台北

・12月31日~1月4日:6万3830円(スクート)

・1月4日~7日:4万9260円(ピーチ)

「マレーシア」

【コスト感 ¥¥¥】

「4つ星、5つ星のホテルの宿泊費が破格に安く、高級ホテルライフをリーズナブルに楽しめることで人気の都市が、マレーシアの首都クアラルンプールです。アジアのほかの都市だと1泊4万~5万円台になる国際高級ホテルチェーンでも、クアラルンプールなら1万円台で泊まることも可能。

こちらもANA、JALのほか、マレーシア航空、バティックエア、エアアジアXなどが就航しており、運賃は比較的安めです。東京からのフライトは約7時間、LCCでもなんとか我慢できますね。

また、クアラルンプールからはエアアジアが国内線を多数発着させているので、マレーシア国内のビーチリゾートを組み合わせてもいいでしょう」

マレーシア・クアラルンプールの名所「ペトロナスツインタワー」マレーシア・クアラルンプールの名所「ペトロナスツインタワー」

【航空券目安(往復)】

◎成田⇔クアラルンプール

・12月30日~1月5日:11万9129円(キャセイパシフィック)

・12月31日~1月4日:10万1559円(バティックエア)

・1月1日~7日:9万2200円(バティックエア)

・1月4日~9日:6万8580円(キャセイパシフィック)

「ベトナム」

【コスト感 ¥】

「都市部でのホテル建設やリゾートエリアの開発が進み、今、注目を集めているのがベトナムです。

近年路線網を積極的に拡大している現地のLCC、ベトジェットエアがキャンペーンも含め意欲的な運賃設定を行なっていることから、ANA、JAL、ベトナム航空などの運賃もそれほど高くありません。

物価も比較的安く、フランス統治時代の面影が濃く残るハノイやホーチミンの市街地、自然豊かな景勝地ハロン湾、美しいビーチリゾートなど、観光資源が豊富です。

また、近年はグルメやスパなども若い女性を中心に人気を集めています。日本からの距離も近いので、2泊3日、3泊4日という短期間でも楽しめます」

ベトナムの自然豊かな景勝地ハロン湾でのクルーズベトナムの自然豊かな景勝地ハロン湾でのクルーズ

【航空券目安(往復)】

◎成田⇔ハノイ

・12月29日~1月4日:8万9070円(マカオ航空)

・12月29日~1月6日:7万1970円(マカオ航空)

・12月30日~1月3日:10万3930円(スターラックス)

・1月1日~5日:8万6247円(ベトジェットエア)

・1月2日~6日:8万4900円(ベトジェットエア)

・1月3日~7日:8万230円(ベトジェットエア)

・1月5日~9日:10万426円(JAL)

「シンガポール」

【コスト感 ¥¥¥¥】

「定番中の定番ですが、シンガポールはやはり外せないでしょう。LCCのスクートのほか、ANA、JAL、シンガポール航空の直行便が多数飛んでいて競争が激しく、安い運賃を見つけやすいと思います。

東南アジアの経済の中心で、街は清潔、治安の良さは東南アジアの都市随一なので、家族連れでも安心して旅行が楽しめます。赤道直下の熱帯気候で、年末年始でも気温は30℃近くまで上がるので、ホテルのプールで遊ぶことだって可能です。

また、街中には植物園や博物館などの"映(ば)えスポット"があちこちにあり、高級ホテルのアフタヌーンティーや名物グルメのチリクラブ、シンガポールチキンライスなど、食べる楽しみも盛りだくさんです」

シンガポールで人気の巨大植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」シンガポールで人気の巨大植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

【航空券目安(往復)】

◎成田⇔シンガポール

・12月31日~1月4日:10万8074円(スクート)

・12月31日~1月5日:11万1696円(スクート)

・1月4日~9日:7万2450円(キャセイパシフィック)

「ハワイ」

【コスト感 ¥¥¥¥¥】

「最後は、ハワイです。ビーチリゾートは東南アジアにもたくさんありますが、やはり華やかさ、特別の空気感はここならではだと思います。人気のスポット、かつ多くの日本人が訪れる時期なので、航空券は高額ですが、それでも行く価値はあると思っています。

アメリカ経済の勢いによるインフレ、さらに円安で、レストランでの食事も驚くほどの値段になりますが、ホノルルに宿泊しテイクアウトしてホテルで食べるなどの工夫で支出をある程度は抑えることができます。

でもハワイを思い切り楽しむなら、ホテル代とレジャー、アトラクション代を合わせ、1日当たり10万円は考えておきたいところですね」

常夏のハワイ・ワイキキビーチ常夏のハワイ・ワイキキビーチ

【航空券目安(往復)】

◎成田⇔ホノルル

・12月31日~1月5日:17万4778円(ZIPAIR)

・1月1日~6日:15万2762円(アシアナ航空)

・1月1日~7日:17万7630円(ANA)

・1月2日~8日:13万7667円(ANA)

・1月3日~8日:13万7427円(ANA)

・1月4日~9日:11万666円(ANA)

■海外旅行時の注意事項

さて、オススメの渡航先がわかったところで、さらに旅行を安く上げるコツについてもご教示いただこう。

「海外での支出は、有利なレートで円から外貨に両替することで、ムダを減らすことができます。オススメはネット銀行に預金し、その預金を海外で現地通貨で引き出す方法です。

また、クレジットカードで海外キャッシングし、帰国してから繰り上げ返済するという方法もあります。キャッシングには抵抗がある人も多いと思いますが、繰り上げ返済すれば手数料はわずかで、日本円の現金を現地で両替するよりも有利になることがあるのです。

いちばんマズいのは、日本国内での円から外貨、特にアジア各地の通貨への両替です。日本国内ではアジア通貨の需要が低いため、レートはかなり不利になっています。日本からの航空便が就航する都市であれば、日本円の現金を現地通貨に両替できないところはまずありませんから、日本円をそのまま持っていきましょう。

なお欧米の多くの地域ではキャッシュレス化が進んでいて、ホテルの部屋に置くチップ以外、現金を使うことがほとんどない環境です。カード決済で済ませるのであれば、両替は最小限で大丈夫でしょう」

最後に、航空券を購入する上での注意点を聞いてみた。

「安さだけに釣られてヘンな旅程の航空券を購入しないことです。

特に航空券比較サイトを利用してアジア方面の航空券を検索すると、中国国内で乗り換える旅程が安値で並ぶことがあります。このとき、航空会社の組み合わせによってはいったん入国し、荷物をピックアップしてあらためて乗り継ぎ便にチェックインしなくてはならないケースがあるのです。

飛行機の遅延、カウンターの混雑などでうまく乗り継げず、自力で次の便を手配しなければならないなど、大変な思いをすることも珍しくありません」

円安、サーチャージ高をはね返し、年末年始の海外旅行を思う存分楽しもう!

*目的地ごとの「航空運賃目安」は、11月1日時点での12月29日~1月5日の間の東京(成田空港)発エコノミー航空運賃を、合理的と思われる乗り継ぎ時間、経由地の範囲で、編集部が独自に調べたものです。運賃は変動する可能性がありますので、目安としてご活用ください。また「コスト感」は、一般的なホテルの宿泊費、現地の物価などを含めて算出した現地で必要な旅行費用の目安となります。¥マークが多いほど高額になります

●鳥海高太朗(とりうみ・こうたろう)
1978年生まれ、千葉県出身。食品会社勤務、城西国際大学観光学部助手を経て、2013年より帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師。航空会社のマーケティング戦略を主研究に、各航空会社への取材、およびリサーチを精力的に行なう。経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオへの出演も多数